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【社会】

埼玉県議連が動員 「八ッ場建設」賛成意見

八ッ場ダムをめぐる意見公募で建設賛成の意見提出を呼びかける通知

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 八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)建設の是非をめぐる国土交通省関東地方整備局のパブリックコメント(意見公募)で、建設賛成の同一文面が印刷された大量の意見文書が寄せられていたが、埼玉県議会の建設推進派が組織的に動員していたことが分かった。利根川流域の一都五県の住民の意見の大半が建設賛成とも受け取られる恐れもあり、識者は「世論誘導にもつながりかねないやらせだ」と指摘している。 

 同整備局は「なるべくダムに頼らない治水」を目指して、八ッ場ダム建設事業の検証を進めてきた。意見公募は「ダムは治水、利水面で最も有利」と結論付けた検討報告書素案に対して住民から意見を聞くために募集。

 十月六日〜十一月四日までの三十日間で延べ五千九百六十三件が寄せられた。このうち同一文面の賛成意見への署名が96%にあたる五千七百三十九件で、ほぼすべて埼玉県在住者からのものだった。

 提出された文書の用紙は、「八ッ場ダム建設事業の推進を求める埼玉県議会議員連盟」(会長・佐久間実同県議)が作成。治水や利水面で三種類の賛成意見が印刷され、五人分の署名欄がある。同議連は、会長名の通知で会員一人当たり百人分の提出を要請したほか、十月二十四日にさいたま市で開いた「建設推進埼玉大会」で来場者に用紙を配り、協力を求めた。

 本紙の取材に佐久間会長は「多くの人が建設に賛成しているということを知ってもらいたかった」と釈明。同整備局は「提出する人の自由であり、とやかくいうことではない」としている。

 意見公募はすべて名前や住所などを黒塗りにして同整備局のホームページで公開しているが、動員された用紙分の中には同一筆跡とみられるものも多い。

 意見公募に詳しい川上和久・明治学院大教授(政治心理学)は「声なき多数者から多様な意見を集める、といった本来の趣旨に反している。違法でないとはいえ、『建設推進という結論に向けて圧力をかけよう』との手法は不適切だ」と話している。

 

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