'11/12/5
中電、「立地市並み」に難色
中国電力が、島根原子力発電所(松江市)の周辺自治体から求められた「立地市並みの安全協定」に難色を示している。福島第1原発事故を受け、協定拡大には前向きだが、増設の際の自治体の事前了解などは認めない方針。増設や再稼働時のハードルを高めたくない思惑ものぞく。
「報告とともに、寄せられた意見に誠意を持って対応する」。中電は11月下旬、微妙な表現の対案を示し、鳥取県と米子、境港市の要請をかわした。自治体側は原発の増設、再稼働時などに、中電が自治体から事前了解を得る協定内容を求めていた。
中電は、情報提供や損害の補償などを盛り込む協定締結には応じる方向。だが島根県と松江市に認めている増設時の事前了解、原発への立ち入り調査などは認めない方針だ。中電電源事業本部の北野立夫専任部長は「島根県、松江市とは長い協議のプロセスがある」と説明。協定内容には差が必要とする。
原発から30キロ圏にある出雲、雲南市も「立地自治体並み」の協定を求めている。国の原子力安全委員会は福島の事故を受け、重点的に防災対策をとる地域を従来の8〜10キロから30キロ圏に拡大する案を示した。「危険性は立地自治体と変わらない」との周辺自治体の訴えと、「30キロと安全協定は必ずしも一致しない」(苅田知英社長)とする中電の考えには隔たりがある。
中電が島根県、松江市との協定を30キロ圏に広げた場合、事前了解の対象は一気に2県6市へ広がる。ほぼ完成した島根原発3号機の運転開始や、トラブルなどで停止した原発の再稼働時に、周辺自治体の「発言権」が強まるとみられる。
鳥取県は中電の対応を一定に評価するが、県議会には「立地自治体並みにこだわるべきだ」との声もある。ある中電幹部は「これ以上求められると厳しい」と漏らす。