銀輪の死角

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銀輪の死角:欧州の取り組み/2 フランクフルト(ドイツ)

 ◇車との共生定着

 自転車用通路と車道の立体交差や市街地への車の乗り入れ制限など、スウェーデン・マルメが自転車と車を徹底的に分離するのに対し、ドイツ・フランクフルトの特徴は「自転車と車の共生」だ。

 市内全道路約250キロのうち、高速道路などを除く9割以上で、車道を白線で区切った自転車レーンや専用通路が整備され、交差点の手前で進行方向によって2車線に分かれるレーンもある。

=いずれも亘理さん提供
=いずれも亘理さん提供

 車道を走るレーンについて、市道路交通局のトマス・フリーデ企画官はこう語る。「以前、イスラエルから交通政策の視察団が来て自転車で走ってもらったが、彼らは車道を自転車で走ることが怖くてすぐに降りてしまった。怖がるのは仕方ないと思うが、統計上は自転車が車道を走ると事故は起きにくい」

 企画官によると、事故の多くは車が右左折する際、自転車が視界に入らないため起きているが、自転車が車道を走ると車の運転手は自転車がよく見えるのだという。「ドイツでは、こうした統計に基づく判断で交通政策を進めているのです」

 レーンがないところでも、自転車が車と同じように右側走行していれば、車の方が避けるマナーが定着している。自転車の使い勝手を広げるため、地下鉄への持ち込みも朝の通勤時間帯などを除いて原則的に可能だ。09年に現地を訪れたトヨタ自動車の亘理章IT・ITS企画部主査は「自転車の交通政策が完成された街だった」と振り返る。

 市内の公園の一角には日本の自動車教習所を小さくしたような施設がある。子供用自転車が数十台あり、背の低い交通標識も設置。子供のための自転車練習場だ。ドイツは小学校低学年で地元の警察官らが自転車の交通ルールを教え、練習場で自転車に慣れたうえで公道に出る。

 最近はあまり見られなくなったが、子供が自転車に乗る際、後ろに顔ほどの大きさの三角の旗を立てる習慣もある。車から発見されやすい工夫という。

 フリーデ企画官は言う。「自転車の交通政策は(共生を進める)車と表裏一体。だからこそ、車との事故を防ぐ安全対策を充実させなければならない」=つづく

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 情報やご意見、体験談をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100-8051毎日新聞社会部「銀輪の死角」係)でお寄せください。

毎日新聞 2011年9月21日 東京夕刊

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