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[30810] 【習作】矛盾探偵千雨 ! 第2話~(魔法先生ネギま! 千雨主人公)
Name: 青柚◆88a79188 ID:e63c0d32
Date: 2011/12/09 21:00

青柚です。
1話目を読んでくださった皆様、期待してくださった皆様、長期間お待たせして申し訳ありませんでした。
投稿時にパスワードを入力ミスするというアホ過ぎるミスのせいで更新停止していましたが、2話目から再開することにしました。

1話目を読んでいない、もしくはもう忘れた。そんな方はお手数ですが、下記のアドレスからどうぞ。

ttp:
//www.
mai-net.
net/bbs/sst/sst.
php?act=
dump&cate=
tiraura&all=
30654&n=
0&count=1

削除依頼を出したのですが、管理人様は忙しい様です。削除され次第、統合します。


注意点としてキャラ改変、原作改変、などなど。かなり変更があります。



追記

トリップは1話目と違います。前のトリップは無駄に長く、感想板には途中までしか書き込めなかったので変更しました。
青柚本人ですので、御了承ください。




[30810] 第2話 軽い命“想い”命
Name: 青柚◆88a79188 ID:e63c0d32
Date: 2011/12/09 21:02
真夜中、薄暗く、静けさに満ちた廊下。リノリウムの通路が蛍光灯の光を反射し、仄かに光る。
いつもなら、気味が悪くて仕方ないこの場所。

───こんな所見回る必要が有るの?

常ならそう思う、余りやりたくない仕事。しかし、今日に限っては様子が違った。

「分かってはいたけど、やっぱり」

沈んだ声。
栗色がかった黒髪をポニーテイルに纏め、前髪を左右にわけた小柄な女性。白衣を着た彼女は、遣る瀬無い思いでいっぱいだった。
この仕事を始めて3年余り。何度も経験した事だ。それでも慣れる事は無い、慣れてはいけない。

「まだまだこれからだったのに……両親とも連絡つかないし」

悲しみと微かな憤りを込め呟く。
事情が有るのだろう、それは十二分に承知している。けれど、納得する事はどうしても出来ない。

「また、怒られちゃうかな」

上司の怒り顔が浮かんで、すぐに消えた。
彼女の足が唐突に止まる。暗い廊下の向こう側から、物音が聞こえた気がした。

「気のせい、よね?」

物音が聞こえるなどあり得ない。

だって、この先にあるのは──

『ガタンッ』と間違いようもなく物音が聞こえた。
瞬間ギョッとした顔になり、次いで驚愕とも喜びともつかない表情を浮かべ。

「まさか──!」

脇目も振らず走り出した。
走る、走る。物音はまだ聞こえる。

───早く、早く、早く!

角を曲がり、目指す場所はもう目と鼻の先。彼女が大嫌いなその部屋。
横開きの扉を開け放ち、

「なっ──」

驚きと、あまりの怒りに顔を真っ青にした。
『こんな所で何をやっているの!』そう口に出そうとしたところで、ゆっくりと体が傾く。

───何が?

唯その疑問を浮かべるのが精一杯。理解不可能な現象に、思考が追いつかない。
冷たい床に力なく倒れこんだ時、既に彼女の意識は無く。

疑問の答えも、疑問そのものも永遠に失われた。





第2話 軽い命“想い”命





「だあああああ夕映の奴っ」

千雨は、寮の自室で頭を掻き毟りながら呻き声を上げた。
自分のホームページでは間違っても公開出来ない、凶悪な顔付きにボサボサの頭。眼は据わり、口からはフシュー、フシュー、と呼気が漏れている。
今外を歩けば即通報されてしまうだろう。

連続で焚かれるフラッシュ、押し寄せる記者の群れ。質問に涙ぐみながら答えるクラスメイト……。

「アホらしい、何考えてる?」

何故か浮かんだ、謎の逮捕シーン。
八つ当たり込みで乱暴に制服を脱ぎ棄てベッドの上に放ると、下着姿のままクルクル廻る椅子に腰掛ける。
あられもない姿だったが見る事が出来るのは自分のみ、私服に着替えるのは面倒だった。

それもこれも、全ては夕映のせいだ。
千雨は椅子の背にもたれ掛かりながら天井を見上げた。染みなんて1つも無い綺麗な天井を、親の仇でも見るように睨む。

「全く、私は目立ちたくないって言ってるのに」

「よっ」と掛け声とともに反動をつけて座り直すと、デスクトップパソコンの電源を入れる。
連続殺人鬼にでも間違われそうな千雨は、すでに居らず。

『助手』曰く、冷静沈着にして頭の切れる『探偵』長谷川千雨がそこに居た。

独特なHDDの駆動音、暗い画面が直ぐに光を灯しBIOSを表示する。
千雨の趣味は主に二つ、コスプレとそれを公開する“ちうのホームページ”更新。
キーボードの上を細い指が静かに、しかし驚くべき速さで動く。カタカタと小気味の良い打鍵音、それに伴って次々とスクロールする意味不明の文字列。
趣味の方はこんな面倒臭い事はしない、唯OSが起動するのを待つだけ。
では、何をしているのかと言うと。

