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[30457] 名無しの物語   習作
Name: キャンサーナイト◆b5d29cda ID:7d243207
Date: 2011/11/24 15:55
滾れ! 我が中二回路よ! 
妄想を行くところまで逝かせればどの程度の小説を書けるのか試すのだ!



この通り、このSSは作者の中二心に無理やり火を点けてどれだけ面白いものを作れるか?
というのを試すものであります。


忌避無き意見をお待ちしております。


え?ハーレムでオレTUEEE最強? 何ソレ美味しいの?



[30457] プロローグ  ちょいと改訂
Name: キャンサーナイト◆b5d29cda ID:7d243207
Date: 2011/11/21 01:24
窓一つすらない光も届かぬ暗い部屋の中、フードを被った人影が蝋燭の仄かな灯りに照らし出されていた。
人影は何をするわけでも無く、安楽椅子に座り染み一つすらない石造りの天井を眺め、時折思い出したかのように咳を零していた。

バンッ、と大きな音を立てて部屋の扉が開かれ外の光が部屋を照らす。人影はその光を眩しいとでもいうように顔を手で覆う。


「ここに居たか、魔王」


扉を開けたのであろう者が、部屋に入るなり椅子に座っている老人に向けて声を発する。


「人違いではないかな? あいにく私は魔王などといったモノを名乗った記憶などは無いな、人形」

「戯言を、この館に居る者はお前で最後。我が神の命により、魔王お前を殺す。数百年続いたこの戦争も、これで終りだ」


血塗れた剣を向けてそう言うまだ幼さが残っている顔つきをした少年に、老人が顔を綻ばせ、
まるで世間話をするかのような調子で返すが、若者はソレを無視し言葉を連ねる。


「数百年か……思えば私も長く生きたものだ。さて、最後の戦いを始めようではないか。老骨には堪えるものなのだがね……」


老人はそう言って立ち上がり、床に置いていた赤黒い染みの付いたハルバードを杖か何かのように軽々と拾い上げ若者にその切っ先を向ける。


「それが我が神を傷つけたと言う斧槍か……」

「傷つけたは良いが、その代償で左手を持っていかれたがの」


そう言ってヒラヒラと先の無くなった左腕を振る。その顔は楽しそうに笑みを浮かべ、これから命を賭けた戦いをするなどとは微塵も考えてはいないようであった。


「その命、貰いうける」

「良いだろう、見事私を殺してみせよ人形。出来たらの話だがな」


声を交わし終わるがいなや剣と斧槍が交差し剣戟の音が部屋に響く。老人が若者を叩き切らんとハルバードを振り回し、少年が時にかわし、時に剣で受け流して間合いを詰めていく。


「貫け!」

「お得意の無詠唱魔導術式か、だが残念。私には効かんよ」


少年が叫ぶと同時に現れた魔法陣から放たれた雷を老人がハルバードの一振りで掻き消す。


「チィッ! だがッ!」

「一々大声を出すな、耳に響く」

「何ッ!?」


雷を掻き消してがら空きになった老人の胴体に向けて踏み込み、剣を突き出すが、剣の腹を蹴り上げられ強引に切っ先を持ち上げられあらぬ場所を切っ先が通り過ぎていく。


「飛べ」

「グ、がぁ……」


全身鎧の上から叩きこまれた老人の左肘が鉄板を凹ませ、その衝撃を余すところなく中身に伝える。
少年はそれに踏ん張ることすらできずに吹き飛ばされ、二転、三転と床を転がり石壁に叩きつけられようやく停止した。


