文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(会長=能見善久・学習院大教授)は6日、東京電力福島第1原発事故後に政府が避難指示を出した区域以外の福島県内の被災者に対し、対象地域23市町村から避難した人(自主避難者)と自宅にとどまった人(滞在者)に一律8万円の賠償を認めるとする指針をまとめた。放射線の影響が大きいとされる子供(18歳以下)と妊婦は、年末までの精神的苦痛を考慮し、賠償額を40万円とした。来年1月以降の賠償は必要に応じてさらに検討する。
賠償対象となる対象地域の人口は、県人口の4分の3に当たる約150万人。このうち妊婦と子供は約30万人で、賠償規模は約2160億円に上る。
対象地域の選定は、放射線量のほか、原発からの距離、実際に避難した人の数などを参考に決めた。能見会長は「低放射線量でも長期間浴びるとそれなりに健康被害が生じる可能性があるという意味での不安がある地域」と説明した。一方、県南地域の白河市や、会津地域の会津若松市など26市町村は対象外となった。対象地域外からの3月15日時点の自主避難者は1164人。
8万円という賠償金額については、3月15日~4月22日に政府が屋内退避指示を出した、原発から20~30キロ圏内の住民への賠償額を、8月にまとめた中間指針で「1人10万円」としたことを踏まえた。妊婦と子供の40万円は、過去の損害賠償請求の慰謝料に関する判例を参考に「20万~50万円」の間で検討した。どの時点で妊婦だった人が対象かなど具体的な定義について文科省は「指針を基に東電が決める賠償基準の中で考慮される」としている。
「警戒区域」「計画的避難区域」などに家があり、今回決めた対象地域内に避難した妊婦や子供については、半額の20万円を目安としつつ、滞在期間に応じた金額とすることにした。
自主避難者と滞在者の賠償金額について指針は、引っ越しなど避難にかかった実費は賠償すべき損害になるとしながらも、避難しなかったことで感じた放射線被ばくへの恐怖や不安を考慮し「精神的損害と生活費の増加費用等を一括して一定額を算定する」として同額にした。実費を認めた場合、費用の計算や自主避難の開始時期を特定するのに時間がかかり、賠償の支払いが滞るのを避ける狙いもある。能見会長は会合後「恐らくもっと(費用が)かかっている方はおられ、不満があるのは当然と思うが、共通して賠償を認めても問題なさそうな金額として算定した」と説明した。【野田武】
毎日新聞 2011年12月6日 21時27分(最終更新 12月7日 3時46分)
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