「巧、待ってください!」
「もう用事終わったんだ?」
「えぇ、まぁ……。そんなことよりも、聞きたいことがあるんですけど……」
「聞きたいこと?」
「これについてです」
「!?!?」
「やはりあなたのでしたか」
(「やっべぇ〜。どうすっかな」)
巧の目の前に突き付けられているのは、先程真那が拾った赤い色の携帯電話だった。
「あれぇ? …見たことある気がすんなぁ」
「そうですか。先程拾いました」
「誰か落としたんやな……」
「先程あなたのポケットから落ちた時に見つけたんですが? ですから、あなた以外に考えられないかと」
「あ、そっか夕呼さんに渡されたもんや」
「先程香月副司令に尋ねたところ、そんな物は知らないと仰ってました」
真那はしれっと嘘をつく。本当にそうであるなら、これが嘘だと言いきるはずである。そうでないとすれば、巧が嘘をついていることになる。
「可笑しいな〜、夕呼さん忘れてんのかな? ははっ」
(「誤魔化した…」)
「巧……。香月副司令にはまだ話してません」
「え?」
「どうして嘘をついたのですか?」
「あー、えっと……」
「まだ話してくれませんか?」
「っ……」
「巧……」
巧はついに両手を上げた。
「はぁーっ……降参」
「ふふっ。言いましたよね?約束は守ってもらいます」
「はいはい」
「本気何ですよ?」
「わかってる。でも全部聞いたところで、真那が辛くなるだけやと思うで?」
「それでも!」
「そっか……真那は強いな〜……。……来て。これから夕呼さんところ行くつもりやったから」
「はい……」
真那は黙って巧の後についていった。
これから信じられないような話を聞いて驚くことになるが、それは些細なことだった。そんなことよりも、救いを求めて願う……神などいないとわかった後で……。
◇10月24日(金)
17:03 国連横浜基地 香月夕呼の執務室
「暁巧……か……」
〈カタカタ〉っとキーボードを叩く音が響き続ける。
「“シロガネ タケル”との関連性は……?」
(「今のところわかっていることが少ないけど、10月22日ってのが引っ掛かるのよねー」)
「並行世界の白銀 武って可能性もあるわよね……。──でも、あたしの知っている顔と名前が一致しない……」
(「しかも大阪って……あいつは柊町出身……。訳解んないわね」)
「……だけど、もう一つの可能性もある……」
夕呼はキーボードを打つ手を止めて、両手で目頭を押さえた。「ふぅ…」と息を吐いてから思考の海へと潜り込んだ。
「白銀 武が別で存在するという可能性」
(「そうだとすれば、前回以上の奇跡が起こせる! 前回はたった2ヶ月しかなかったけれど、オリジナルハイヴを破壊した。それに対する被害も甚大じゃぁなかったけどね……。短いけれども、未来は確かにあった。
それが今回は2年もある! 2年という歳月があれば前回できなかったことも色々できる。新型osを世界中に行き渡らせることができれば、戦略だって幅を持たせることができるし、隊の損耗率だって変わってくる。だけれど、時間は誰にも等しく流れていく…。BETAにも米国にも……。
もし仮に、白銀が前回同様、2001年の10月22日にやって来たとしても、それまでに第207衛士訓練小隊と
伊隅戦乙女部隊を鍛え上げる。白銀が来なかった場合でも00ユニットは完成させられるしね。だからといって問題が
総て解決した訳でもないからねぇ……。
それに……暁巧がいれば、月詠中尉もついてくるみたいだから……隊の錬成に関しては、心配いらないだろうし。月詠中尉自体の錬度と3人の斯衛の力も、そこら辺の衛士じゃ歯が立たない。あとは戦術機も使えれば文句無し何だけど……。格闘技等も初心者じゃ期待しても仕方ないか。できたら儲けもん♪ くらいの気持ちよね。ふっ……、アカツキ タクミか……。飛んだ拾い物ね。
今から鍛え上げれば、前回の白銀くらいにはなるかしら?」)
夕呼は、考えを口に出して確かめる。