「くくくっちう特性、素敵マシーン起動っ」

お仕事用のパソコン──簡単に言えばクラッキングの準備をしていた。
もっともニヤニヤ笑う千雨は非常に楽しそうで、これも趣味と言えるかもしれない。誰にも言えないが。
スクロールが止まりお馴染みのロゴが現れる。それらを相変わらずニヤニヤしながら見つめつつ、千雨は全ての発端をなんとはなしに回想しはじめた。




遡る事1時間前、千雨は1-Aの教室で帰る準備をしていた。
騒がしいクラスメイトや、何やら付き纏ってくる自称『助手』にウンザリしつつ、今日の授業を乗り切った千雨。
早く帰ってホームページを更新したい、ストレス発散しないと破裂しそうだ。そんな事を考える程に疲れ果てクタクタだったが希望は有った、何といっても今日は金曜日。

(ヤッホー週末っこれで解放される。さあ早く、早く帰るんだ千雨)

若干壊れ気味の笑いを張り付ける千雨は、クラスメイト数人から引き攣った顔で見られていたがそんな事は気にしない。

とにかく早く“逃げないと”──

「千雨さん、千雨さん、千雨さん、無視しないで下さい千雨さんっ」

遅かった。

千雨の背後で夕映が興奮した声を上げていた。
ギギギとぎこちない動作で振り向く、首だけ動かしたので凄く怖い。面白そうに見ていた双子が悲鳴を上げた。

「何か用か、綾瀬?」

這うように低い声で問いかける、露骨に嫌そうな顔で。
それらを受けて夕映は動じる事なく無表情のまま、けれど瞳を輝かせ千雨の肩をポンポン叩いた。

「事件です、探偵!」

千雨の顔がサッと赤くなって、青くなって、最終的に白くなった。
双子はゲラゲラ笑い、前の席の木乃香が面白そうに振り返った。エヴァンジェリンが不機嫌そうに鼻で笑う。
そして、麻帆良パパラッチが意味ありげに微笑んだ。

(朝倉あああ、夕映に要らんこと吹き込みやがったな!)

いつもの光景。
もう何度もクラスメイトの前でそう呼ばれているにも関わらず、千雨は恥ずかしさで一杯だった。
誰も彼もが微笑ましそうに千雨を見る――恥ずかしく感じる。それと少しだけ、本当に少しだけ。幸せを。
千雨は諦めたように溜息をつくと夕映に向き直った、いい加減首も痛い。

「それで、今度は何だよ……空飛ぶ子猫か? それとも鬼のように強い指導員か?」

夕映はフルフルと首を横に振った。
千雨は大いに、夕映は少しはぐらかされた気がしないでもなかったが、どちらも解決済みの案件。千雨の皮肉にムッとしながら夕映が答える。

「違うです。今回は飛びっきりの『事件』です」

事件を強調する夕映に、千雨は嫌そうな顔でハイハイと頷き続きを促す。

「極秘ルートから仕入れた情報によると、どうにも死体が盗まれているそうです」

さらっと言われた言葉に、夕映と朝倉を除く全員が嫌そうな顔をした。

「えー何が、だって?」

「死体です」

「いや、それは警察の」

仕事だろ──続く言葉は夕映の鋭い眼光と、

「違うです。私達の仕事です」

言葉の両方に断ち切られた。

「はぁ……だいたい、それのどこが不思議なんだ? こう言っちゃ何だけど、その、変態の仕業――」

ギロリ、そんな擬音が聞こえ千雨は口を噤んだ。

「いつものようにお願いするです」

「いや、あのな?」

「のどか~のどか~行くですよ」

夕映は千雨の言葉をスルーすると、少し離れた所でオロオロする宮崎のどかに呼びかけた。
千雨はのどかと目が合った、気がした。何せ前髪が長すぎる。

「あ、あの、ゴメンナサイっ」

言ってペコリと頭を下げる、のどか。
家の子が何時も迷惑ばかりかけて──そんなニュアンスを感じた千雨は苦笑いを浮かべる。

(……夕映、宮崎に小さい子扱いされてるぜ)

千雨のそんな思いを知ってか知らずか夕映はプイと顔を背けると、のどかを引っ張るように教室を出て行った。部活に行ったのだろう。
残された千雨は、嫌に静かな教室を見回した。微笑ましいモノを見た、そんな顔をした明日菜とバッチリ目が合い。
不機嫌極まりないと眼で語るエヴァンジェリンと、険しい表情の刹那に睨まれ。最後に茶々丸に軽く頭を下げられた。

(何なんだよ、まったく)

千雨は盛大に溜息をついた。






パソコンが完全に起動し、千雨は我に返った。
あの後朝倉に聞いたところ、ニュースになったのは二日前、新聞にも小さな記事で載っていたらしい。
ところがその後、追加の情報もなく。報道も僅か一日で沈黙。