「ふむ、情け無いな。隻腕の老人を相手にこの様か。それとも若すぎるからか……。歴代の勇者と呼ばれた者達が見たら泣くぞ人形」

「ぐ……、ガフッ、ォエッ……」


内臓が傷ついたのかその場で反吐と共に血を吐き出す少年を見て、老人が呆れたようにタメ息を吐きつつそう声をかけた。

外見からして齢は恐らく12、3辺り、幼いとしか言いようがないほど若い。神からの力の供給とやらは行われているらしいが、これではまだ将軍格の方が強い。


「ふむ、となると……焦っておるようだな、貴様等の神とやらは。傷は癒せなかったらしいようで安心したぞ」

「クッ…………」


絶望的な状況だというのに少年はまだ諦めていないのか殺意で目にギラつかせて此方を見ている。


「心が折れぬことには賞賛するが、勝てぬとわかっても退かぬ猪か……全く本当にこやつで良いのか心配になるな」

「何の話だ……」

「我等が神が企てた計画の話さ。悪いが、君にはその礎となってもらう」

「誰が貴様等の計画など手伝うものかッ!!」

「だろうな、そう答えると思っていたよ」


血反吐を吐きながらも気炎を上げる少年に老人は笑みを零す。


「だがこれは私の命すら賭けられている、正真正銘最後の計画でな。君に手伝わないという選択肢は元より存在などしておらぬのだ」

「貴様等に利用されるぐらいなら死を選ぶ!」


少年はそう言って懐に隠し持っていた短剣を抜き、自身の喉に突き立てようとするが……
直後飛来したハルバードに短剣を持っていた腕ごと貫かれ、壁に縫い止められた。


「がぁあ嗚呼アあぁああぁあ!?」

「余り足掻くな、殺さぬように手加減するのも手間なのだ」


開いたままの扉を閉め切り、ツカツカと足音を立てて老人が痛みに喘ぐ少年の前まで歩み寄り、その頭を掴み上げる。


「な……何をッ……」


少年の疑問に老人が柔らかな笑みを浮かべると同時に、少年の脳に見知らぬ情報の波が襲いかかった。


「グガウゥうぅうううぅウウァアアアァ嗚呼アア!!」

「数百年にも及ぶ我が記憶、全てを貴様に譲ろう。誇りに思えよ、いずれ我が子の為にととっておいたものだ。尤も先の大戦で私を庇って死んでしまったがね」


口から泡を吹き出してビクリ、ビクリと体を震わせる少年を尻目に、
老人は腕に突き刺さっているハルバードを無造作に引き抜き、部屋の中央に向けて投擲する。

ハルバードと言う支えを失ってドシャリと音を立てて床に崩れ落ち、痙攣を繰り返す少年をボールか何かのようにハルバードと同じ場所に蹴り飛ばした。
血反吐を吐きながら部屋の中心に転がっていく少年を尻目に、老人は床に転がっていた少年の剣を手に持ち、ソレで迷い無く自身の胸を刺し貫いた。


「ぐぬぅ……く、……準備は……ここに、整った。我が肉体と……この館に在る全ての魂、を捧げる……ッ!!」


そういい終えるが早いか、部屋中に彫られていた文字の羅列が一斉に紅い光を放ち明滅を繰り返しながら、徐々にその光の強さを増していく。


「後は頼みましたぞ。我、等が……神……よ…」


老人が最後にそう言い残すのを待って居たかのように、その光が部屋全体を覆い部屋を紅に染め上げる。
光の収まった後には中央に突き刺さっていた筈のハルバードも、先ほどまで居た二人も忽然と姿を消し、
ただゆらゆらと揺れるか細い蝋燭の光が、床に転がる血の一滴すら付いていない白銀の剣を照らし出していた。















中二回路、全☆開!さぁ、滾れ我が妄想!中二回路を暴走させたらどの程度のファンタジー小説が書けるか試すのだ!
黒歴史確定? ハーハッハッハハハ物書きとはそういう者よ!黒歴史が怖くてファンタジー小説なぞ書けるか!



[30457] 一話目   改訂
Name: キャンサーナイト◆b5d29cda ID:7d243207
Date: 2011/11/24 02:43

「う……ぁ? ……ぇ?」


目を覚ますと全く見覚えのない天井が目に入った。どれくらい眠っていたのだろうか? 嫌に体が重く感じる。


「えと……ここは……?」


重いマブタを擦りながら体を起し、周りを見渡してもここが何処か全くわからない。質素ながらも品を感じさせる家具が取り揃えられた部屋にいるようだが、
このような部屋で寝た覚えなど無い。寝起きのせいか、どうして自分がこんな所で眠っていたのか全く思い出せなかった。


「知らない人の家? でも、何で……こんな所に?」


寝る前に一体何があったのかを思い出そうとしばし考え込み……何一つ過去の事を思い出せない事に愕然とする。


「え? 嘘、どう…して? なんで? 何も……何も思い出せないんだ……?」 


消えていた、全ての記憶が跡形も無くなっていた。いや、ただ一つ思い出せるものはある。それは恐らく自分の物であるはずの名前。


「アルフ……レッド? それが、オレの名前……か?」


それが本当に自分の名前なのかすら定かでは無い。ただ、真っ白な記憶の中、自然と思い浮かんだ名前だった。
自分というものが何一つ定かではないことへの恐怖に体が震え、歯がガチガチと音を立てて鳴る。自分が何者かわからないのが、ただ無性に怖かった。


「おー、目覚めたか少年。やー、いきなり私の部屋に落ちてきたから吃驚したもんだよー」

「――――ッ!?」


誰も居なかった筈の背後からかけられた声に反応して体が勝手に動き、ベッドから半ば転がり落ちるように飛び降り、着地すると同時にソレを横倒しにして盾にする。


「………………」

「………………」


沈黙がその場に降りた。アルフレッドは自分が無意識にとった行動に驚愕して思考が止まり、
栗色の長い髪を靡かせて部屋に入ってきた女性は、驚きの余り浮かべていた笑顔そのままに固まっている。


「あー……、何もそこまで驚かなくてもいいんじゃないかな?」


友好的な笑みを苦笑いに変えた女性が先にその気まずい沈黙を破りそうアルフレッドに声をかけた後、指をパチリと鳴らした。
すると、少年に倒されて盾代わりにされていたベッドが一人でに浮かび上がってゆき、段々とその色を薄くし消えていく。


