FSBの正体を全世界に知らしめた元エージェントのアレクサンドル・リトビネンコ氏、彼は常岡氏の友人であるが、その彼も放射性物質ポロニウムによって亡命先のロンドンで命を落とした。
同じく、カフカスに関わったロシア議会の野党議員たちも次々と殺されている。3人の下院議員は毒殺よりももっと分かりやすい方法で死に至っている。自宅で射殺されたのだ。
ジャーナリストの死も多い。ロシアではこの8年間で100人近くの記者が、行方不明になったり、不審な死を遂げている。高級紙「ノヴァヤ・ガゼーダ」紙のシチェコチヒン編集長、その後を継いだアンナ・ポリトコフスカヤ記者も殺された。
ロシアのみならず、イギリスの記者も、フランスの記者も死んでいる。チェチェン・グルジアなどのカフカス地域を取材して生き残っているジャーナリストは数えるほどだ。
そのうちのひとりに常岡氏がいる。
いま、グルジアの現地には日本のメディアはひとりもいない。常岡氏のみが取材を続けているだけだ。だからだろうか、世界が注目するグルジアのニュースが日本のテレビに流れることはあまりにない。
今回のグルジア紛争に関しては、とことん意見の対立するガルージン氏と常岡氏だが、「日本の無関心」という点だけについては完全に意見が一致していた。
「ロシアは国家機関としては私個人にもそれほど好意的ではなかったし、私の友人たちに対して酷いことをしたが、彼(リトビネンコ氏)や、私がロシアで知り合った多数のロシア人たち故に、私は今もロシアが好きだといい切れる」(『ロシア 語られない戦争』常岡浩介著)。
番組の最後、ガルージン氏に、常岡氏の本を引いてこう告げた。
すると、冷静な外交官の表情に赤みがさしたと思ったとたん、こう返した。
「常岡さんの気持ちが本当であるならば、これからも、そうであることを願う」