【ロンドン】欧州連合(EU)首脳会議は27日、ソブリン債ショックへの対応力強化を図るために、域内銀行に対して1064億ユーロ(約10兆6000億円)規模の資本増強を求めることで合意に至ったが、大手銀行数行はこの日、そのために投資家から資金を調達することはないとの考えを改めて表明した。
アナリストらは首脳会談で合意された欧州銀行の資本増強について、ほぼ市場の予想通りの内容であり、欧州の金融面の健全性を回復する包括的な取り組みの一環とみている。一方、合意で求められている自己資本を達成しようとした場合、スペインとフランス、イタリアの3カ国の銀行だけでも不足額は約500億ユーロに達する。
しかし、これらの国の大手銀数行はこの日、株主に増資を求める必要はないと主張。アナリストらも多くの銀行では内部保留や資産圧縮によって資本増強が可能との見方を示した。
欧州の銀行株はこの日、軒並み急騰し、Stoxx欧州600指数の銀行株指数は8.9%高で取引を終わった。フランスの主要銀行の株価が一時20%程度の大幅高となったほか、ドイツのドイツ銀行とコメルツ銀行の株価が12~14%上昇した一方で、イタリアの銀行株も8%程度の上昇を示した。さらにスペインの大手銀行株も5%前後上昇した。
野村証券のアナリストは「各行は目標達成までボーナスと配当の抑制を迫られる一方で、フランスやドイツの銀行での資本不足額(それぞれ90億ユーロ、50億ユーロ)から示唆されるのは、主要銀行にとって内部的に目標達成するのはそれほど困難ではないということだ」と指摘した。
欧州銀行監督機構(EBA)によると、保有するギリシャなどのソブリン債の時価減少を織り込んだ上で自己資本率を目標まで高めようとした場合、EU加盟27カ国の約70行は資本増強の必要性が生じ、その総額は約1064億ユーロに上るという。最終的な資本不足額の試算は来月に公表される予定であり、各行は年末までに増資計画を自国の規制当局に提出することになっている。
資本不足が最も深刻なのはスペインの銀行などで、同国大手のBBVAはこの日、EBAの評価によると資本不足が70億9000万ユーロに達すると発表した。また、フランス銀行(中央銀行)は26日、ソシエテ・ジェネラルとBNPパリバの資本不足がそれぞれ33億ユーロ、21億ユーロになることを明らかにした。
一方、スペインのBBVAのライバル銀行、サンタンデール銀行は27日、増資をする必要はなく、配当方針を変更する予定もないと述べ、保有国債の時価評価をした場合、バランスシート上の影響を15億ユーロとした。BNPパリバも増資をしない意向であると表明した。
欧州銀は独自に資本増強を達成できない場合、自国政府や、さらには欧州金融安定基金(EFSF)からの支援を求めることになる。