沖縄防衛局長更迭 アセスめぐり女性誹謗

2011年11月30日 09時36分

 田中聡沖縄防衛局長(50)が記者団との非公式な懇談会で、政府が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に係る環境影響評価(アセスメント)評価書の提出時期を明言しない理由について「犯す前に犯しますよと言いますか」などと発言していたことが29日、分かった。一川保夫防衛相は同日、田中氏を防衛省に呼び、事情を聴取した上で、発言は不適切として更迭処分とした。県内では「女性を誹謗し、県民を侮辱する発言」として、強い反発と怒りの声が上がっており、日米合意に基づいて辺野古移設を進める野田政権にとって大きな痛手となる。

 一川氏は29日の会見で「弁解の余地はない。沖縄との信頼関係を失いかねない大変重大なことと認識している」と陳謝した。ただ、評価書の提出時期については「今年中に提出する準備を進めている」と従来の方針を堅持する考えを示した。

 沖縄防衛局が28日夜に居酒屋で主催した懇談会には、本紙を含む県内外の記者約10人が出席し、完全オフレコで行われた。田中氏は酒を飲んでいた。発言時、本紙記者は離れたところにいて発言内容を確認できなかった。29日に複数の出席者に取材し、確認した。

 田中氏は席上、1995年の米兵暴行事件で当時のリチャード・マッキー米太平洋軍司令官の「犯行に使用した車を借りるカネがあれば、女が買えた」という発言を「その通りだと思う」と肯定した。

 沖縄における軍隊の意義について「薩摩に侵攻されたときは、(琉球に)軍隊がいなかったから攻められた。基地のない平和な島はあり得ない」などと持論を展開。辺野古移設が進まない場合は、普天間飛行場は固定化されるとの考えも強調した。

 田中氏は29日朝、本紙の取材に「完全オフレコという約束だった。コメントできない」と述べ、事実関係を明らかにしなかった。一川氏は、中江公人事務次官を近く県に派遣し、謝罪、説明させる。田中氏は同日付で大臣官房付となり、沖縄防衛局の及川博之次長が同局局長事務代理に就いた。

 田中氏は1961年生まれ、福岡県出身。大阪大学法学部卒業後、84年防衛施設庁(当時)入庁。防衛省地方協力企画課長などを経て、今年8月15日に沖縄防衛局長に着任した。96年7月~98年6月まで那覇防衛施設局(当時)の施設企画課長を務めた。

知事「尊厳傷つけた」

 仲井真弘多知事は29日、沖縄防衛局の田中聡局長の発言について、「(発言内容が)事実だとすれば何をか言わんや。沖縄の人間の尊厳を傷つけるというか、極めて遺憾としか言いようがない」と述べ、怒りをあらわにした。田中氏が同日更迭されたことには「防衛省の人事」を理由にコメントしなかった。県庁で記者団に答えた。

 知事は同日、那覇空港で田中氏の発言について「口が汚れるのでコメントしない」と述べ、強い不快感を示していた。

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