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大企業に義務付けられる社外取締役は役に立つのか

週刊文春 12月8日(木)12時11分配信

 オリンパスや大王製紙など、経営者の相次ぐ不祥事には呆れるばかり。政府も経営の透明性向上や企業統治の強化のため、大企業に社外取締役の起用を義務付ける方向で、会社法改正の検討に入った。現在の会社法では、経営方針を決める取締役に社外起用の義務はない。ただし、例えば業務の執行は執行役、経営の意思決定や執行役の監督などは取締役会と機能が分離している会社(委員会設置会社)などは、社外取締役の起用が義務付けられている。

「オリンパス、大王製紙それぞれに社外取締役がいたのに不祥事は起きた。経営監視が機能していないばかりか、利害関係を疑われる社外取締役もいて、その存在意義も問われました」(経済部記者)

 一体どんな人たちが「社外取締役」に就いているのか。

 東京証券取引所の上場企業数は約二千二百八十社で、このうち社外取締役を起用している企業は千百六十四社。社外取締役の属性を見ると「他会社出身」が圧倒的に多く、九百九十五社だ。続いて「弁護士」が百五十七社、「学者」が百三十八社、「その他」七十一社と続く。

「他会社出身」は大手企業の元トップ、現役経営者や会長が多い。例えば、茂木友三郎キッコーマン名誉会長は、カルビー、HOYA、明治安田生命など三社の社外取締役だ。「学者」では、早稲田大学大学院の川本裕子教授は、伊藤忠商事、マネックスグループなど四社の社外取締役だ。

 異色なところで、ノーベル化学賞受賞の野依良治氏は、高砂香料の社外取締役。ノーベル経済学賞のコロンビア大学のロバート・マンデル教授が〇五年から一年間、オリンパスで社外取締役を務めた。

「『その他』に分類されるなかには、霞が関の事務次官経験者など官僚出身者が数多いですね」(同前)

 経営の暴走は“カネ”がらみが多い。

「社外取締役に求められるのは独立性と専門知識。日本企業の場合、ファイナンス関係が弱い。企業経営、コンプライアンスの専門家にファイナンスの専門家を加え、バランスのとれた役員会を構成すべき」(神戸大学大学院・砂川(いさがわ)伸幸教授)

 世界にさらした日本企業の“恥部”は一掃できるのか。 (山下知志)

(週刊文春2011年12月15日号「THIS WEEK 企業」より)

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最終更新:12月8日(木)12時11分

週刊文春

 

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