豊川市で家族ら5人を殺傷したなどとして殺人と殺人未遂、現住建造物等放火の罪に問われた岩瀬高之被告(31)の裁判員裁判の判決が7日、名古屋地裁岡崎支部(久保豊裁判長)で言い渡される。検察側が殺意と完全責任能力を主張したのに対し、弁護側は殺意を否定。責任能力も限定的だったと主張した。真っ向から対立する主張を裁判員がどう判断するかが注目されている。【山口知】
■家族が気付かなかった自閉症や障害
検察側、弁護側とも、岩瀬被告が事件当時に自閉症や知的障害があったことは争っていない。岩瀬被告は事件までの約15年間、自宅に引きこもっていた。被告人質問で事件までの人生について、「うまく話すことができず、小中学校では友だちがいなかった」「理由は分からないがインターネットでの買い物を続けた」などと話した。込み入った質問をされると、「よく分からない」と繰り返す姿がたびたび見られた。
証人として出廷した母親は「友達がいないのは知っていたが、知的障害だとは分からなかった」、弟は「どこかおかしいとは思ったが、家族での話し合いはなかった」などと証言。弁護側は「誰も被告の障害に気付かず、適切な支援がなかった」ことが事件の背景にあるとしている。
■殺意はあったか
検察官による取り調べで、岩瀬被告は「家族全員を殺そうと思った」と供述したとされる。刺した部位が背中や首などに多いことなどからも、検察側は「強い殺意があった」と主張する。
一方、岩瀬被告はこの取り調べについて「検事に『殺すつもりだったんだろう』と聞かれ、よく分からないけど『うん』と言ってしまった」と法廷で話した。弁護側は「取り調べ時の供述は実際の傷の様子と異なっており、大半の記憶はない」と指摘している。
■責任能力は?
検察、弁護側双方の鑑定人が、岩瀬被告には完全責任能力があったと証言した。それでも弁護人は、「責任能力は、最終的には裁判所が決める」との最高裁判例を示し、普段は出さないような大声を事件時に出していたことから「パニック状態だった」などと指摘。責任能力が限定的な「心神耗弱状態」だったと主張している。
これに対し、検察側は責任能力があった根拠として、証拠を消すために放火するなど目的に従って行動した▽幻覚や幻聴を伴う精神障害ではない--などを挙げている。
娘が死亡した弟夫婦は2人とも岩瀬被告に対する強い怒りを示して死刑を望んだ。一方、母親は「息子の謝罪を受け入れた。懲役2~3年を望む」と寛大な刑を求めている。
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起訴状などによると、岩瀬高之被告(31)は豊川市の自宅で10年4月17日未明、寝ていた家族を次々と包丁で刺し、父一美さん(当時58歳)とめいの金丸友美ちゃん(同1歳)を殺害。母と、友美ちゃんの両親である弟夫妻に重傷を負わせ、自宅に放火したとされる。検察側が無期懲役を求刑したのに対し、弁護側は傷害致死罪の適用を主張して懲役10年以下を求めている。放火については争っていない。
毎日新聞 2011年12月6日 地方版
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