【ブリュッセル斎藤義彦】昨年6月の総選挙以来、連立協議が難航し、1年半もの間、政権が不在だったベルギーで5日、南部・フランス語圏社会党のディ・ルポ党首(60)率いる新政府の樹立が決まる。北部・オランダ語圏の独立を求める最大政党を除いた6党の連立となり、仏語圏の首相は32年ぶり。オランダ語圏と仏語圏の対立は解消されないままで、ルポ党首は不安定な政権運営を強いられる。
4日までに6党が党大会を開いて連立合意を可決した。5日に首相と閣僚人事を内定して政権樹立を決め、8日にも正式に政権を発足させる。昨年6月13日の前倒し総選挙から今月5日までの541日間にわたり、政権が不在だったことになる。地元メディアによると、選挙後の政権不在では世界最長記録。
ベルギーは、アントワープなど北部のオランダ語圏▽首都ブリュッセル▽リエージュなど南部の仏語圏--に大別される。最大政党の「新フラームス同盟」はオランダ語圏の独立を掲げているため、連立協議が難航。代わりにルポ党首が交渉役になったが、仏語とオランダ語圏の対立は根強く、ルポ党首は交渉を一時断念した。
しかし、今年10月のベルギー、仏系金融大手デクシアの破綻を受け、11月25日に米格付け会社大手がベルギー国債の長期信用格付けを引き下げるなど、ベルギー経済への不安が高まった。市場の圧力を受ける形で交渉が加速し、6党が連立に合意した。
6党は環境政党などの協力も得て、連邦政府から仏語圏、オランダ語圏の地域・地方政府に社会保障などの権限を移譲する改革を行う。しかし、オランダ語圏はさらなる独立性を求めており、言語圏対立が新政権を揺さぶることになりそうだ。
仏語を母語とする首相は、78年から79年にかけての4カ月余りの短期政権以来、32年ぶり。オランダ語圏人口は約6割と多く、議会でもオランダ語圏政党が多数派だ。仏語圏の首相に対するオランダ語圏からの反発も予想される。ベルギーの財政赤字の対国内総生産(GDP)比は欧州連合(EU)の財政安定成長協定が定める3%を上回る3・6%。6党は3%以下に引き下げるための歳出削減策で合意したが、これに反対する労働組合などが2日、5万人以上のストを決行した。新政権は市民の不満にもさらされそうだ。
毎日新聞 2011年12月5日 東京朝刊
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