日本語で甲高い声を「黄色い声」と表現するように、高い音は明るい色、低い音は暗い色で言い表す傾向は世界の言語で広く共通している。京都大霊長類研究所と独・シャリテ医科大のグループは、こうした本来は関係のない事象を連想する「共感覚的知覚」がチンパンジーにもあることを突き止めた。進化の過程でヒトがどのように言語を獲得したかを探る手掛かりになるという。研究成果は米国科学アカデミー紀要電子版に5日掲載された。
音の高低を色で示す表現は他にも、スペイン語で高い声を「白い声」、ドイツ語で低い声を「暗い声」などと表しており、「高=明」「低=暗」の関係が共通する。理由は不明で「生得的な脳の神経間の結合による」「言語や文化の相互作用により獲得された」などの説がある。
研究グループは、言葉を持たないチンパンジーでそれが起きるか実験した。
まず6頭にコンピューター画面で白か黒の図形を一瞬示し、その後、画面に現れた白と黒二つの図形から、直前に出た図形の色と同じものを選ぶと「正解」と教えた。その上で実験中にピーッという高い音を流した。すると正解が「黒」なのに「白」を選ぶミスが増え、ブーッという低い音を流すと、正解が「白」の時にミスが増えた。ヒト33人で試すと、ほとんどミスはないが反応時間が遅くなり、チンパンジーもヒトも「高=明」「低=暗」の連想が働いていることが分かった。
同研究所の足立幾磨(いくま)助教(比較認知科学)は「明暗だけでなく、丸い物を連想させる音ととがった物を連想させる音は異なる。特定の音が特定の事象と結び付くことが言語誕生の第一歩だった可能性がある」と話している。【榊原雅晴】
毎日新聞 2011年12月6日 0時00分(最終更新 12月6日 0時17分)
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