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暴力ゲーム脳? 根拠のない懸念で勢いづく英国の政治家
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2011.12.08 |
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「暴力ゲーム反対」の旗印を掲げていることで有名な、英国の政治家キース・ヴァズ議員。クリスマス商戦の迫ったこの時期、ゲームの悪影響に関する討論を行うべきだと彼は議会で演説した。
「クリスマスの近いこの時期に、暴力ゲームを子供のために買おうとしている親がいるのではないかと懸念しています。インディアナのメディカルスクールの研究が示すように、暴力ゲームを1週間遊んだだけでも脳に変化が起きるのです」と、議員はのちに英国メディアに向けて発言。あくまでも子供を守るのが主眼で、検閲が目的ではないとしている。
議員が発言の中で取り上げた研究とは、先週はじめに北米放射線学会が発表したもの。インディアナ大学メディカルスクールの研究により、暴力ゲームは脳に長期的な影響を及ぼすことがわかったのだという。
具体的には、いままで暴力ゲームを遊んだことのない22人の被験者(18〜29歳)のうち半数に、1日10時間、1週間にわたってゲームをプレイしてもらい、次の週は休ませた。そのうえで、心理テストを受けてもらいながら脳スキャンを行ったところ、ゲームを遊んだ被験者の脳は、左下前頭葉や前帯状皮質の活動が弱くなっていたという。
だが、この調査は暴力メディアの悪影響を訴える団体の援助を受けて行われたものだったことから、ゲーム関連メディアからは内容の信憑性に疑問の声も出ている。
一方スウェーデンでは、「暴力ゲームが子供の暴力を引き起こす」証拠は存在しないというレポートも。
これは、同国政府の機関であるメディア委員会が、国際学術誌に2000年以降掲載された100以上の研究例を調べて、導き出した結論だ。暴力ゲームと攻撃性を統計的に結びつける研究は多数あるが、多くは暴力的行為ではなく、心理プロセスにのみ言及したものだという。そして、暴力ゲームが問題を引き起こす可能性は留保しながらも、「証拠はない」と同委員会は締めくくったのだ。
ゲームの暴力描写が現実の暴力を本当に引き起こすのかどうか、結論ははっきり出ていない。そんな段階で、根拠のない懸念が政治に利用されることがないようにしたいものだ。
(中島理彦) |