東北のニュース

コメ、消えぬ不足感 新米出ても値崩れせず

仙台農協のコメ集荷量は目標の85%にとどまっている。岩切低温倉庫に保管されているコメも例年より10%ほど少ない=仙台市宮城野区

 2011年産米の高値取引が続いている。7日確定値が出た全国の作況指数は「101」(平年並み)と供給量は十分。新米が出回れば、福島第1原発事故の影響で起きた価格高騰も落ち着くとみられたが、予想に反し値崩れはしていない。値上がり期待の農家が出荷を模様眺めしているとの観測や、作況指数が実態から懸け離れているという見方など諸説あるが、東日本大震災後の混乱もあってコメの流通実態は不透明。順調な価格推移をバックに、東北各県をはじめ全国で概算金の引き上げが相次いでいる。(編集委員・長谷川武裕)

<前年同期より高く>
 「データを見る限りコメは今も過剰。それなのに卸業者間の取引価格が下がらない」。こう話すのは米穀データバンク(東京)の高橋芳郎社長。
 国が見込んだ11年産米の需要量は805万トン、生産数量目標は795万トンだった。これに対し、全国の作況指数からはじき出される生産量は813万トン。生産数量目標より18万トンも多い。
 となれば、価格は下落するはずだが、全農が設定している宮城産ひとめぼれの相対取引基準価格は現在、60キロ1万4500円(前年同期比2500円高)。業者間の市中相場も1万4000円台を保ち、前年同期より3000円以上も高い。
 高橋社長は「下がらないのはどこかでコメが滞っているからではないか」と見る。全農山形県本部の担当者も「一体、コメはどこにあるのか実態を知りたい」と漏らす。

<縁故米や備蓄増か>
 滞留先の一つとして考えられているのは農家の倉庫。需給逼迫(ひっぱく)感から、新米の出荷段階で集荷業者が高値で買いあさったため、一層の値上がりを期待する多くの農家が「何も売り急ぐ必要はない」と考えているという見方だ。
 実際、「全農系統も民間の卸業者もコメが例年より集まっていない」と、業界関係者は明かす。
 原発事故による放射性セシウム検査の関係で、主産地である福島のコメの出荷遅れを指摘する声があるほか、「震災以降、被災者を中心に親類縁者の絆が強くなり、流通ルートに乗らない縁故米が増えている」「震災後の家庭のコメ備蓄増が尾を引き、不足感が続いている」などの推測も出ている。
 一方で、11年産米の収穫量自体に疑問を投げ掛ける声は少なくない。

<「小粒多い」評価も>
 全農宮城県本部の渋谷潤太郎副本部長は「全国的に天候不順で、台風などの災害も多く、日本海側も作柄が良くなかった。農家の話を聞いていると、作況指数ほど収穫できていないのかもしれない」と言う。実態は過剰ではなく、需給動向を反映した価格が形成されているという見方だ。
 銘柄米として販売されるコメは粒が一定の大きさ(全農宮城の場合は1.9ミリ)以上必要だが、11年産は粒の小さなコメが多いという声もある。
 東北の全農系統では「概算金を実勢価格に少しでも近づけたい」(全農岩手県本部)として、原発事故の影響で販売に苦しむ福島を除く5県が、今秋決めた概算金(主力銘柄で1万〜1万2000円)を追加払いの形で1000〜1800円引き上げる。
 仮に農家の倉庫に滞留しているとして、概算金アップでコメが市場に出回ってくるのか。実相が見えるまでにはもう少し時間が掛かりそうだ。


2011年12月08日木曜日


関連記事

powered by weblio


Ads by Google

△先頭に戻る

新着情報
»一覧
特集
»一覧
  • 47NEWS