「なっ!? 」

「うんうん、驚いてくれているようで何よりだ。私は二度も君に驚かせられたんだから、
これくらいしないと平等じゃないってもんでしょ」

「えっ!? ちょっ、あのっ! これっ……えぇ!?」


アルフレッドは消え去っていくベッドを指差して、目の前でその豊満な胸を張りカラカラと得意気に笑う女性に何をしたのか聞こうとするも、
桁外れに非常識なモノを見せられて脳がパニックに陥り、何を聞くにも思考が纏まることはなく、口からは驚きの声以外出ることはなかった。


「ふふん、どうだい少年。混乱極まって逆に落ち着いてきたんじゃない?」

「え? …………あっ! えぇ、はい。おかげさまで?」


アルフレッドは女性のその言葉を聞いて怪訝な顔をしたが、
そう言われて初めて絡みついていた恐怖感が完全に消えていることに気づき、余り訳も分かっていないまま、女性に対して頭を軽く下げた。


「ならよし!」


それを聞くと、女性は満面の笑みを浮かべて大きく頷き、アルフレッドの頭をその白く綺麗な手でガシガシと乱暴に撫でつける。
その気恥ずかしいような、心地いいような不思議な感覚に自然と頬が緩んだ。


「うんうん、完全に落ち着いたらしいね」

「はい、なんとか。あー、少し聞きたいんですがここは一体……」

「私の家さ、ここは何処でもない、ただ私の家があるだけの場所。その為だけに作りあげた場所」


何処、と続ける前に女性が長い髪を掻き揚げながら答えになっていない答えを返す。


「え? ……あの、言ってる意味がよく……」

「ここは私が私の為に作り出した空間ということだ。この家、部屋、
そして置かれている物の何もかもは私が創造した物、そう言うなれば私の専用の空間」


疑問の声すら遮り女性はとうとうと語っていく。その顔は冗談を言っている訳でもなく真剣であり静かだった。


「質問だ、答えてくれよ少年」


そう言い切って目を瞑った彼女は一言だけ、怪訝な顔をしているアルフレッドに告げる。その言葉は命令であり、答えぬ事を決して許してはいなかった。


「………………君は一体何者だ? 何が目的で私の部屋に現われた? そも、どうやってここに入ってきた?
あの呪われた武具は? 何があって君はあれほどの重傷を負っていた?」


長い沈黙の後、目を開き、氷を思わせるほどに感情の無い冷たい顔をした彼女が、矢継ぎ早に問いを投げかける。


「ぇ……ぁ……」


それに対しての答えを全て失っているアルフレッドにはその詰問全てに答えることが出来ず、閉口し蛇に睨まれた蛙の如く竦み上がるしか他無かった。


「何故答えられない? 簡単な話だろう、何でも良い答えてみせよ」


女性の放つ気配に気圧され、無意識のうちに足が一歩一歩と下がっていく。気がつけば背中が背後の壁にぶつかっていた。

それを追うように女性が足を進める。足音が一つ近づくたびに恐怖感が増し息が苦しくなっていく。

(怖い)

心臓を鷲掴みにされているとはこの事を言うのだと本能が理解した、脂汗が止まらず服がジットリと重たくなっていく。
見様によればまだ少女とも見れる女性の放つ気配では無い。しかし、可笑しなことにこの威圧感が妙に懐かしく感じるのもまた事実だった。
自分は何時か何処かで似たようなモノを知っている。記憶には無いが、自分の中のナニカがこれに対して既視感を抱いているのだ。


「お、オレは……オレはアルフレッド、アルフレッドだ。それ以外は知らない、何も思い出せないんだ。
だ、だから……質問に。答えることは……出来ない」

「ほぅ? 記憶を失ったと? よもや嘘ではあるまいな?」


ようやく絞り出せた言葉に、女性は眉を上げ探るような眼でアルフレッドを見つめる。本能的な恐怖で涙が出そうになりながらも、覗き込む彼女の蒼い眼を気丈に睨みかえす。
覚えの無い既視感が無ければ目を逸らして居ただろう。それ程まで彼女の眼は強い力を持って自分を見つめていた。


「ふん、まぁ嘘ではないか。怖がらせて悪かったな。あぁあぁ、泣くな泣くな。小さい子を苛めている気になるじゃないか」


ある程度の納得はいったのか、凍りつかせていた表情をへにゃりと崩し、ケトケトと笑いながら女性が怯えきっているアルフレッドの頭を優しく撫でる。
アルフレッドは頭に手を置かれた時はビクリと体を竦ませたが、害意は無いと悟ると体を固まらせていた力が一気に抜けていくのを感じた。
それこそ、その場でへたり込んでも全く不思議では無い程に。へたり込まないのはなけなしの男としてのプライドが支えていたのに他ならなかった。


「そ、それで貴方は一体……」


一時の間に干乾びた喉に唾を送り込んで、アルフレッドはどもりながら尋ねる。あんな途轍もない気配を出した女性の正体を知りたかった。
恐怖でしかなかった、しかしその中に僅かながら知っていると思えたものもあったからだ。


