正規雇用者と非正規雇用者の推移を労働力調査に基づいてグラフにした(非農林業雇用者が対象)。図録3250では同じデータによって男女別年齢別の非正規雇用者比率の推移を見ているが、ここでは、実数の推移を追った。

 非正規雇用者はパート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託などからなる。労働力調査は事業所ではなく世帯が対象の調査であり、ここでの集計は職場での呼称にもとづく回答者の選択によっている。なお、ニュース等で公表される非正規雇用者の数は農林業を含んだデータであり、ここでの人数より多い(例えば2009年1〜3月期は非正規雇用者1,699万人と22万人多い)。ここでは時系列のなるべく長い接続のため、非農林業を対象としている。

 正規雇用者は1997年までは増加していたが、それ以降、2006年まで減少し、07年以降ほぼ横ばいとなっている(図録3150参照)。これに対して非正規雇用者は2009年までは一貫して増加した。

 この結果、非正規雇用者比率は1990年の20.0%から2011年の35.4%へと大きく上昇した。いまや3人に1人以上は非正規雇用者となっている。

 2009年(1〜3月期)の特徴は、正規雇用者は前年の採用状況が良かったためやや増加しているのに対して、非正規雇用者がはじめて42万人の減少に転じた点であり、このため非正規雇用者比率は33.3%へと低下した。2008年後半からの世界的な経済危機の中で行われた派遣切りなどの影響が端的に出ているといえる。この20年間続いてきた傾向から大きく逸脱する事態となったため派遣やパートの雇用者もパニックに陥り、非正規雇用者の問題が社会問題として大きくクローズアップされるに至ったことは改めて指摘するまでもない。

 2010年(1〜3月期)には女性パート中心に再度非正規雇用者が増加して、非正規比率も33.6%とふたたび増加している。2011年(1〜3月期)は男のアルバイト、契約社員が増え非正規比率は35.4%で過去最高となっている。

 男女別の非正規雇用者の各区分別の人数を掲げると以下の通りである。非正規雇用の多くは女性パートであることが分かる。



 2008年から2011年にかけての各区分の雇用者数の増減は以下の通りである。2008年に59万人だった男性派遣社員が2009年に38万人へと21万人も減少した点(減少率36%))にショックの大きさをうかがうことができる。2010年にも今度は女性派遣社員を中心に派遣が減少している。その一方で女性パートが増加しているので2010年の非正規雇用者数は増加している。2011年は男性のアルバイトや契約社員・嘱託が増加している。

非正規雇用者対前年比較(1〜3月期、万人)
  (実数)  2008年  2009年  2010年  2011年
パート・アルバイト 243 889 241 877 243 895 267 907
 パート 82 730 80 708 78 732 84 739
 アルバイト 162 158 161 169 165 163 183 168
派遣社員 59 85 38 78 33 65 39 54
契約社員・嘱託 169 139 166 150 171 151 184 155
その他 66 69 60 67 64 68 52 59
(対前年同期増減)  
パート・アルバイト -2 -12 2 18 24 12
 パート -2 -22 -2 24 6 7
 アルバイト -1 11 4 -6 18 5
派遣社員 -21 -7 -5 -13 6 -11
契約社員・嘱託 -3 11 5 1 13 4
その他 -6 -2 4 1 -12 -9
(注)(資料)同上

 なお、非正規雇用の拡大は世界的な傾向である。以下にEUにおける状況を掲げる。「先進工業国で支配的だったフォーマルな経済は、かつては、進歩的な労働市場政策、強い労働組合の影響力、そして永続的であることが普通のフルタイム雇用によって特徴づけられる傾向があった。こうした状況は大きく変わってしまった。」(図のWHO報告書)



(2008年4月16日収録、2008年5月30日更新、9月1日EU非正規雇用図追加、2009年5月20日更新、2010年5月18日更新、10月22日読者からの指摘によりグラフ凡例の正規、非正規が逆だったのを修正、2011年5月18日更新)

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