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5話 他人の不幸は蜜の味






―――――――――――――――



「……ふぁ~」

眠いなー。

僕は欠伸をしながら廊下を歩いている。

手にはいくつかの書簡を持っている。

僕は今、何があったか知らないけど桃香(なんか真名を許された)のところで文官見習いをしている。

それで、今、お館さん(北郷くんですよ。あの時居たんですよー)に確認の印を貰いに部屋へ向かうところです。

「あれ?なんだか人が居ないのだけど………」

さっきから誰にも会っていない。

いや、お館さんの部屋に近づくにつれて人が居なくなって、る……?

そして、お館さんの部屋の前。

―――トントン。

ノック二回。マナーですよね。

「あ、はーい」

と中から女の子の声がした。

あれ?お館さんの部屋だよね、ここ?

ガチャと扉を開けて、出てきたのは二人のメイドの少女だった。

「あれ?アイツじゃないの?」

「どうもー。お館さんは………居ないみたいですね」

「アイツなら今、席を外してるわよ。何か用だった?」

「はい。少し確認をいただきたいものがありまして……」

「そうなの?それは残念だったわね」

うむむ、困りました。

「では少し待たせてもらいましょう」

と僕は部屋へ入っていく。

「へ?ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?」

メイドさんの片方、緑髪で眼鏡の娘が僕を止める。

「アンタ、ボクたちのこと知らないの?」

「はい?」

「はぁ。全く末端まで何も伝えてないわけ………」

なにやらぶつぶつと言っている少女。

「あのぅ………」

もう1人の大人しそうな娘が話しかけてきた。

ウッハァ!いい感じのロリータちゃんだ!!