「んー?私か?私はアリア、ただのしがない一神様さ。ふふん、どうだ少年、別に崇めてくれたって構わないぞ?」

「は、はぁ……神、ですか」


先ほどまでの雰囲気を完全に消し、ヌフフとでも言えそうな笑みを浮かべて胸を張る。それを見てこちらが素なのだとアルフレッドは漠然と理解した。

(か、神? 何かの冗談か? いや、さっきのアレを考えれば……)
内心、肩透かしを食らったような気になりながらも「神」という単語から記憶の手掛かりを探していく。
しかし、手掛かりが曖昧すぎるのか何も頭に引っ掛かるものは無かった。


「あー、その反応は信じてないな。これでも全知全能とまではいかないが大抵のことは出来るんだぞ、
ちょっとデッカイ奇跡を起こすには供物が要るけど……まだ神様になって200年も経ってないんだからそれは普通だ。
普通のはず、普通であって欲しいな」

「はぁ……」
(神様って……確か偉いんじゃなかったっけ? こんなに軽くてもいいのかな?)


アルフレッドは自分の覚えていることが間違っているのか、それとも目の前の神様と名乗るアリアが可笑しいのかと思い悩み多少混乱する。
アルフレッドの思い描く神とは、もっと風格に威厳が有って言葉一つにも重みを感じさせる……そう、言うなれば先程の彼女と同じような……

(そう言ったらアリアが神様でも可笑しくはない? いや……そんな馬鹿な事が……)

そこまで考えて自分の思い描く神にアリアが一致していることにアルフレッドは絶大なショックを受ける。
理想と現実に差が有って無かったようなモノなのに、どうしても認めたく無いものがあった。


「あっ!?先ほど重傷とか言ってましたけど……一体どういうことでしょうか?」


先ほどのアリアの様子を思い出してブルリと体を震わせながらも、気になった事を聞く。
記憶が無くなった今、一体どんな状態でここに来たのかを知っておきたかった。


「やっぱりそれも忘れちゃってるかー。ただ君が大怪我を負って、いきなり天井から落ちてきただけだよ。
いやーあの時は驚いた! 神様になって以来一番驚いたね!」

「でも怪我なんてないような……」


アルフレッドは自分の体を見回して、包帯も巻かれていなければ、痛みの一つすら無い事に首を捻り疑問を口にする。
先ほど無意識ながらも体を大きく動かしてしまった時でさえ、身に奔る痛みなど無かったのだ。


「私が治してあげたに決まってるじゃないか。極度の意識混濁に内臓破裂、
それに口から真っ赤な血の泡まで吹いちゃってて……私が無視して放り出してたら死んじゃってたんだぞー、君」

「そうだったんですか……、どうも有難う御座います」


(イシキコンダク? ナイゾウハレツ? まぁ、血を吐いてたなら大怪我だったんだろう)
言葉の意味はわからなかったが、命にかかわる程の重傷であった。という事だけは理解出来たアルフレッドは素直に頭を下げた。


「うん。意外と良い子だね、君は。さて、それじゃ早速君の持ち物でも見に行こうか」

「あっ……」


それを見てアリアは二マニマと機嫌良さ気に笑みを浮べてそう言うと、アルフレッドの手をとりグイグイと引っ張っていく。
いきなり手を握られたアルフレッドは小さく驚きの声を上げたが、何も言わずに笑顔を浮かべて彼女の歩幅に合わせて後ろを小走りでついていった。










後書き的なもの

うひゃらはほーい! 中二病バンザイ!
しかしどうしよう……題名が思いつかねぇ……



[30457] ニ話目
Name: キャンサーナイト◆83ee4ec0 ID:e5e342c5
Date: 2011/11/29 03:43


「ほら、これだよ、これ。何か思い出せることはあるか?」

「これ……ですか……」


つれていかれた先であったものは、柄に仄かに赤い光を放つ謎の刻印が至る所に刻まれた布を巻きつけられたハルバードだった。
その刃はどれ程の血を吸ったのか赤黒く染まっており、それがナニカの生き物をどれだけ殺してきたのかを如実に語っている。


「………………」

「まぁ、君が何をして生きてきたのかはコレが物語っているというものだな」


それを見て絶句するアルフレッドにアリアは容赦なく言葉の刃を振り下ろしていく。
記憶が無くてもわかる、こんなモノを持っている輩は真っ当な人物では無い事ぐらいは。


「布に関しては気にするな。私が巻いたものだ。なに少しばかり中に居るモノを封じただけだ、害はない」

「……一体何を封印したんですか?」


封じたという言葉に反応してアルフレッドは俯かせていた顔を上げて問う。


「……………………怨霊さ」


それに対しアリアは少しの沈黙を置いて、そう一言だけ答えた。


「お……怨霊? ……って何ですか?」

「む? 何だ、そんな事も知らないのか」


全く理解できていないという顔で首を捻るアルフレッドにアリアは「仕方の無い奴だなぁ君は……」と呆れたように溜息を吐いて説明を始める。


「怨霊は……まぁ詳しく言ってもわからんだろうから簡単に言うぞ。
怨霊とは何かの概念存在が怨恨の果てに成り果てるものだ。
あぁ、概念存在と言うのは魂などの目に見えないものだと思っていればいい。
そして、それに成り果てる前の存在が強ければ強いほど、ソレが巻き散らす呪いは強くなる。
この中には私が今まで見たことが無いほど強い怨霊が入っていた、だから封印した」

