少しでも早く得点して落ち着きたい。名古屋グランパスのイレブンは、無意識のうちにそんな気持ちになっていたのだろう。前半はケネディの高さや玉田のドリブル突破といった個の力に頼るプレーが多かった。
それもグランパスの強みではある。だが普段は、ボールを動かして相手をほんろうするパスワークと局面を打開するマンパワーがミックスされているのが持ち味だけに、やや淡泊な印象はあった。それだけ精神的にも難しいゲームだったといえるし、それでも勝ちきれたところが、底力だ。
優勝を逃したといっても勝ち点は71。昨年の72に匹敵する内容だった。逃げ切った柏が見事だったというしかない。アウェーで敗れた直接対決を、せめて引き分けていれば、という見方もできるがシーズンわずか5敗のうちの1つを敗因に挙げるのはしのびない。むしろ、昨年の優勝に続いて今季も最終戦まで僅差の優勝争いができたという事実が、Jリーグにおけるグランパスの位置づけを表している。主導権をとって攻め、勝てるチームという存在感を示した1年だった。
来年、さらに上積みを求めるとすれば、レギュラーが固定化されている中でどれだけ若手が台頭できるかということだろう。日々の練習はどうしても主力に焦点を当てたものになる。若手が力を伸ばすには、チームとしての取り組みと同時に個々の工夫、努力が必要。一人でも二人でも主力を脅かす存在が出てくれば、長期間にわたる強豪になれるはずだ。 (中京大監督、元グランパスDF・西ヶ谷隆之)
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