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社説:避難者の冬 寒さと孤独から守れ

 本格的な冬が到来した。被災地では、さまざまな不便に雪と寒さが加わる。津波で家を流されたり、原発事故で故郷を追われて避難生活を余儀なくされている被災者たちは、殊に不安を募らせていることだろう。

 岩手、宮城、福島3県の仮設住宅は5万戸を超える。各県が民間などから借り上げた「みなし仮設」も計6万戸以上に上る。

 各県は、断熱材の補強や窓の二重化など仮設住宅の寒さ対策を進めてきた。だが、資材不足もあり、地域によっては対応の遅れが目立つ。

 特に宮城県は、工事が年明けにずれ込む仮設住宅が出てくると懸念されている。管理を市町村に任せきりにしたからとも批判される。やむを得ず自費で防寒に乗り出した住民も少なくない。これは失態ではないか。深刻に受け止めて反省すべきだ。

 厚生労働省は、石油ストーブなど暖房器具の費用を災害救助法による国庫負担とすることを各県に通知した。工事が遅れている仮設住宅にはせめて暖房器具の配布を優先するなど、きめ細かい配慮が必要だろう。

 障害者や高齢者用のスロープや手すりが未設置の仮設住宅も多い。消火栓が近くにないため、石油ストーブの使用を見合わせた仮設住宅もある。街灯の設置が遅れ、「夜道が怖い」との声も出ている。いずれも看過できない。優先順位をつけて急ピッチで対応してほしい。

 「夏は暑く、冬は寒い。その上狭い」--。プレハブ仕様の仮設住宅の住み心地の悪さは、阪神大震災の教訓として残っていたはずだ。突然の震災後の突貫工事でやむを得ない面はあるだろうが、今後のために国としても検証すべきだろう。

 もう一つ心配なのが孤独死だ。阪神大震災では、誰にもみとられず仮設住宅で亡くなった孤独死の人が震災後4年で200人以上に上った。雪や寒さで1人暮らしの高齢者が部屋にこもればリスクは高まる。

 保健師や民生委員が巡回するなどの対策はもちろん必要だ。自治会組織の結成が進む。ボランティアも参加して、集会所に人が集まる機会を増やすことも有効だろう。地域で声を掛け合うための知恵を絞りたい。

 自宅からの避難を余儀なくされたのは、「みなし仮設」の住民も同じだ。だが、暖房器具などの配布はなく、生活に関する情報も入ってこないと不公平感が高まっている。岩手県では、「みなし仮設」に入居した人の住所を、「個人情報」との理由で元々住んでいた市町村に伝えていなかった。行政が情報の蛇口を閉めていたに等しい。今後改めるというがあきれた話だ。硬直化した行政対応でこれ以上、避難者らを苦しめてはならない。

毎日新聞 2011年12月4日 2時31分

 

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