「……な、なんでそんなモノが…………」


どれほどのものか理解して又も絶句するアルフレッドをよそにアリアは淡々と説明を続ける。


「怨霊の有効的な使い方というやつだ。呪いはモノによって千差万別、だがその全ては他者を傷つける物という事だけは相違無い。
例えば剣に宿すとすれば、その剣は使用者の精神を蝕み、切ったモノに呪いを与える魔剣となる。
コレは差し詰め魔槍と言ったところか……」



顔に憐憫の情を浮かべて壁に立てかけられてあったソレを手に取り、ジッと見つめる。


「あ……」


アルフレッドは彼女の空を思わせる蒼い瞳が、哀れみで濡れると同時に筆舌しがたいほどの激情を秘めている事を感じ取り、思わず口から声が漏れ出した。


「うん? どうした少年、何か気になったことでもあるか?」

「いえ……何でも、無いです」


――――気のせい……か?
そう言って此方に振り向いた彼女の何の含みも無い笑顔を見て、それが間違いではないかと思いなおし首を捻る。


「そうか? 何だって聞いてくれても構わないんだぞ? 初めての来客に、久しぶりの話相手なんだからな。気前良く答えてやろうじゃないか」


その様子がおかしかったのか、アリアはクスリと笑いを零して首を捻り続けるアルフレッドの頭をそっと撫でる。
何だか丸め込まれてないかなぁ、と思いつつもアルフレッドはその手の心地よさについつい顔が緩み目を閉じてしまう。

――――どうもオレは頭を撫でられるのが弱いらしい

必死に頬を緩ませまいとしても、どうにも抗いがたい。気がついたら口端が上がり、目が閉じていってしまっている。



「う~ん…………」


――――もしかしてこれが刷り込みという奴なのだろうか?
、と頭を抱えて悩み初めたアルフレッドを見てアリアは微笑ましいものを見るかのように暖かい眼差しを注ぐ。


「悩むのは良いことだ。だが、今は自分の記憶が思い出せるか試した方がいいぞ少年」


あーうー、とうめき声に近いものを出し始めたアルフレッドにアリアはそう言いながらハルバードをアルフレッドに向けて投げつける。

自分に刃を向けて飛んでくるソレをアルフレッドは一眼だにすることすら無く、片手で柄の部分を掴み取った。


「おぉ……!?」

「体は忘れて居ないことがあるみたいだし……ね」


また勝手に動いた自分の体に驚きの声を上げ、マジマジと手に握られたハルバードを見る。


「運動がてらに私と一戦やってみるか少年?」


アリアがそう言った瞬間、周りが歪みながら変化し、家の中から何も無い草原に変わる。


「なんだ、今度は驚かないのか」

「えぇ、あれこれと深く考えるのを止めました」

――――先ほどアリアに問い詰められた時と比べればこのくらい……
内心でそう思いながら意外そうな顔でそう聞いてきたアリアに、アルフレッドは苦笑いを浮かべてそう言い返す。
驚く事が起こりすぎて段々馴れてきた、というのが本音だった。麻痺してきたとも言う。


「なら早くかかってこい。なんなら私が先に攻めようか?」

「……本気ですか?」


まるで天気でも聞いているような気軽さで言いながら、
虚空から女性が扱うにしては無骨すぎるツヴァイハンダーを取り出したアリアにアルフレッドは力の無い声で問い返す。
返って来る答えはわかりきっていたが、一縷の望みに託したかった。


