中部電力と四国電力は29日、原子力関連の国主催シンポジウムで、経済産業省原子力安全・保安院から、推進側の参加者動員や発言を指示されていたことを明らかにした。九州電力に端を発した原発のやらせ問題は、原発を規制する立場の保安院まで関与していたことが発覚。原子力を取り巻く不透明な癒着の構図が浮き彫りになってきた。
経産省は九電の「やらせメール」の問題を受け、過去5年、計35回の国主催の原子力関連シンポジウムについて、電力7社に調査を指示。29日に各社が報告した。海江田万里経産相は、記者会見で「極めて深刻な事態。徹底解明したい」と述べ、第三者委員会による調査を指示した。8月末までに結果を出す方針だ。
保安院がやらせを指示したのは、2006年6月に四電伊方原発のある愛媛県伊方町、07年8月に中部電浜岡原発のある静岡県御前崎市であったシンポジウム。使用済み核燃料をリサイクルして使う「プルサーマル発電」の是非をめぐる重要な説明会だった。
四電によると、保安院から「多くの参加者を募り、質問や意見が多く出るように」と要請され、四電や関連会社の社員ら計364人に参加を依頼。地元住民ら29人には、例文を示しながら発言を頼んだ。
四電は来場者の半数程度の約300人を動員。住民らが「プルサーマルを導入してもガスの発生などウランと変わらないと聞いてちょっと安心した」など、例文に沿って発言をした。
四電は「誤解を招く行為で申し訳ない。質問の内容は強制しておらず、やらせ行為にはあたらないと思う」(広報担当)と話す。
中部電は、保安院の指示で社員や下請け業者、町内会長などにも参加を求めた。住民向けに「自然エネルギーは原発に比べてコストが高いのでは」といった質問例もつくったが、最終的には住民に頼まなかった。社内の議論で「法令順守の面で問題」と判断した。シンポでの発言は、すべて原発やプルサーマルに慎重な意見だったという。
中部電の水野明久社長は、記者会見で「深く反省している。今後は公正さに疑いが持たれることがないよう責任を持って指導していく」と強調した。
九州電力は、報告には盛り込んでいないが、資源エネルギー庁職員から「なるべく空席がない方がいいよね」と依頼され、シンポの動員をかけた。10年5月に鹿児島県であった原発増設の公開ヒアリングでは、陳述人20人のうち15人が同社の要請で意見を述べていた。