[電力業界献金] 中立性に疑問符がつく
( 12/3 付 )

 総務省が公表した2010年分政治資金収支報告書で、電力各社や電力会社の労働組合が、民主、自民両党に多額の政治献金をしていたことが明らかになった。

 民主党に対しては、電力各社の労組がつくる政治団体が献金やパーティー券購入などの形で3000万円超を提供していた。自民党の政治資金団体には、電力9社の役員・OBらによる個人献金としてやはり3000万円超が渡っていた。

 民主党は企業・団体献金の全面禁止を掲げているにもかかわらず、地方支部は受け入れを続けている。自民党の政治団体への個人献金も、実態は組織的な企業献金ではないか。

 組織ぐるみの政治献金には、政策決定に業界の影響力を及ぼす意図があるとみるべきだ。原発を推進し、地域独占の経営形態やコストを電気料金に上乗せできる「総括原価方式」などの既得権益を守る。こんな狙いをもって民主、自民両党にカネで働き掛けたとの疑念はぬぐえない。

 民主党はかつて、原発を「再生可能エネルギー普及までの過度的エネルギー」と位置付けていた。だが、09年衆院選のマニフェスト(政権公約)では「原子力利用に着実に取り組む」と転換した。

 電力労組でつくる電力総連の政治団体から民主党議員への資金提供は、07~09年の3年間で計1億1000万円超に上る。民主党の政策転換との関連を疑わざるを得ない。

 東京電力福島第1原発事故を受けて、電力各社の地域独占の是非や発送電分離など電力産業の抜本見直しは大きな政治課題になっている。野田佳彦首相は、昨年策定した原発推進のエネルギー計画を白紙に戻し、来年夏をめどに新計画をまとめる方針だ。自民党もエネルギー政策見直しを議論している。

 だが、電力業界から民主、自民両党に多額の献金が流れているようでは、政策決定の中立性に疑問符がつく。両党は献金の受け取りをやめ、国民の疑惑を晴らした上で議論に臨むべきだ。

 鹿児島県関連では九州電力労組の政治団体が昨年、与党衆院議員5人と民主党県連のパーティー券を購入したことが判明した。九電は08年、伊藤祐一郎知事の資金管理団体からもパーティー券を購入していた。

 知事や国会議員は川内原発の運転や増設に大きな影響力のある立場である。違法でないとはいえ、疑念を生む関係は断ち切る必要がある。


 
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