「当たり前だろう? 何の為に私が久方ぶりにあの空間から外に出たと思っている」

「あ……やっぱりそうですよね」


早々に望みが絶たれた、神は非情である。


「まぁ、ニ三日倒れてた者に本気は出さんさ。慣らしとして手は抜いてやる」

「ニ三日って……」


――――なるほど、通りで体が重いわけか。でもその割りには渇きも飢えも無い……

体こそ重いものの、活力は何時も通りかそれ以上に有ると言った不思議な感覚だった。


「神たる私がわざわざ信者でも無い君を看病してやったのだ。その程度の些事、どうにでも出来るに決まっているだろう」

「……心でも読みましたか?」

「阿呆が、顔に書いておるわ。読心程度、出来んことも無いが理由もなく無断でする程腐ってはおらぬぞ」


ムッとした顔で片手で大剣の切っ先を向けるアリアを見て、どうやら怒せてしまったようだと反省する。


「記憶の為だと思えば仕方ない……か。怪我しても知りませんよ」


若干心配そうな顔でそういったアルフレッドに対し


「図に乗るなよ少年、私にかすり傷一つ負わせることは出来ぬと知れ」


アリアは怒気混じりの闘気をその身から滾らせることで答えた。その姿を見て不覚にも心が躍る。体が疼き、柄を握る手に力が入った。


「うん? なんだ、随分と乗り気みたいじゃないか。なら遠慮は無用か?」


それを見てアリアは野性味溢れる笑みを浮かべ、その無骨なツヴァイハンダ―を肩に担いだ。


「えぇ、そこまで言うなら本気でいかせて貰います」



体に刻み込まれた記憶を信じて、目を瞑り息を整える。それだけで意識が変わっていくのがわかる。ハルバードのズシリとした無骨な重みが心地良く感じる程だ。


「……いきます」

「あぁ、何時でも来い」


その声を合図にアルフレッドはアリアに跳びかかる。繰り出すは突き、薙ぎ払い、切り上げ、石突き、打ちおろし。
アリアはその全てをかわし、払い、弾き、受け流していく。大剣とは思えぬほどの早さで振るい、アルフレッドの体に傷を増やしていく。
幾度となく刃と刃がぶつかり合う清涼な響きが何も無い草原に響いていった。


「アハ♪ アハハ、アハハハハハハ!」


笑う、嗤う、哂う、体が動く、意思なんてまるで通していないのに、相手を打倒しうる的確で鋭い攻撃を放つ自分の体に笑う。

―――楽しいっ!

記憶なんてもはやどうでもよかった、心を占めるのはただその感情一つ。
息が切れる、心臓の鐘が激しく脈打つ、ただでさえ重く感じる体は更にその重さを増していく。だがその全てが気持ちいい。
吹き出る汗が流れ落ち目に入る、刃が掠った箇所から流れ出す血が衣服を染める。今目の前を通り過ぎ、髪を切り裂いていった刃が残した剣風の何と心地よきことか。


「全く楽しそうでっ、なによりだよ!」


その言葉と同時に刃が迫る、それを柄で受け止めようとして……ようやく握力の殆どが無くなっている事を自覚した。
意識を通したせいか、体の動きが鈍る。その隙をアリアが見逃すことは無く、剣の腹で強かにアルフレッドの腹を打ち抜いていった。


「ッガァ!?」


ハルバードによる防御が無理と悟った瞬間ソレを手放し、打ちぬかれる直前に脚は後ろへと跳躍して衝撃を殺そうとしていた。
だがそうまでしても殺しきれぬソレが腹部を貫いていく。


「グッ――ガァ!? ゲッ! ァアッ!?」


アルフレッドはたまらず地面に膝を付いて胃液をその緑色の絨毯にぶちまけた。
喉を焼いて通っていくソレが地面に広がり、ツンとした刺激臭を辺りに漂わせていく。


「うわ……少し強めに叩きすぎたか? すまんな少年、何分稽古なんてつけてやるのは初めてでな」


その惨状を見てアリアが顔を顰めて這い蹲って悶えているアルフレッドに謝罪の言葉を投げかける。


「まぁ、すぐに治すさ」


そう言うと、アリアはベッドを消し去った時と同じく指をパチリと鳴らす。
瞬間、世界が巻き戻ったかのように傷が塞がり、切り裂かれた服
が元に戻っていく。腹部の痛みも嘘のように消えた。
そしてまた周りの景色が歪み、場所が部屋へと変わる


「ありがとう、ございます」


アルフレッドは眼下に自身が吐き出したモノが無くなったことを確認すると、最後の力を振り絞って仰向けに寝転がった。
最早、四つん這いになった体を支える程度の力さえ残っていない。文字通り死力を振り絞った後だ。


「うむ、あぁ筋疲労による痛みは治してないからな。そればかりは自然に治さんと体が鍛えられん」


床で大の字になって息を荒げるアルフレッドを見下ろしてアリアは言う。


「そ…ですか、すいません。少しだけ…眠ります」



アルフレッドは目を開けているのでさえ億劫だ、と言わんばかりにそう言って会話を打ち切ると、そのまま意識が深く落ちていく。


「あぁ、もっと強くなれ少年。君の求めるモノは戦場にこそ存在するのだからな」


意識が沈んでいく中、何処か遠い所でそんな声が聞こえた気がした。












指の赴くままに任せたら主人公がバトルジャンキーになったぜ! どうしてこうなった…………。
あともう名前は、名無しの物語でいいや。いい名前が思いつかん。



[30457] 三話目
Name: キャンサーナイト◆83ee4ec0 ID:e5e342c5
Date: 2011/12/07 09:52
アリアに負けてから一月、その間ずっと昏睡していたらしい。
らしいと言うのは目が覚めた後、ソレをアリアから至極面倒くさそうに聞かされたからだ。
――――おかしい……
とアルフレッドは思った。幾ら何でも昏睡していた時間が長すぎる。それに、それ程まで長く寝続けていたにしては体が軽すぎるのだ。
もっと重くなっていても不思議ではない。いや、重くなっていなければならない。それこそ水の中を服を着たまま動くような程に。

それでも一月寝たきりだった、というのは恐らく本当のことなのだろう。
まだ関わりは少ないが、アリアはこんな事で嘘を吐くような人では無いとアルフレッドの直感が告げていた。

――――何か隠している……?

