「見た通り。やっぱりまあ、実力じゃないかな」。腫れ上がった目元をサングラスで隠した亀田大は潔く完敗を認めた。
好戦的な王者に真正面から向き合った。足を使った昨年9月の初防衛戦とは違い、頭をこすりつけて接近戦を挑んだ。「相手もその気やったし、根性出していこうと。1年前の俺やったら(距離を取った)ボクシングしてたと思うけどな」。打たれても打たれても前に出る姿勢に観衆は沸き立った。
得意の左フックをはらわたに入れ、右ストレートであごをとらえもした。だが「まだまだ未完成。パワーだけでいってたしな」と兄の興毅が指摘したように、いかんせん単発止まり。体勢を崩しながらも矢継ぎ早に連打を繰り出し、挑戦者の無防備な顔面に左ジャブを止めどなく打ち続けた王者とは、攻撃のバリエーションにおいて明らかな差があった。
昨年12月にフライ級で2度目の防衛に成功した後、王座を返上して現階級に。最長で1週間も絶食する約12キロもの減量苦から解放された。「調子はめっちゃいい」という状態での完敗に「まとまったいい選手やった。やっぱりチャンピオンやな」と受け止めるしかない。
前座を務めた末弟の和毅、長兄の興毅が派手なKO勝ちを飾り、おぜん立てが整ったメーンイベント。日本初となる兄弟での複数階級制覇を果たせず、「家族やスタッフに申し訳ない」。22歳はそう言ってうなだれた。(産経新聞)