千葉県浦安市を舞台に家族の再生を描く映画「カルテット!」(三村順一監督)が17日から、同市舞浜のシネマイクスピアリで先行上映される。撮影に入る直前に東日本大震災が起き、同市は市域の約85%が液状化。一時は制作が危ぶまれたが、復興を願う市民らの協力で完成にこぎつけた。
崩壊寸前の家族が、カルテット(四重奏)を組み、きずなを取り戻していく物語。原作は浦安市在住の鬼塚忠さんの同名小説で、市制30周年記念映画として、市が後援している。
出演は、主人公のバイオリニストの少年に新人の高杉真宙(まひろ)さん、リストラされた父親に細川茂樹さん、母親に鶴田真由さん、姉に剛力彩芽さん。メンデルスゾーンやチャイコフスキーのバイオリン協奏曲、バッハのG線上のアリアなど、劇中では名曲の数々が奏でられる。
震災後の4月、市内で撮影が行われた。ロケ地の8割で変更を余儀なくされたが、市民ら700人以上がエキストラで参加した。
初日の17日には、出演者らの舞台あいさつがある。18日以降は上映前に市民音楽家による「音楽でつなぐ絆 ミニコンサート」を企画し、出演希望者を募っている。詳しくはイクスピアリの公式サイト(www.ikspiari.com)。
全国公開は来年1月7日。
■主演の高杉真宙さんに聞く
オーディションで約300人の中から主役に選ばれた高杉真宙さん(15)に話を聞いた。
――主演が決まった時は
えっ、僕? 何でだろうって。バイオリンはそれから3カ月近く、学校が終わってからレッスンをして指で覚えました。
――撮影に入る直前に震災が起きました
1週間ほどたち、三村監督や鶴田さんと浦安へ行き、被害の大きさを実感しました。川辺が崩れて危ない状態で、電柱が倒れ、砂ぼこりがひどくて。テレビじゃ全然分からないな、と思った。
――撮影には地元の人たちも大勢参加しました
被災して大変なのに、わざわざ来て下さった。僕たちが支える方だったのに、支えてもらった感じです。
――印象に残るロケシーンは
(市総合公園の)海です。海に向かって走っていくところ。こんな家族だったら楽しいだろうなあと。
――作品から得たものは
「初」が多かった。初主演、初バイオリン、初浦安市。色んな体験ができた。
――観客にどう見てほしいですか
音楽で家族がきずなを取り戻す話。映像だけでなくクラシックを耳で聞いて楽しんでもらえたら。(永井啓子)