試合後、小川(左手前)らをねぎらうストイコビッチ監督=東北電力ビッグスワンスタジアムで
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朗報届かず−。名古屋グランパスは後半9分にFW玉田圭司(31)がFKを直接決めて1−0で新潟を下した。6連勝でシーズンを締めくくり勝ち点71としたが、柏が浦和に3−1で勝ち同72としたため、連覇はならず2位に終わった。就任5年目となる来季も指揮を執ることが決まっているドラガン・ストイコビッチ監督(46)は「このチームを誇りに思う」とイレブンをねぎらった。
ベンチの端にもたれて、ストイコビッチ監督はたそがれていた。ハーフタイム。いつもはすぐに控室に戻る指揮官が、柏2点のリードの報に、絶望感をにじませた。
そこから先は、王者のプライドをかけた戦いだった。後半9分、玉田が鮮やかなFKを決めて均衡を破ると、楢崎を軸に、闘莉王、増川が体を投げ出して、1点を守り切った。
「6連勝して優勝できなければ仕方がない。柏のほうが強かったと思うしかない」
ストイコビッチ監督は最後まで優勝争いに絡んだ戦いを、そう振り返った。勝ち点71は、07年の浦和(同70)を抜く2位チームの史上最多。独走優勝した昨年に勝ち点1点だけ足りなかった。
最高の敗者だった。闘莉王は「0−2で(優勝は)ないなと思った。でも後半しっかり戦って勝ったのは、素晴らしい。みんな本当にタフになったな」と2年間の積み重ねをかみしめた。
初優勝した昨年に続いて、今年も一度も連敗しない抜群の安定感。
「初めは難しい時期もあったが乗り越えてくれた。我々の選手を誇りに思う」
開幕から1勝2敗2分けと大きく出遅れた。アジア・チャンピオンズリーグとの過酷なスケジュールに、故障者が出たり、清水から移籍した藤本が適応できずに低迷。ストイコビッチ監督は「王者らしく戦え」とゲキを飛ばしたかと思えば「チャンピオンになったことは忘れるんだ」と戒めたり、手綱さばきに苦しんだ。それでも我慢を続け、藤本が躍動し、故障者が戻ると、一気に優勝争いに加わった。
34試合戦ってわずか1差。結果的に明暗を分けた試合をいくつか挙げた指揮官も「我々に悔いはない。強いグランパスを自負している」と、詳細を振り返る前に、選手をたたえた。「悔しいけど1年間やれたし、この仲間を誇りに思う。今はしっかり休みたい」と闘莉王は納得した表情で解放感に浸る。
最後まで追いすがり、走り切った。歓喜の瞬間は訪れなかった。それでも勝利をつかんだ選手たちは、胸を張って、ゆっくりとサポーターの待つゴール裏に歩みを進めた。 (木本邦彦)
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