格が違った。リングにマシアスの尻型がつくほど、完膚なきまでに打ちのめした。メーンを譲った大毅が判定で敗れたが、長男の威厳を示した興毅。愛する地元大阪で、余裕のV3達成だ。
「大阪というだけで気持ちが入った。今年一番のできだった。ボディーも効いているのがわかったし、いいタイミングでダウンがとれた」
直前の試合で三男・和毅(20)が快勝。バトンを受け、ほぼ満員の6300観衆の大声援にも後押しされた。1回からボディーを中心に狙い、終了間際にカウンターの左フックで顔面をとらえ、最初のダウンを奪う。手は緩めない。3回にはまた左フックで2度目のダウン。フィニッシュは4回2分4秒。左、左、右、左のボディー4連発で決着をつけた。
昨年12月に日本人初の3階級制覇を達成したムニョス戦を含め、バンタム級では4試合目。「バンタム級になって一番、パンチに力が乗ってた。毎試合ダウンは奪ってたし、パワーが戻ってきている」。かつては“やんちゃ”と言われた男が、最近は富士山の絵を描くことを趣味にするなど、精神面でも成長。試合後は会心の笑顔が咲いた。
次戦に関しては「来年3月か4月。指名試合になるかな」。同級暫定王者のウーゴ・ルイス(23)=メキシコ=とのマッチメークが濃厚だが、さらに先も見据えている。「まだバンタムでやっていくよ」。長期防衛も視野に入れている。
ただ、リング上で見せた表情も、最後は曇りがちとなってしまった。メーンで大毅が敗れ、日本初の兄弟複数階級制覇の夢はついえた。自身の会見を後回しにして、セコンドで次男を鼓舞した興毅は「勝負やから負けるときもある。大毅は気持ちが入っていたし、打たれ強かった。名前の通り『弁慶』って思ったよ」。前へ突き進む弟の精神面をあえて評価した。
最後は亀田プロモーションの社長として、興行を総括。「これだけの人が集まってくれたから大成功かな…。いや、いい試合したけど、大毅が負けてしまったから成功ぐらいか」。偉業の達成は持ち越しとなった。ただ、転んでも起き上がるのが『亀田』たる由縁。まだ“祭り”は続いていく。 (栃山直樹)
(紙面から)