政府のコスト等検証委員会が6日、原発の事故コストを1キロワット時当たり少なくとも0・5円と試算し公表したことで、立地対策費なども含めれば、最安とされてきた原発コストが火力発電並みに高まる見通しとなった。一方、火力は燃料費の上昇が見込まれる上、温室効果ガスの排出が増える。再生可能エネルギーはなお割高で安定供給の中軸に育つ保証はない。政府はコストや安定供給、環境問題などのバランスを取った電源構成の確立を求められる。
検証委は10月からコストの見直しに着手。次回13日の会合で、将来の燃料費変動なども見越し、現時点から30年にかけてのコストを示す方針だ。
焦点の原発では、事故コストのほか、電源立地交付金など公費でまかなう立地対策費が同1円超に上り、建設費や追加の安全対策などもコストを底上げする。福島第1原発事故の対策費が想定より膨らめば、コストはさらに上積みされる。現行5~6円とされる原発の発電コストは「10円前後に上昇しそうだ」(政府関係者)。
一方で検証委は、新興国のエネルギー消費拡大などで石油や石炭の価格上昇も見込む。コストには温室効果ガス排出削減費も盛り込む方向で、石炭、液化天然ガス(LNG)火力は10円前後に上昇、石油火力は現行の14~17円から倍近くに高騰する可能性がある。
太陽光(現行37~46円)や風力(同11~26円)などの再生可能エネルギーは、技術開発や量産効果で低下するが、それでも原子力や火力より割高だ。出力が不安定なため、普及には次世代の送配電システムや蓄電池の開発も必要になる。
政府はコスト検証を年末までに終え、来夏を目指してエネルギー政策の見直し作業を加速させる。【宮島寛】
毎日新聞 2011年12月7日 東京朝刊
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