東京電力福島第一原子力発電所の事故後の対応について、1号機で唯一稼働できる非常用の冷却装置が、事故直後、何度も停止していたにもかかわらず、所長らは、津波に襲われてから深夜まで、動いていると誤って認識していたことが、原子力安全・保安院の調査で分かりました。誤った認識は事故対応の遅れにつながった可能性があり、詳しい解明が求められます。
原子力安全・保安院は、福島第一原発で事故対応の指揮を執っていた、当時の吉田昌郎所長ら幹部に、ことし8月、聞き取り調査を行い、その詳細を、6日、公表しました。この中で、1号機では、蒸気を利用して原子炉を冷却できる「非常用復水器」という装置が、津波に襲われたあと、弁が閉まるなどして停止したにもかかわらず、所長ら幹部がいる免震棟や東京電力本店では、津波に襲われたあとも、動いていると誤って認識していたことが新たに分かりました。この冷却装置については、午後6時すぎに、現場の中央制御室にいる運転員がいったん動かしたにもかかわらず、停止させたことが分かっていますが、所長らはこうした操作の詳細も把握していなかったということです。所長らが冷却装置が動いていない可能性に気が付いたのは、地震発生から8時間以上たった午後11時すぎに原子炉建屋の放射線量の上昇が分かってからで、安全上重要な冷却装置の稼働状況を正確に把握していなかったことは、事故対応の遅れにつながった可能性があります。原子力安全・保安院の古金谷敏之室長は、「事故の重大性を考えて、調査結果を公表した。意見聴取会などで専門家の議論に反映させ、事故の解明を進めたい」としています。