確かに、少し妙だった。センセーショナルな話題を好むマスコミが、いかにも飛び付きそうなネタ。
けれどそんな話題は朝倉が夕映に漏らすまで誰も知らなかった。

「報道規制でもかかってんのか?」

冗談っぽく呟き、取り敢えずネットに接続する。
適当な単語で検索するも、関係ありそうな情報にはヒットしない。
数件ニュース記事は見つかった、しかしそれは夕映がデマを掴まされたのでは無いと確認出来るに物に過ぎない。
今のところ分かっている情報は事件が発生した場所は東京、それだけ。千雨は顔を顰めた、幾らなんでもこれはヒドイだろうと。

「やるっきゃねえな!」

東京管内で事件が発生したのなら、何処だろうと警視庁に情報が上がるはず。大分大雑把な認識で警視庁のサーバに不正アクセスを試みる。

手口は単純。ウイルス付きメールを関係省庁に送りつける。
受け取った誰かが、不用意にメールを開封すれば千雨の勝利は確定だった。
ネットサーフィンしながら、待つこと一時間。ニヤリと笑い、小さくガッツポーズする。

「よっしゃ、かかった」

デスクトップの片隅で、デフォルメされた“ちう”の目が青く点滅していた。
メールが開封され、活動開始したウイルスから送られてくる情報をダウンロードしている証だった。
何の障害も無くダウンロードは完了し、千雨の指がキーボード上を舞う。こうなってしまえば、もう相手に為す術は無い。
海外のサーバを何台も踏み台にし、標的にアクセス。
コマンドプロンプトに膨大な文字列が表示されては消えていく。手元の情報を基にファイヤーウォールを突破、セキュリティを掻い潜る。
そうして瞬く間にルート権限を奪取すると、芋づる式にパソコンを乗っ取っていく。千雨は誰にも気付かれる事なく、捜査情報の保管されているサーバに侵入を果たした。

「チョロいチョロい、最新のデータっと」

キーボードを操作し情報を洗い出す、そしてお目当てのモノは呆気なく見つかった。

「お、見っけ……?」

データの更新日は今日。


── 事件の発生場所 ──

──“被害者”の情報 ──

── 目撃者の有無  ──

── 証拠物件の目録 ──

── 写真数点    ──

── etc.etc

そして、

「はあ? たった三日で捜査打ち切りぃ?」

捜査終了の文字。

キナ臭い。目ぼしい情報を片っ端からダウンロードし、急いで引き上げを開始。
忙しなくキーボードを叩き足跡を消す。

どう考えても圧力がかかっている、それに──

「初めてじゃない?」

一番古い記録は六年前、そこから一年毎に発生している。そして、その度に2、3日で捜査終了。
背中に得体の知れない悪寒が走った。




明けて土曜日、天気は晴れ。雲1つ無い爽やか日に、千雨の気持ちは極めてブルーだった。
何故なら。

「ぼーっとしてないで歩くです。そんなんじゃ何時までたっても着かないですよ」

夕映に捕まって連行されているからだった。昼まで惰眠を貪っていた千雨の元に乗り込んで来て、現場調査をするです、と。
堪ったものじゃ無かったが、この自称『助手』はちょっとやそっとじゃ諦めない。しかも前日に余計な情報をわざわざ教えたのは、他ならぬ千雨自身。
気味悪さをお裾分けしたとも言うが。

出かける準備を強制、食パンと何故かコーヒーのパッケージが印刷された缶コーラを口に突っ込まれ。制服に着替えさせられ部屋を後にした。
そんなこんなで電車に揺られる事数十分、今はノロノロと東京の地を歩いていた。

「むしろ着かなくていいぜ」

疲れ切った様子の千雨がグッタリと呟く。

「後十分程で着くです」

いつに無く溌剌とした夕映に、ますますゲンナリした千雨。同じような問答を数回繰り返し二人は目的地に到着した。

「ここが、そうか?」

「そうです、四日前に事件が発生した場所です」

広大な敷地に聳え立つ白色の建築物、遠目には城のように見えなくもない。千雨はどことなくドラキュラ城を連想し、嫌な気分に。
怪奇事件の現場。そんな先入観のせいか、酷く不気味な雰囲気を感じてしまう。

「なあ、帰って良いか?」

「何を言っているのです。突入です!」

無駄を承知で言ってみるも、敢無く撃沈。夕映が建物をビシッと指差す。

「まあ可愛い、探検ゴッコ? 怒られないようにね」

通行人のおばさんが、あらあらと声を上げて笑った。

「……うがああ! 分かった、分かったからっ、それを止めろ!」

夕映を引っ張り、早足で歩きだす千雨。これ以上小学生の探検ゴッコと思われるのは、恥ずかし過ぎた。
引っ張られながら、夕映がニマァと不気味に笑う。

探偵は助手にまんまと乗せられた事に、気が付かなかった。





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