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一川防衛相がきのう、国会で続投の意欲を示した。野田首相も「襟を正して職責を果たしていただきたい」とかばった。驚くばかりの認識の甘さだ。野党が多数を[記事全文]
ロシアの下院選でプーチン首相の与党「統一ロシア」が大幅に議席を減らした。大統領、首相として12年近く国を率い、選挙で大勝してきたプーチン氏にとっては、初めての逆風といえ[記事全文]
一川防衛相がきのう、国会で続投の意欲を示した。野田首相も「襟を正して職責を果たしていただきたい」とかばった。
驚くばかりの認識の甘さだ。
野党が多数を占める参院で、防衛相の問責決議が確実視されているから言うのではない。
かねて私たちは、問責決議で閣僚の首を取り、政権を追い込むような国会のあり方を批判してきた。いまも、その考えに変わりはない。
だが、一川氏は問責以前に、もはや閣僚にふさわしくないことを、みずから実証しているではないか。
まず、就任直後に「私は安全保障の素人」と述べて、防衛相としての資質が疑われた。国賓のブータン国王夫妻の宮中晩餐(ばんさん)会を欠席して、同僚議員の政治資金パーティーに出た。
決定的なのは、今回の沖縄防衛局長の暴言、更迭問題への対応のお粗末さだ。
「犯す前に、これから犯すと言いますか」という局長の暴言に関連して、米軍普天間飛行場の移設の原点である米兵の少女暴行事件を「詳細には知らない」と述べた。記者会見では、少女暴行事件を「ランコウ事件」といった。
沖縄の人々が局長発言に憤ったのは、単なる言葉遣いの問題ではあるまい。基地の負担を沖縄に強引に押しつける政府の差別意識を感じ取ったからに違いない。その不信感を、一川氏の言動がさらに増幅させた。
それなのに、野田首相はなおも「適材適所で選んだ」と繰り返す。信じられない。速やかに防衛相を更迭すべきだ。
もちろん、責任者の首をすげ替えれば済む話ではない。この際、辺野古移設の政府方針を抜本的に見直し、年内の環境影響評価の提出も断念すべきだ。
もともと一川氏は小沢一郎元民主党代表に近く、入閣は党内融和の象徴だった。消費増税などの難題を抱えて、首相が党内力学への配慮を優先するようなら、政権への信頼をさらに失うのは避けられない。
首相には国会も忘れてもらっては困る。すでに会期末まで4日しかない。
復興財源をつくる目的もある国家公務員の給与引き下げ法案や、労働者派遣法改正案などは、与野党協議があと一息のところまできている。衆院の「一票の格差」の是正も待ったなしだ。このまま国会を閉じて、先送りすることなどあってはならない。
野田首相は即刻、防衛相問題を決着させ、政権を立て直し、法案成立にも尽くすべきだ。
ロシアの下院選でプーチン首相の与党「統一ロシア」が大幅に議席を減らした。
大統領、首相として12年近く国を率い、選挙で大勝してきたプーチン氏にとっては、初めての逆風といえる。
プーチン氏は来年3月の大統領選に立候補し、メドベージェフ大統領と入れ替わる形で返り咲きをめざしている。しかし、今回の選挙結果は長期支配に対する国民の受けとめ方が変わり始めていることを示している。
政権の影響下にある地方機関や既存メディアは今回も統一ロシアを強く後押しした。与党による大量の投開票操作を野党が指摘している。
それでも与党は退潮した。
政権が撲滅を口にしても、汚職や腐敗は深刻化する一方だ。石油や天然ガスの高騰で経済は成長した。だが景気の浮き沈みや資源価格の動向に大きく左右される経済基盤の脆弱(ぜいじゃく)さは変わらない。貧富の差も激しい。
一方で、政権が野党やメディアをきびしく締めつける強権体質は相変わらずだ。
選挙期間中、政権の統制が十分及ばないネット上では、統一ロシアを「ペテン師と泥棒の党」とさんざんにこきおろすサイトが人気を集めた。
エリツィン時代に失われた安定を取り戻し、国家の威信を取り戻した功績も、国民の不満や長期政権への飽きの前に、かすんでしまった印象だ。
ソ連崩壊から20年を経て、国民の意思表示の手段として選挙が機能したともいえる。
汚職や腐敗の排除に本気で取り組み、資源依存から脱して経済の現代化を進める。言論の自由や法の支配を保障する――。
政権がこうした方向に向かっていると実感できない限り、プーチン氏が大統領に復帰しても、国民の鬱屈(うっくつ)は解消しないだろう。
議席を伸ばした野党の共産党や公正ロシアは市場経済への警戒心が強い。外交でも、自由民主党を合わせた3野党は、「強いロシア」の復活をめざして自国の利益を強硬に主張する大国主義的な志向が濃厚である。
ロシアは世界貿易機関(WTO)への加盟が決まった。経済のグローバル化が一層進むなか、他国との協力で資本や技術を導入することが国の発展には欠かせない。核軍縮など安全保障上の課題でも、さらなる建設的な役割が求められる。
与党にとって議会運営は難しさを増す。だが国際協調を後退させれば、ロシアにとって大きな不利益となることを関係者は肝に銘じてほしい。