大学受験のシーズンまで1カ月を切った。長引く不況で有名大を卒業しても就職できないという異常事態が続いている。企業の人事担当者が採用したくなる学生はどんな大学に通い、どのような環境で学んでいるのか。専門家に調べてもらうと、偏差値の高い順当なところから意外な新設校まで浮上した。実学に秀でる大学ベスト20を一挙公開する。
日本の4年生大学は何校あるか。実は778校(2010年度現在)もある。そのすべてを訪問し、教育内容や施設、学生の評判などを詳細に調査した人物がいる。大学研究家の山内太地氏(33)だ。
同氏は東洋大社会学部在籍中の1996年に大学巡りを始め、2000年に『真実の大学案内』(東京図書出版会)を出版した。
「私の大学は偏差値ランクのど真ん中なので、(偏差値の)高い大学から低い大学まで客観的に見渡せる」と思ったのがきっかけだったそうで現在、大学巡りのかたわら、執筆・講演活動を行っている。
この大学分析のカリスマに偏差値を抜きにした「実力が身に付く」大学を選んでもらい、順位付けしてもらったのが別表だ。
トップになったのは大阪大。「1年次から学部の壁を取っ払い、さまざまな分野の200にわたる講座を用意し、少人数制で専門教育を実施している」(山内氏)。医学部、文学部にかかわらず学生が議論して結果を発表する。学問の面白さに目覚める仕組みが自然と整っているという。
「学生からも『質の高い本当の勉強のやり方が身に付いた』という声が非常に多い。東大や京大を上回る日本一の大学です」(同)
2位は一橋大商学部で、1年次からゼミを実施し、2年で教材を英語などで書かれた原書で講読させる。そのハードさは大学界でも有名だ。
山内氏は「学生にシラバス(講義要旨)だけを渡して、半ば放任する従来型の大学に対するアンチテーゼ。いますぐにでも社会で通用するほど学生が鍛え上げられている」と評価した。
選ばれた大学は伝統校ばかりではない。2000年に大分県大分市に設立された立命館アジア太平洋大(8位)は学生の半数が留学生で、授業の半数も英語で通す。
同大では「学内は公用語の日本語と英語を中心にさまざまな言語が飛び交い、グローバルな人材を育成する環境が整っている」(学長室広報担当)と胸を張る。2人1部屋の学生寮は多国籍で、日常生活で国際感覚が身につけられるのもメリットだ。
民間出身の教員が多い流通科学大(9位)は、ダイエーグループ創始者の故中内功氏が設立。ビジネススキルの養成で評価が高く、実際、昨年度の経済産業省主催「社会人基礎力グランプリ」(参加53大学)で、同大の学生チームが頂点に輝いた。
「学生たちは在学中にマーケティング、商品企画、プレゼンのノウハウを身につけます。英語圏の学生とスカイプ(インターネットテレビ電話サービス)で自由に会話できるシステムも特筆に値する」(山内氏)
大都市圏での就職説明会の際、会場近くに臨時就職課を設置するなど学生のフォローも手厚い。 同大の篠木隆也・広報課長は「約180人の教職員の多くが民間企業出身で、1学年約900人の学生を分担して担当。各人のネットワークで、学生一人一人に合った就職指導を行っています」。昨年度の就職内定率は91・3%(全国平均77・4%)だったのはその成果とみられる。
意外なところでは10位のデジタルハリウッド大。映像、ウェブ、ゲームなどのクリエイターの育成に特化し、キャンパスもポップカルチャーの中心地、東京・秋葉原にある。
山内氏は「既存の大学では納まりがきかない突き抜けた学生が多い。両親や高校の指導教諭の反対を押し切って進学した子もいる。教員陣は、ITやコンテンツ業界の第一人者ばかり」と解説。
「未来のビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズが登場するならこういう大学でしょう」(山内氏)
こんな視点で志望校、併願校を選んでみては。
■やまうち・たいじ 1978年岐阜県出身。大学研究家。東洋大社会学部社会学科卒。これまで47都道府県11カ国および3地域の865大学1152キャンパスを見学。日本国内の4年制大学778校(2010年度現在)はすべて訪問。『真実の大学案内』のほか、『下流大学に入ろう!』『こんな大学で学びたい! 日本全国773大学探訪記』など著書多数。