完敗だった。試合終了のゴングが鳴ると、大毅は無理に両手を広げ、セコンドについた興毅、和毅らと抱き合った。判定結果が読み上げられ、歓喜に沸くテーパリット陣営を横目に見ながら、コーナーポストに力なく寄りかかった。
「見てのとおり。実力じゃないかな。相手はいい選手だったと思う。やっぱりチャンピオン。男らしく負けを認める」
身長が9センチ低いものの、リーチが4センチ長い王者テーパリットに翻弄された。左右のフックを顔面に食らい、2回で早くも出血。顔を真っ赤に染めながら前へ出るが、右カウンターは空を切った。会見場にはサングラスをかけ、痛々しい姿で現れた。
見違えるボクシングをみせるはずだった。1月に減量苦から、2度防衛したWBA世界フライ級王座を返上し、Sフライ級へ転級した。氷やレモン汁をなめる以外、1週間ほぼ何も食べず、約10キロの減量を強いられたフライ級(リミット50・8キロ)に比べ、Sフライ級(同52・1キロ)では絶食は4日間だけ。体への負担が大きく減っていた。
兄弟での複数階級制覇に加え、休養王者扱いの清水との王座統一戦も立ち消えた。今後について明言は避けたが、Sフライで1年は闘う覚悟を持っている。興毅からも「まだ若い。きょうのことは反省して、次につなげていけばいい」と再起に期待を寄せられた。
「スタッフ、あと、家族には申し訳ない気持ちがある」。地元の大阪で3兄弟初のそろい踏み。ともにKO勝利を飾った兄弟の話題になると、思わず口ごもった。フライ級は3度目の挑戦で世界王座を手に入れた。持ち前の打たれ強さで再起を図る。 (江坂勇始)
(紙面から)