「──白銀がやって来ないのはあり得ないわね……恐らくだけど。暁がそうにしろ、そうでないにしろ……鏡がここにいるんだもの」
部屋にけたたましい音が鳴り響く。
夕呼は、来客を告げる音に思考を停止させられる。
「全く、無粋ね……」
夕呼は通信画面を開いて尋ねた。
「誰かしら?」
「暁巧さんが、香月副司令に報告に参りました」
「通して頂戴」
「……あの」
「どうしたの? ピアティフ中尉」
「月詠中尉もご一緒何ですが……」
(「へぇ〜。面白いじゃない」)
「いいわ。月詠中尉も通して」
「はい。了解致しました」
〈──プツッ〉通信モニターが切れてから、夕呼はひとりごちる。
「訂正。
粋な奴ね。自分一人じゃないってのも素晴らしいわ。これ、本人の前で言ったらどんな顔するのかしらねー? 言ってみようかしら?」
夕呼は、笑顔で巧と真那の来客を待ち侘びた。
◇10月24日(金)
17:21 横浜基地 香月夕呼の執務室
〈コン、コン〉執務室にノックの音が中に届く。
「はいは〜い」
(「機嫌良いな」)
「失礼します。香月副……司令? …ぇ? 何で?」
出迎えた夕呼の満面の笑みに、巧も真那も戸惑い、軽い混乱に陥る。
「暁巧」
「あ、はい」
「粋な奴ね」
「はいぃ?」
「……香月副司令……頭でも打ちましたか?」
「失礼ね〜、月詠中尉。で、暁。あんたは何かある?」
「あー……、ありがとうございます?」
巧は頭を下げて、夕呼は楽しそうに笑う。
「あははっ! ありがとうときたか、やるわね」
「どうも」
「どうしてありがとうなのだ?」
真那はふと疑問に思い、巧に尋ねる。
「香月副司令が褒めるのは珍しいから、素直に嬉しかったんで……」
「あら、褒めがいのある奴ね」
「褒めていたのか……」
「そういうちょっとした事でも、機微に察してくれるのは嬉しいものよ?」
「お褒めに与り光栄です」
「これからも喜ばせて頂戴」
「勿論です」
「冗談じゃないんだけど?」
「本気何ですけど?」
「…」
「…」
「「ははっ」」
「…ふふっ。やるわね」
「あははっ、ノリ良いなぁ〜」
「あの、私出てましょうか?」
巧と夕呼のやり取りに何だか耐え切れなくなって、真那は意見を申し出た。
「そう怒らないの。これから大事な話があるんでしょう? 暁。それを聞かせる為にわざわざ月詠中尉を連れて来たのよね?」
「はい」
「全て話すの?」
「色々悩みましたが……月詠中尉が後押しになりました」
「私が?」
「悩みがあったら相談してくれって言ってくれたし……何より、この世界での初めての友達やしな」
「巧……」
真那は小さく、けれども嬉しそうに「そうか…」と洩らした。
「それで?」
「はい。頭から全て話します。突拍子もない話しですけど、最後まで聞いてください」
──巧が別の並行世界から来たこと、BETAがいない世界だってこと、巧はシロガネ タケルという人間の可能性もあること、あ号標的を倒した未来を知っていること、ほぼ全てのことを話した。
夕呼は喜んだ。可能性のある未来が増えたことを。
真那は……。驚きはしたが、
辻褄が合ってるし納得出来る……巧を信じると誓いもした。だけど何だか不安が拭い去れず、真那は問い質す。
「焦っていた理由は何だ?」
「………香月副司令、話ていいんですか?」
「此処まで話して何言ってんだか」
「ですよね」
深呼吸をして話し始める。
自分の可能性の未来も含めて……
「まずは、オルタネイティブ計画について話していくな?」
「えぇ」
「細かい説明は夕呼さんお願いしていいですか?」
「やーよ。…って言いたいところだけど、今回は勘弁してあげるわ」
「助かります」
巧はお辞儀をして、礼を述べた。
「座学で習うようなところもあるけど、オルタネイティブ計画については表に出てないから良く聞いて」
「解った」
「あなたもBETAやハイヴについて知っているわけじゃないでしょ? そのことについても話してあげるから聞いておきなさい」
「…はい」
モニターを使って説明を始める。
