ヨーグルトに効果なし? 双子の検討で腸内細菌に差なし

2011年12月6日 17時30分 更新

ヨーグルトに効果なし? 双子の検討で腸内細菌に差なし

米研究

 朝食やおやつ、夕食後のデザートなどとして、世界中で愛されているヨーグルト。含まれている乳酸菌の整腸作用を期待して食べている人も多いのではないだろうか。ところが、実際にはそれほどの効果が期待できないかもしれない。そんな研究結果が、米ワシントン大学のNathan McNulty氏らによって、米医学誌「Science Translational Medicine」(2011; 3: 106ra106)に発表された。一卵性の双子を対象とした検討では、ヨーグルト摂取の有無で腸内細菌などの変化に差が認められなかったという。

意外に難しかったヨーグルトの効能試験

 一般にヨーグルトは、腸内細菌に作用し腸内環境を整えることで、下痢や便秘に効くのだと信じられてきた。しかし、ヨーグルトの有効性は、どこまで科学的に証明されているのだろうか。実は、腸内環境を作る主役である腸内細菌の多様性や腸内環境の個人差、腸内環境に影響を与えるさまざまな要因などによって、厳密に管理された実験を行うことはこれまでとても難しかったのだという。

 McNulty氏らは、この困難な課題に対処するため、人間に対する検討では一卵性双生児を、マウスを使った実験では無菌マウスを用いて、ヨーグルトが腸内細菌に及ぼす影響を調べた。

 具体的には、成人女性の一卵性の双子7組の一方に対し、5種類の乳酸菌を含む市販のヨーグルトを1日2回、7週間にわたって食べるよう指示し、もう一方にはヨーグルトを食べないよう求めた。その間と前後4週間、定期的に採取した大便に含まれる腸内細菌の種類や、どのような遺伝子が細菌の中で活性化されているのかを検討した結果、驚いたことに、腸内細菌の種類やその比率、活性化している遺伝子の種類や量比、いずれもヨーグルト摂取の有無による違いは双子の間に認められなかったという。

マウスの実験ではわずかに効果あり

 次にMcNulty氏らは、無菌マウスの腸内に、15種類のヒトの腸内細菌のみを人為的に定着させ、その活動に及ぼすヨーグルトの影響を調べた。すると、人間での検討結果同様、腸内細菌の種類やその比率にヨーグルト摂取の影響は認められなかったが、活性化している遺伝子については、わずかながら差が認められた。糖を分解する酵素群の遺伝子が、ヨーグルトの摂取により活性化したというのだ。

 このわずかな差が、ヨーグルトが腸内細菌に与える効果のすべてだとしたら、これまでわれわれがヨーグルトに寄せていた期待はあまりに大きかったということになる。ただし、人間での検討は、実験例が7人と少な過ぎる点、マウスの実験は人間の腸内細菌がマウスの腸内で人間の腸内と同様の挙動を示すのか疑わしい点などを挙げ、結論するには時期尚早という意見もあるようだ。

 いずれにしても、自分が効果を実感して食べているのなら、それはそれで良いのではないかという気もするのだが…。


(サイエンスライター・神無 久)


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