本コーナーは、6月1日をもって質問の受付を終了しました。ご質問をいただいた皆様ありがとうございました。震災後の混乱の中で少しでもお役に立てたなら幸いです。回答は、以下でご覧頂けます。

  
皆さまからの質問にお答えします
  
飛び交う情報を整理し解説します
  
今後の課題と方策を取材しました
  
図表を使って事象をよみときます

科学コミュニケーターがつぶやく注目の科学トピック

研究者と共に未来社会を考えるイベント連動特設サイト

対話で科学を伝えている科学コミュニケーターによる日記
  地震・津波の基礎知識

質問: 月の引力と地震の発生は関係がある?

月の引力によって引き起こされる地球の潮汐と地震には、関係があるのでしょうか。
東北太平洋沖大地震後の3月19日に、月と地球が最接近したので、今回の地震にも影響があるのではないかと考えました。(20代男性・神奈川県)

回答:

月と地震の関係は昔から語られていますし、今回は地震の8日後に「スーパームーン」現象が起きたので、何か関係があるのではと考えた方も多いかもしれませんね。
月と地震の関係については、人工衛星を利用して海の干満を正確にシミュレーションできるようになったことで、これまで謎に包まれていた部分が少しずつ明らかになってきています。最近では2010年1月に「断層のひずみが限界に達した状態では、地球潮汐が地震の引き金となる可能性が高い」という研究結果が、防災科学技術研究所から発表されました。

月や太陽の引力は、潮の干満だけではなく地球そのものにも働き、人間が体に感じない程度の小さな変化、「地球潮汐」を起こします。地球潮汐によって地球にかかる力は、数十~数百ヘクトパスカルと微力ですが、断層に小さな力が働き、地球にゆがみを与えます。その際、断層のひずみが限界に達した状態では、地球潮汐が「最後のひと押し」となって、地震発生につながる可能性が高いということが、明らかになったのです。

これは、過去に発生した比較的規模の大きな逆断層型地震(断層が両側から押され、上下にずれて起きる地震)をデータ解析し、得られた結果です。今回の東日本大震災も逆断層型地震ですが、3月19日に月と地球が最接近した「スーパームーン」の現象と、この地震とが直接関係しているかどうかを調べるには、地震発生時の潮汐力や潮の干満など、さまざまなデータ解析を行なう必要があります。科学的に正しい結論を導くには、しばらく時間がかかるでしょう。


執筆:科学コミュニケーター 渡辺有紀
協力:日本地球惑星科学連合
2011/04/10 掲載