「じゃ、49年前の宇宙計画から説明するわ。
・1950年
米欧共同の系外惑星探査プロジェクト・ダイダロス計画スタート。
衛星軌道への到達→月への有人飛行→大型軌道ステーションの建設→月面開発→恒久月面基地建設→惑星探査→外宇宙惑星探査に至る、人類史上最大の総合宇宙計画ね。
アメリカ国立航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)による共同極秘計画として開始されたが、のちに西側各国が参加する世界規模の国際宇宙計画に発展。多段式大型ロケット、軌道往還機、宇宙ステーション、MMU(有人型操作ユニット)などが次々と実用化される。
表向きはマーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画として段階的に公表された。
最終的な系外惑星探査計画は、大型探査機イカロスⅠの通信途絶により失敗したと公表される。
・1958年
米国、探査衛星ヴァイキング1号が火星で生物を発見。画像送信の直後に通信不能となる。
この時点で何も疑問を抱かなかったのかしらねー。
で。その後、相次いで火星探査計画が浮上する。
・1959年
国連、特務調査機関ディグニファイド12招集。
火星表面の巨大建造物発見により火星生命が知的生命体である可能性が示唆され、コミュニケーション方法を確立する目的の研究が開始される。
・1966年
国連、オルタネイティヴ計画スタート。
ディグニファイド12が発展的にオルタネイティヴ計画へ移行。世界規模の巨大計画へ昇格。
この時点では『敵対的』と判明していないため『BETA』とも命名されていない。ほかの無人探査機による言語解析等だったとすると、サクロボスコ以前にオルタネイティブ1が開始されていても矛盾はないわ。
オルタネイティブ計画は、最初、地球外生命との会話を試みる程度のことだった。
だけど、オルタネイティブ計画が本格的になるのは……。
・1967年
月面、サクロボスコ事件。
国際恒久月面基地『プラトー1』の地質探査チームが、サクロボスコクレーターを調査中に、火星の生命体と同種の存在を発見、その後消息を絶つ。
第一次月面戦争勃発。
人類史上、初の地球外生物と人類との接触及び戦争……所謂BETA大戦の始まり。
『異星起源種』
BETA:
Beings of the
Extra
Terrestrial origin which is
Adversary of human race
『人類に敵対的な地球外起源生命』と命名される。
米国、NCAF-X計画発動。
サクロボスコ事件とそれ以降の戦闘結果を検証した米国国防省が、在来兵器の決戦能力に疑問を提示。軍産一体の対BETA宇宙兵器開発プロジェクトが多数提示される。
・1968年
国連、オルタネイティヴ計画を第二段階へ移行……。
戦争状態の現出を受けて、より直接的なBETA生態研究のためにオルタネイティヴ計画は第二段階へと移行。
これ以後、前段階をオルタネイティヴ1、現段階をオルタネイティヴ2と呼称することが決定する。
生物学的に出鱈目なその形状・生態は研究者を震撼させ、未知領域に対する潜在的恐怖は生命倫理を逸脱した第三計画採択への呼び水となる。
オルタネイティヴ2ではBETAの捕獲、生態研究に莫大な予算と犠牲が払われたため、「結果的に得たモノは、BETAは炭素生命体という事実のみ」と揶揄され、“失敗した計画”という印象が付きまとうが、実際には代謝低下酵素の発見など人類に対する貢献度は非常に高い。
国連は、オルタネイティヴ3予備計画招集。
BETAとのコミュニケーション方法を模索するというオルタネイティヴ1の失敗に対し、
「ESPによって直接思考を読み取る」
というソ連案が採択され、ソビエト科学アカデミーの研究に国連予算の提供が開始される」
真那は理解ができずに呟いていた。
「思考を……読み取る?」
「それは後で説明するわ。……続けるわよ?