嘘は吐いていないだろう。しかし何か有る。それも自分には言えないような重大な事が。
思えば、何の見返りも期待できないのにここまで自分に手厚い看護をしてくれるというのも可笑しい話だ。


何か手がかりは無いか、とアルフレッドは鈍った頭で必死にアリアとの記憶を思い出していると、
フッと「君の闘い方は命を削る」と目が覚めた後に言われた言葉が頭に過ぎった。
アリアが言うには今の自分は本来なら有る筈のリミッター?(力を制御するものらしい)とやらが全く機能していないらしい。
自分の意思一つでその切り替えが出来るようになってはいるらしいが、そのやり方自体を忘れた今となっては闘った後もリミッターは無くなったまま。


「っと、思考が逸れたか……」


一度あがってきた息を整えるために衰えた体を戻す為に素振りをしていた腕を止めてハルバードを草原に突き立てる。
それを見て、
―――軽い……
と思った。今の自分には体のリミッターが無いと言われたが、これでは本当に訓練になっているのかどうかもわからない。

どこが自分の限界か全くわからないのだ。重いと言われたモノを持っても重いと感じれない。
彼女の振るうツヴァイハンダーですら軽いと思えてしまった。
試しに手を『軽く』握り締めてみればそれだけで爪が皮膚を破り血が滴り落ちていく。体の制御がまるで利いていない。
常に暴走状態、それが今の自分の体だった。


「あぁ、ダメだダメだ。わからない事が有りすぎてどうにもならん」


何で自分には記憶も無ければリミッターとやらも無いのだろうか、とやりきれない思いに頭を掻き毟る。所々赤く染まった白髪がハラハラと地面に落ちていく。
大体自分の頭はそれほど良くは無いのだ! と色々とやり場のない怒りまで沸いてきていた。


「がぁーーー!! ダメだダメだ! 今日はもう終わり! アリア!! ……じゃなかった、アリア様! 扉を開いて下さい!」


アルフレッドがそう声を荒げて数秒後、目の前の空間がグニャリと歪んで穴が開いた。
その先には若干不機嫌そうなアリアが椅子に座って紙に何かを一心に書きとめている。


「ただ今帰りました~っと」

「あー、お帰り。食料は君の部屋に適当に置いといたから勝手に食べておいてくれ」


アルフレッドが穴を潜り抜けるとすぐに穴が閉じていく。余り外とここを繋げたくはないらしい。
理由は教えてくれなかったが、「面倒くさいことになる」とだけ言っていた。


「何、書いてるんですか?」

「これからの行動予定表みたいなもの……か? ……流石に内容は教えたげないよ?」


そう言って紙を体で隠してガルル、と威嚇してくるアリアに「別に聞きませんよ」とアルフレッドは笑って部屋から出ていった。







自分にあてがわれた部屋に戻ると机の上には簡単な料……いや、食材がそのまま置かれていた。
泥の付いたままのジャガイモ数個にレタスが一玉、処理済の兎らしき肉塊が一羽、拳大の塩の塊が一個
それにバスケット一杯に入れられたコンガリした良い匂いを漂わせるパン。


「…………料理でも作れと? 記憶の無いオレに?」


バスケットを持ち上げると何かが書かれた紙がヒラリと床に落ちていった。


「え~と、何々……」


アルフレッドは落ちた紙を拾い上げて書かれた文字を読みあげていく。


『あー、病み上がりスマンがお供え物から適当に食材を見繕っておいたから……適当に何か作って食べておいてくれ。
私は作らん、と言うより作れん。適当に焼いたら喰えると思うから、後は任せた! 私は大丈夫だから放っておけ。
後、もう知っているとは思うが……この家にキッチンは無い!
森の小川近くに穴は開けといてやる。ちょっと歪んで見える所に君のそのハルバードを差し込めば開く筈だ。幸運を祈る。
                        アリアより』


「…………ふむ」


一通り読み終えた後アルフレッドはフゥ、と一息吐いてバスケットに山積みにされたパンを一つ手に取り齧った。


「あ、凄い。焼きたてでも無いのに柔らかくて美味しい……」


気を落ち着かせる為にツマミ食いしたパンの美味しさに今思っていたことを忘れて黙々と齧っていく。


「あぁ、いやいや違う違う! いやパンは美味しいけどそうじゃなくて!」


そうは言えども手は止まらずにパンを口に運んでいる。体は口よりも断然正直者だった。


「む~……ひゃて、これをほうするは……」


アルフレッドはパンで口のなかを一杯にしながら食材を前にして考える。
火の付け方は分かる火打石も有るから大丈夫だ。兎の捌き方も何でか分かる、ちゃんと解体用ナイフも持ってる。
味付けも塩があるならある程度は大丈夫と言えるだろう。
しかし……、と思考を途中で切ってアルフレッドは泥の付いたジャガイモをシゲシゲと見つめた。
所々に緑色の芽が出てるのが「これでもちゃんと生きているんだなぁ」と感じさせる


