埼玉医科大国際医療センターの研究グループが自転車乗用中の事故で受診した中学生以下172人を調べたところ、63%が頭にけがをしていたことが分かった。08年の道路交通法改正で、自転車に乗る際にヘルメットをかぶらせる努力義務が保護者に課せられた13歳未満で見ると、131人のうち62%が頭のけがで、重いけがをした19人に限ると頭のけがが74%を占めた。13歳未満でヘルメットをしていたのは1・5%の2人だけで、努力義務が浸透していない実態が鮮明になった。【馬場直子、北村和巳】
同センターの大谷義孝医師(現在は他病院に出向中)と根本学医師、森野正明医師が調査し、自転車に乗って事故に遭い05年4月~10年12月に同センターで受診した中学生以下172人を分析した。
調査によると、事故の内訳は、車との事故が48%、転倒・転落が46%。けがの部位は頭が109人で63%を占め最も多い。172人のうち重いけがをした27人で見ると、70%の19人が脳挫傷や脳出血など頭のけが。さらに13歳未満で重いけがをした19人に限ると、74%に当たる14人が頭にけがをし、うち11歳の1人は車との事故で亡くなっていた。
けがの程度にかかわらず、頭にけがをした子供の保護者からは「物覚えが悪くなった」「集中力がなくなったようだ」と報告されるケースが数例あった。
一方、172人のうちヘルメットをかぶっていたのは7歳、10歳、13歳の3人だけ。3人のけがは鎖骨骨折などで頭に重いけがをした例はなく、重いけがの27人は全員がかぶっていなかった。
また、入院が必要なほどのけがをしたのは大半が小学生以上で、親から離れて1人か友達同士で自転車に乗っていた。
研究グループによると、高さ1メートルから不意に転倒、転落して頭を打つと、頭蓋骨(ずがいこつ)骨折や脳損傷が生じる可能性がある。
小学生低学年が自転車に乗ると、頭の位置は約1メートルの高さ。米国の学会では、ヘルメットは頭のけがを6~8割減らすとの報告もあるという。
08年6月施行の改正道交法では13歳未満にヘルメットを着用させる保護者の努力義務規定が設けられ、先月に警察庁が公表した自転車交通総合対策も「幼児・児童はもちろん広くヘルメットの着用を促す」としている。
大谷医師は「脳は水に浮かんだ豆腐のようなもの。衝撃を受ければ重大な結果が残る可能性がある。ヘルメットでけがは軽減できるので、大人も含めヘルメット着用を習慣にしてほしい」と訴えている。
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毎日新聞 2011年11月5日 東京夕刊
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