・1973年
4月19日中国新疆ウイグル自治区・
喀什にBETAの着陸ユニットが落下。
中国とBETAの戦闘が始まる。
オリジナルハイヴ(H1:甲1号目標)の建設を開始。
BETA群が西進を開始
中国は、優勢な戦況を背景に国連軍の派遣を拒否するが、光線属種の出現により、人類側の航空戦力を無力化される。
BETAの物量に抗しきれず、中ソ連合軍側は撤退を重ね戦術核を用いた焦土作戦で対抗するも実質的な効果なし。
月面、第一次月面戦争終結。プラトー1を放棄する。
BETAの地球侵攻を受け、国連航空宇宙総軍司令部が恒久月面基地プラトー1の放棄と月からの全面撤退を宣言。月がBETAの完全勢力下に。
国連は、オルタネイティヴ3発動。
直接的な侵攻と驚異の物量に歯が立たない実状を受け、決定的な成果を生まないオルタネイティヴ2が見切られ、ソ連主導のオルタネイティヴ3への移行が決定する。後に、リーディング目的のハイヴ突入作戦によってその殆どが犠牲となる。
・1974年
7月6日カナダ、サスカチュアン州アサバスカにBETAユニット落着。
落下したユニットに対し、米軍が喀什の教訓を生かし着陸とほぼ同時に戦略核の集中運用でBETAを殲滅するが、カナダの半分が汚染され人が住めなくなる。
米国、戦略防衛構想(Strategic Defence Initiative)発表。
喀什とカナダへのBETAユニット落着に危機感を抱いた米国は、宇宙空間でのBETA着陸ユニットを迎撃する軌道防衛体制の強化を図った。アサバスカ事件を受けて、米国議会は北米の対BETA防衛力を優先的に高める法案を決議。
最前線である欧州供給枠は据え置かれたため、日本の供給順序が降格される。
日本は、戦略防衛構想に参加。
米国は、サイン計画発動BETA鹵獲技術の研究を開始。
アサバスカから回収した着陸ユニットの残骸がロスアラモス研究所に搬入され、ウィリアム・グレイ博士指揮の下、敵性先進技術の研究が開始される。
国連、世界人口の激減を警告。
国連統計局が世界人口が約30%減少したと発表。原因はBETA大戦の影響。
いよいよ人類滅亡へのカウントダウンが開始されてるわね。
25年後の今の世界人口が約60%減少。単純計算でもう25年後には約90%まで減少する……」
「……最悪やな、本当に」
「そうね。けど、“まだ”最悪じゃないわ。──とりあえず、BETAとハイヴについても話しておくわ。
暁、一度しか言わないから覚えてちょうだい」
「……善処します」
「BETAとは、人類と同様の炭素系生命体」
「未だに信じられん。炭素系生命体だと?……ふっ……。人間と同じ? アレが?」
「そう。だけど、人間のように交配をすれば次の種が出来るわけではない。そもそも、生殖器が存在しないし男女の違いだってない」
「何じゃそりゃ」
「その通り、今も学者達の頭の中はそんな状態よ。明らかに人間より劣っている個体。なのに火星から地球までやってくるような科学力を持ってたりする……」
「ワケ解らん。……やけど、だからこそ不気味や」
「……あたしもよ」
「でも何で攻撃してくるんです?」
「暁、そこの紙とって」
「え? はい」
巧は訳が解らないが夕呼の言葉に従う。
夕呼は渡された紙を床に放った。
「それを雑草と思って」
「はぁ」
「あたしからの命令。その雑草を抜きなさい」
「はい。終わりました」
夕呼の言われるがままに巧はことを成した。
そして夕呼は続ける。
「つまり、その程度のことよ」
「は?」
「紙を取るような雑用、雑草を抜くようなこと……あなたは意味もなく雑草を抜いたことは? ただ、道にある草花を蹴ったり踏んだりってのは?」
「あります、けど……」
「雑草をわざわざ避けて通る人間なんてそうはいないわ。違う?」
「まぁ、そうだと思います」
「BETAは人間に対してそれと同じことをやってるってわけ」
巧は、思わず言葉に詰まってしまう。
「何っ…だよ、それ……。それだけの理由で世界人口の半分以上が死んだのかよ」
「戦争の理由は大抵くだらないものよ。だからと言って、納得出来るかは別だけど」
「でも……同じ炭素系生命体なんでしょう?」
「そうね」
「何で……」
