欧州債務危機の拡大阻止へ、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は3段構えで金融安全網を強化する。欧州金融安定基金(EFSF)が年明けから本格始動。IMFの資金補完を経て、2012年中に恒久的な枠組みである欧州安定メカニズム(ESM)を設立する。イタリアなど経済規模が大きく債務残高も多い国の資金繰り悪化に備えた措置だが、EU条約改正など難問も残る。
最初に動き出す安全網はEFSFで、融資能力は4400億ユーロ(約5900億ドル)。外部投資家の資金を呼び込んで規模を大幅に拡大し、12年1月には支援体制が整う予定だった。
だが、信用不安の拡大で新興国の政府系ファンド(SWF)などの取り込みが難航し、大幅な拡大は難しくなった。米格付け会社がEFSFの格付けを引き下げ方向で見直すと発表したこともマイナス。格下げされると資金調達コストが上昇し、支援力が低下する。
そこで登場する第2の安全網がIMFだ。レーン欧州副委員長は「IMFによる2国間融資やSDR(IMFの特別引き出し権)活用が考えられる」と指摘する。20カ国・地域(G20)が具体策を検討しているが、EFSFでカバーできない部分をIMFに補完してもらう狙いだ。
8~9日のEU首脳会議は「欧州版IMF」とも呼ばれるESM設立の前倒しを決める予定。このESMが第3の安全網で、危機対応の「本命」と目されている。ESMは当初13年半ばに設立する予定だったが、独仏首脳らが12年中に設立する必要があるとの認識で一致している。
ESMは資本金を持つなど一般の銀行に構造が近く、欧州中央銀行(ECB)から資金供給を受けられる可能性がある。ECBの同意を得て融資を受けることができれば、財政悪化国への支援拡大が可能になる。
ただ、ESMは資本金の積み増しが段階的に進むため、設立当初は融資能力が予定より小さい。そこでEUはESM設立当初はEFSFを残し、双方の併用を検討している。EFSFとESMの「二枚看板」で危機対応力が大きく損なわれないように配慮する。
ESM設立にはEU条約改正案を各国議会で批准する必要があり、年明けから本格審議が始まる。財政悪化国への支援に対する理解が得られず各国の議会審議が滞れば、計画通り12年中に設立できなくなるリスクが残る。3段構えとはいえ、欧州の安全網は綱渡りだ。(ブリュッセル=瀬能繁)
ESM、IMF、EFSF、EU、本命
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