欧州債務危機の封じ込めに向けた財政・金融政策の協議が今週、山場を迎える。独仏首脳は5日、8~9日の欧州連合(EU)首脳会議に向け、ユーロ圏各国の財政規律の強化策などを盛り込んだ条約改正を提案する意向を表明したが、市場は即効性を疑問視。抜本的な解決につながるかは不透明だ。危機回避に向け、欧州中央銀行(ECB)や国際通貨基金(IMF)の関与を強化するしかないとの声が増している。【大久保渉】
EUは10月下旬に、欧州危機への包括的な対応策を発表した。しかし、財政悪化国の資金繰り支援などの役割を担う欧州金融安定化基金(EFSF)の規模を1兆ユーロ(約105兆円)に拡大する計画が現段階では具体化していない。対応策の柱の一つが難航していることで、シナリオの見直しを迫られている。
各国が照準を合わせているのがEU首脳会議。会議に向け、独仏首脳は5日、財政規律を守れない国に対する罰則規定や予算の相互監視などを盛り込んだEU基本条約の改正案を共同提案することを表明。各国の予算編成に介入する厳しい対応で、ユーロ圏の財政問題の解決を目指す。
ただし、罰則や監視強化が欧州危機の抜本的な解決策になるとの見方は少ない。クレディ・スイス証券の白川浩道チーフ・エコノミストは「罰則で財政不安国の財政を切り詰めさせても、ギリシャと同じように景気低迷→税収減→財政悪化の負のスパイラルに陥るだけ」と指摘、政策の実効性を疑問視する。
欧州危機への対応を巡っては、ユーロ導入国が共同で国債を発行するユーロ共同債案も一時浮上。ドイツなどの信用力を背景に、イタリアやスペインなどの財政悪化国が低利で国債発行できるメリットがあり、市場の期待を集めた。しかし、財政規律を重んじるドイツのメルケル首相が「危機克服の手段にはならない」と反対。5日の独仏首脳会談では、フランスのサルコジ大統領も同調した。
こうした中、市場はECBによる財政悪化国の国債買い支えの強化に期待を寄せる。これまでインフレを招くとして反対姿勢だったECBだが、ドラギ総裁が先週、欧州の財政統合の推進を前提に買い支え強化を示唆。8日のECB理事会では政策金利の0・25%引き下げが有力視されているが、「来年1~3月にも、ECBは買い支えに踏み切らざるを得ないのでは」(野村証券の木内登英チーフエコノミスト)との期待が高まっている。
欧州支援のためIMFの融資枠を2000億~3000億ドル(約16兆~23兆円)規模で拡大する案も浮上。米財務省のガイトナー長官がEU首脳会議前にイタリアなどを訪れ、支援のあり方について協議する模様だ。
毎日新聞 2011年12月6日 東京朝刊
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