「あいつらは、あいつらの上位生命体しかできないことを人類が出来るわけが無いと決めつけてる節もあるわね。
『人間、人類』を生物として認識していないのは、彼らを作り出した『創造主』と呼ばれる知的生命体が珪素系生物であり、炭素系生命体である人類を『生命体』として認識していないからだと言われてる。
BETAはBETA自身を含む炭素系生物を生命体と認めず、創造主のような珪素系生物のみを生命体と見なす。だから雑草を抜く……つまり殺しても構わない」
「最低やな」
「何処まで行っても低俗な奴らよ。
まぁ兎に角、火星や月は既にBETAに支配されて、地球では1973年のBETA来襲以来、26年間にも渡って人類との戦争が続いているワケ。人類は再三BETAと接触しているが、生命体として認識されていない。
BETAの言語やコミュニケーション手段は一切不明だが、高度な学習能力と、生物が生きる上で過酷な環境にも適応する能力を備えている。また、BETAの生態系についてはほとんど解明されておらず、外見や戦闘能力に応じて便宜的に区分されているのが現状……。
地球に来た目的なども不明だが、『ハイヴ』と呼ばれるBETAの“巣”から外宇宙へシャトルのようなものを発射されているのが確認されている。地球周辺の宇宙空間も既にBETAが支配しているが、衛星軌道上の人工衛星や、ラグランジュ点で建造中の地球脱出用宇宙移民船などは攻撃を受けていないため、BETAは地球そのものに対して、なんらかの目的があると思われている。
で、地球上で確認されているのは以下の種。
比較の画像は、人類と戦術機よ。
人類は約180cm。
戦術機は約18mとして、見て頂戴。
◆光線属種
光線属種は重光線級と光線級の2種が確認されている。光線属種が放つレーザーは大気や気象条件で威力の減衰が期待できない程の高出力を持ち、捕捉されると逃げられず、戦術機の装甲でも数秒しかもたない。また、味方への誤射は絶対にしない。しかし、標的を捕捉し照射準備に入ると動きが止まり、標的の追尾以外行動をとらない。一度レーザーを照射すると、再照射までエネルギーの充填時間がある。
再照射までは光線級で12秒、重光線級で36秒かかる。
1990年代に入ってからは軌道爆撃による
AL弾爆撃とMRV(多弾頭再突入体)の被撃墜による重金属雲の形成によって光線属種の無力化を図り、その後地上の支援砲撃部隊が光線属種の殲滅を目的とした面制圧を実施、その後に戦術機を主力とした制圧部隊を投入する戦術が主流になっている。
レーザー照射器官などを除き、光線級と重光線級との生物学的な共通点はない。
◇
光線級
全長:1.2m
全幅:1.6m
全高:3m
学術名:
Luxcius:光るもの
Duo oculus:ふたつの目
俗名:
Lux
ルクス
防御力、高出力レーザーは30kmも離れた標的を撃ち落す程の威力を持つ。
俊敏だが防御力耐久力はほとんどなく、36mm砲で十分対処てきる。高度1万mの空間飛翔体に対し有効射程距離(30km)に入った瞬間、確実に撃破するほどの精度と威力を持つレーザーを放つ。
それでいて、決して
味方誤射はしない。照射インターバルは約12秒。
下記の重光線級と併せてレーザー属種と呼ばれる。
全高3m程の小型のヤツですら、380km離れた高度1万mの飛翔体を的確に捕捉し、30km以内の進入を許さない。
光線級の原種は、元々資源打ち出しや岩盤溶解作業などを担当するBETA。
中ソ連合の航空作戦や爆撃に対処するため、光線級の原種が対空任務に転用され、光線級と重光線級に進化したようよ。
一般的に光線級という場合は、重光線級を含めた光線属種のことを指す。
◇重光線級
全長:15m
全幅:11m
全高:21m
学術名:
Magnus luxcius:巨大な光るもの
Unioculus:ひとつの目
俗名:
Magnus lux
マグヌス ルクス
動作は緩慢だが照射粘膜(黒い目の様に見える部位)以外の防御力は比較的高く、120mm砲が有効とされる。レーザーは天候による減衰を期待できないほど出力が高く、高度500mで低空飛行する標的に対しても約100km以上の有効射程距離を持つ上に、決して味方誤射はしない。
戦艦の耐熱耐弾装甲も十数秒で蒸発させる威力がある。