「……ひぃ」

「ちょっとアンタ、月になにしてんのよッ!?」

僕と少女の間に割り入る少女(眼鏡)。

ん?月?う~んとどこかで聞いたことあるような…………。

「あぁー、董卓ちゃんですか。それで貴女が賈駆さんですね」

僕はポンと手を打つ。

「え!?ちょ、アンタなんで知ってんのよ!?」

「あ、僕は劉璋って言います。よろしくです」

「ちょっとボクの話聞きなさいよ!?」

「どうも。月、です」

「え?それは真名ですよね?良いのですか?」

「ちょっと無視しないでよー」

賈駆をおいて、話が進んでいく。

「はい。いいんです……………」

とこれまでの経緯を話してくれる董卓。

「ほへぇー、大変だね。うん、じゃあ、僕も柳々でいいよ、月ちゃん」

「はい……柳々さん」

うむ。やっぱりいいね。俯きながらの恥じらいはいいね。

フヒヒ。






「ふぅー。一休み、一休み」

僕は椅子に腰かける。

「………ってなんでくつろいでんのよ、アンタ!?」

「え?お館さんが戻るまで待つって言ったじゃないですか、詠さん」

「う………アンタ、知らないの?」

詠がなんだか落ち込む。

「今日、ボクの近くに居ない方がいいわよ。アンタ、不幸になりたくないでしょ?」

「へぇーそうなんだー。とりあえず僕は少し寝ようかなー」

「アンタ、信じてないわね」

「柳々さん、詠ちゃんの言ってることは本当なんです」

「え?知ってますよ?」

「「え?」」

ハハハ。それぐらい、知ってますよ。

「今朝、王累から聞きましたから」

「だったらなんで………」

「いえ。僕は頭悪いですから一つ一つこなしていかないと出来ないんですよ。だからお館さんを待ってないと」

「でも………」

「あぁ、僕なら大丈……へっくちッ」

―――ガシャーン。

僕がくしゃみで顔を下げた所に窓から槍が飛んできて僕の頭上を掠めていく。

「ありゃりゃ?これは何でしょうね?」

床に何か落ちているのを拾おうと席を立つと………。

―――ガラガラガラ。

棚から物が今まで座ってた場所に落ちてくる。

「………ね?」

僕は二人に言う。

ハーハッハッハッ。運10を舐めないでいただこうか。

奇跡の強運、とでも言おうかな。

「お兄ちゃん、大丈夫か?」

と窓から鈴々が顔を出す。

「あれ?お兄ちゃん、居ないのだ」

「お館さんなら席を外してるわみたいですよ、鈴々ちゃん」

「おぉ、柳々なのだ。こんなところで何してるのだ?」

鈴々の疑問に僕が答えると鈴々は窓から部屋へ入ろうとして………。

いや、そこからはダメだと思うけど。

「あ、詠……」

詠を見つけて思い止まる。

「え、えぇと………鈴々、用を思い出したのだ」

とそくさくと窓から離れていった。

「普通はああいう反応をするもんよ」

不貞腐れたようにそっぽを向く詠。

「へぇー。よいしょっ」

僕は再び、椅子に座り直す。

「それでお館さんはいつ頃帰ってくるかなぁ?」

「いや、アンタ、ホントに分かってんの……?」

「あはは」










「……柳々ってどんな奴なの?」

今、詠と月、そして北郷は中庭でお茶をしていた。

「え?柳々さん?どんなって……気さくな人?」

「詠ちゃんの不幸のことを聞いても驚かなったです」

「あぁ、なんとなく想像つくね、それ」

「確か、元太守なのよね?アンタもそうだけど、全然そんな風には見えなかったわよ」

「まぁ。自分でも形だけって言ってたし……あ、でもアレで舌戦は凄いんだぜ」

「はぁ?そうなの?」

そんな和やかな日常会話をしていると…………。

「うにゃぁぁぁぁぁ!?」

「待たぬか!」

柳々と愛紗が追いかけっこしていた。

「待たぬか、柳々!?」

「ちょ、愛紗さん、槍を置いてから話しましょうよーッ!?」

「お主が逃げるからではないか!」

「槍を先ず置いてよーッ!?」

ギャーギャーとお互い喚きながら走っていた。

「アレが舌戦を、ね……」

「いや、確かにしてた、よな……?」

ジト目の詠にやや汗をかく北郷。

「うにゃぁぁぁ!?……はっ!あれは!?」

柳々は走る方向を変える。向かう先は北郷たちの入る休憩所だ。








ふふふのふ。勝機、見つけたり!?

「千刀『ツルギ』!」

僕と愛紗の間に均等間隔で刀が刺さる。

「なんのつもりだ、柳々。このようなもので私を止められると思っているのか?」

「いやいや、世に名高い関雲長殿をそのようなもので止めるなど、とてもとても。それは境界ですよ」

僕は走るのを止めて、愛紗と対峙する。不敵に笑みを浮かべて。

「境界、だと?」

「えぇ。詠さんの不幸誘発能力の有効範囲のですよ」

「なッ!?」

と愛紗が僕の後ろに詠を確認する。

「く、貴様……」

たたらを踏む愛紗。

「さぁ、来れるものなら来てみなさい、愛紗さん」

「柳々ッ!?」

「ひぃーッ!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「……今日の所は見逃してやる」

そう言って踵を返していく愛紗。

ヤッホーイ。まさに強運様々だぜ。




「ニシシシ。どうもー、お館さんに詠さん、月ちゃん」

僕は愛紗を撃退?して意気揚々と三人の所に近づく。

「アンタ、今の何よ?」

「へ?」

会って早々、仏頂面の詠。

「惚けんじゃないわよ。あの剣のことよ。一体どこから出したのよッ!?」

「ほへ?『ツルギ』のことですか?」

「あぁ、そう言えば初めて会った時にも出してたような……」

北郷までも参戦。

「あれはただの奇術ですよ、奇術」

そううそぶく僕。

「種も仕掛けもある、ただの奇術なのですよ」

「どんな仕掛けをしたら剣を自在に現れたり消したり出来るのよッ」

と詠は今まで『ツルギ』の刺さっていた場所を指差す。

「ニシシシッ。それを言ってしまっては奇術の意味がありませんよ。詠さんも軍師なのですからご自分で考えて下さい」

「う………それはそうだけど……」

「それにしても助かりました。詠さんがこちらに居たお陰で愛紗さんから逃げることに成功しましたよ」

詠が黙ったのを見計らって、ニシシシッと笑いながら言う僕。

「そう言えばなんで愛紗に追いかけ回されてたの?」

北郷が話を変える。

「そうなのですよ、聞いてくれますか、お館さん」

僕は身を乗り出して、主張する。

「愛紗さんってば、僕に剣の稽古をつけようとしてくるのですよ!?」

『――は?』

「僕は文官なのに………。ねぇ、酷いと思いませんか?」

「いや、まぁー、それは……」

「別に良いじゃない、それくらい。文官でも戦場に出ることもあるんじゃないの?護身程度には武を身に付けておいて損はしないんじゃないかしら」

「いやいや、違うのですよ。逆です、逆」

僕は手を振って、大袈裟に否定する。

「僕は武を身に付けることの方が身を破滅させるんですよ」

「いや、意味分かんないし……」

「ですから、僕には壊滅的に武術の才能がないのです」




只今、僕、説明中




あ、勿論、転生、チートに関しては伏せましたけど。

「へぇー、そんな人っているのね」

感心したような口調の詠。

「いや、不幸を誘発する人が何を言っているんですか………」

その後、四人で雑談に花を咲かせていた。








「そう言えば、アンタ、ボクのことはさん付けよね?」

「はい。詠さん、ですね」

「月のことはちゃん付けよね?」

「はい。月ちゃん、ですね」

「愛紗は?」

「愛紗さん」

「鈴々は?」

「鈴々ちゃん」

「朱里は?」

「朱里ちゃん」

「桃香は?」

「桃香さん」

「あんま聞きたくないけど………。その違いは?」

「ツルでペタな娘はちゃん付けですよッ!?」

「………」

「……とは口が裂けても言えません」

「もう、言ってるわよッ!?」

痛ッ!?デコピンされました。
どうでしょうか?

こんな感じで主人公が口先だけで乱世を渡り抜く感じです。

また見ていただけると作者は感激です。

それではまた次回。


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