「なぜかわからんが、コレからは嫌な気配がする……」


自分の感覚がどうしてかコレは危険だ! と信号を出している。
食べ物如きに何を、とも思うことも無いが……アルフレッドは事この感覚を重要視していた。
記憶が無い自分の知識は信用できない、だが体と感覚は全く記憶を失っていないのだ。
その記憶の有用性はアリア戦の時に身に染みて実感している。


「…………喰わないでおくか、泥付いてるし」


悩んだ末、アルフレッドは自分の直感を信用した。アリアが全力で振ってきたツヴァイハンダー並みの悪寒を感じるのだ。
これが示すものは、自分の直感はこのジャガイモ共に命の危険を感じているという事だ。
こんな小さな物相手に命の危険を感じることに情けなさを感じたが、何分自分の腹に入れる物である。故に、アルフレッドは逃げた。


「レタスは~、適当に洗ってちぎれば~」


いつの間にか空っぽになっていたバスケットにジャガイモ以外の食材を詰め込んでいく。気分はちょっとしたピクニックだ。


「さ~て、どんな所に出るのかな~っと!」


アルフレッドは鼻歌混じりにそう言って、真っ直ぐな柱が僅かに歪んで見える場所にハルバードを投げつける。
まっすぐ飛んでいったハルバードは突き刺さることなくその歪みに呑みこまれるように消えていった。


「おぉ……これは……」


そのしばらく後に開いた穴を潜り抜けたアルフレッドを待っていたのは木、木、木、そうまさしくそれは森だった。
足元を見れば投げられたハルバードが岩に深く突き刺さっていた。どうやらまた手加減を間違えたらしい。


「ん? 抜けない?」


どうやらフルーク(鉤爪)かアックスブレードの部分が中で引っかかっているらしく軽く引っ張っただけではびくともしない。
それを見てアルフレッドは軽くタメ息を吐くと、静かに呼吸を整えて柄を確りと両手で掴んで意識を集中させて完全に力の乗る瞬間を待つ。


「フッ!!」


時が来たことを直感で悟ったアルフレッドは岩に突き刺さったハルバードに本気で力を込め一気に奥へと突きいれる。
ピキリビキリ、と大きな音を立てて岩に皹が広がってゆき、終には岩を砕き貫いた感触が伝わってくる。


「しかし……頑丈の域を超えてるだろ、コレ」


砕けて引っかかりの無くなった岩の残骸から引き抜いたハルバードを見て、アルフレッドは感嘆の息とともにそう漏らした。
岩を突き砕いたというのに刃毀れは一切していない。アリアのツヴァイハンダーと叩き合わせた時も、だ。
逆にあちらが刃毀れしたらしくブーブーと愚痴を漏らしていたのが印象的だった。どうもアレは特別製の自慢の一品だったらしい。


「さっさと兎焼いて~♪ レタスちぎって~♪」


壊れないことは良いことだ。と、頭の中で結論付けてサックリと意識を切り替える。
水の音が聞こえるということは、ここからは見えないが手紙に書いてあった通り小川も近くにあるのだろう。
そこまで確認してあるフレッドは満面の笑みを浮かべてコクコクと首を上下に振ると、早速火の準備をし始めた。


数分後、不恰好ながらもちゃんとした焚き火を完成させたアルフレッドは、
肉塊をハルバードの上にそのまま置いて穂先を鉄板代わりにして焼き始めた。
肉の焼ける良い匂いが辺りに広がって食欲をそそらせ腹を唸らせる。


「ふん、ふんふーん♪」


適度に塩を振りかけて肉に火が通るのを、小川で洗った生のレタスを齧りながらジックリと待つ。
片面が焼けてもう片方の面を焼き始めた時にガサリと目の前の茂みが揺れたのを見てアルフレッドはハッとそこに目をやった。


「……………」

「……………」


そこに居たのは白いワンコだった。大きさは手で抱けるほどに小さい。クリッとした丸く紅い瞳は焼かれている兎を捉えて期待で輝やいている。
恐らく匂いに釣られてここまで走ってきたのだろう、それが分かるほど子犬の息はあがっていた。


「…………食べる?」


物は試しと話しかけたのに反応して、白い犬がブンブンと残像でも見えそうなほど早く首を縦に振って近寄ってくる。
少し不気味だったが、どうやら言葉の意味は通じているらしい事はわかった。しかし、その事に何か途方も無い違和感を感じる。
結局アルフレッドにはその違和感の正体が分からなかった。その事に落胆の息を吐いて隣に座って焼ける肉をジッと見つめて(狙って?)いる子犬を撫でようと手を伸ばす。


「ウォウ!!」

「アッ痛!?」


…………噛まれた。









あとがき

立て!立つんだ我が中二魂! まだへばるには早いぞ!


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