東日本大震災は11日で発生から9カ月となり、ほとんどの被災者が仮設住宅に移る中、88人が避難所や待機所に残っている。待機所などの完全閉鎖までに約4年を要した阪神・淡路大震災と比べて仮設住宅への移行はスムーズだが、生活の不便さなどから郊外に移るのをためらう被災者が多く、福島県では県外避難者の帰省で仮設が不足がちになっている。(斉藤絵美)
岩手、宮城、福島の3県の避難者数は、ピーク時で約42万人。仮設住宅の建設が比較的早かったことや、公営・民間住宅を仮設住宅として扱ったことなどから入居が順調に進んだ。
現在は宮城県で20人、福島県で45人が避難所に残るほか、すでに避難所を閉鎖した宮城県石巻市では、仮設住宅へ移るまでの「待機所」に23人が身を寄せる。人数は少ないが、立ちはだかるハードルは高い。
待機所の一つ、石巻市の向陽地区コミュニティセンターの大部屋には6人が布団を並べる。
津波で家が流され、職を失った男性(38)は持病で視力が弱く、車を運転できない。当選した仮設住宅は郊外にあり、買い物や通院が難しいため入居を断った。「最近はボランティアの姿も見ないし、存在を無視されている感じ」と肩を落とす。
待機所に多い単身者用の仮設住宅は、市街地から遠く離れた郊外にしか空きがなく、男性と同様に入居を拒む人もいる。同市は今月11日にも待避所を閉める方針で、「避難者と話し合って、何とか折り合いをつけたい」としている。
一方、原発事故の影響を受けた福島県は別の事情も。立ち入り制限で仮設住宅の建設場所が限られているのに加え、県外避難者が徐々に戻り始めている。同県は、緊急時避難準備区域が解除された福島第1原発から半径20〜30キロ圏に仮設住宅を増設中で、年内の避難所解消を目指す。
自宅が20キロ圏内にあり、南相馬市の避難所で家族3人で暮らす左官業の男性(63)は、避難所を転々として7カ所目。「なかなか仮設が当たらない。本音は家に戻りたいが、せめて仮設でも、正月は家族水入らずで迎えたい」と話す。
阪神・淡路大震災では7カ月後に全避難所が閉鎖されたが、待機所には9カ月後も1884人がおり、完全に閉鎖されたのはほぼ4年後だった。
阪神・淡路の復興制度に詳しい市民団体「兵庫県震災復興研究センター」(神戸市中央区)の出口俊一事務局長(63)は「期限ありきで避難所を閉鎖することがあってはならない。被災者が絶望感を抱き、逆に自立を促せない事態になる」と指摘している。
【特集】東日本大震災
(2011/12/10 07:45)
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