弱点である照射粘膜には瞼のような保護膜があり、相当な強度がある。
照射インターバルは約36秒。
光線級と併せてレーザー属種と呼ばれる。
◆大型種
大型種は今のところ3種が確認されているわ。
◇
要撃級
全長:19m
全幅:28m
全高:12m
最大全幅:39m
学術名:
Rrabidusius:獰猛なもの
Bracchium acutas:尖った腕
俗名:
Medium
メデューム
要撃級は頑強な前腕が特徴。修正モース硬度15以上(ダイヤモンドは修正モース硬度15)の二対の前腕を最大の武器とする敵戦力の主核の種族であり、その近接戦闘能力は非常に高く、その前腕で殴られると戦術機といえども一溜りもない。
前腕を広げた状態の最大全幅は約39mであるが、それだけのサイズであるにもかかわらず俊敏であり、定常円旋回機動能力も高い。
防御力や対人探知能力にも優れる、BETA戦力の中核をなす種。
攻撃用の前腕はダイヤモンド以上の硬度とともにカーボネードを凌駕する靭性を併せ持つ。
顔に見えるのは尾節であり、歯を食いしばった口に見える部分は感覚器に過ぎない。
伊隅曰く“戦場でもっとも多く出会うお友達”だそうよ」
(「真顔で言われてもな…」)
「次は、
◇
突撃級
全長:18m
全幅:17m
全高:16m
学術名:
Impetusis:突進するもの
Arma duras:尖った鎧
俗名:
Ruitare
ルイタウラ
突撃級は破壊力が凄まじく前面に頑強(修正モース硬度15以上、要撃級の前腕と同じ硬度を誇る)な装甲殻を持ち、確認されている8種のうちで最大の防御力を誇る。ただし無敵ではなく、36㎜の一点集中攻撃や、120㎜砲の連続攻撃で前面装甲を貫通することは可能といわれている。
BETA戦では必ずと言っていい程先頭にいる。
ただし機動制御能力、特に旋回能力は低く、対人探知能力は全BETA中で最低。直線的な機動は優れていて、最高時速は170kmにも上る。
前面装甲殻を武器とした衝角突撃戦術の破壊力は強大で、要撃級の一撃などとは比較にならない。まともに正面からぶつかれば大破、即死は免れない。
だけど、後方はほぼむき出しの状態だから、防御力が低い。
後方占位での攻撃ならば36mm砲での撃破が可能よ。
ハイヴ内など、制限された空間では最大の脅威となるBETAね。
……実は双頭」
「御茶目かっ!? 夕呼さん、豆知識はいいって! つーか、何? そのしたり顔!?」
「だって、飽きてくるじゃない」
「説明する方が先に飽きるなよ!」
「はーい、はい。根気よく聞いてるあんたの為に続けてあげるわ」
「……。あー、ありがとう、ございます……」
「渋々って感じ?……まあいいわ。
◇
要塞級
全長:52m
全幅:37m
全高:66m
学術名:
Pergrandium:巨大なもの
tria corpus:三つの胴体
俗名:
Gravis
グラヴィス
要塞級は地球上で確認されているBETAの中では最大。10本足だが、体構造は昆虫に似ている。
図体がでかい分機動力は低い。
動作は比較的緩慢であり、対人探知能力も高くはないが、防御力、持久力共に高い。
攻撃力も高く、10本の脚による打撃は要撃級のそれに勝るとも劣らないうえ、先端が鋭くなっているため踏みつけられると戦術機といえど串刺しとなる。
また、尾節には全長約50mもの触手がある。触手の先端にはかぎ爪状の衝角もダイヤモンド以上に硬く(修正モース硬度15以上)、この触手を器用に振り回して攻撃してくるため、側方・後方にも死角は存在しなくなってる。
その威力はたやすく戦術機を貫通するほどよ。
更に、この衝角が何かに触れると強酸性溶解液が分泌されて、たとえ戦術機であっても溶かしてしまう。図体に似合わない器用さでこれを振り回してくるため、迂闊な接近は危険ね。
36mmではほとんど効果がなく、120mmでも直接のダメージはあたえにくく、120mm砲もしくは近接戦闘で、三胴構造各部の結合部、関節部を狙うのが効果的とされる。
胎内から小型種が出現するという事例が報告されており、光線級なら6体搭載可能とされている。
…………。
あー、喉渇いた。ちょっと休憩。社、お茶」
一時休息を挟んで、説明を再開する。