瑞浪市立瑞浪中学校の女子生徒(当時14歳)が06年に自殺したのはいじめが原因だと遺族が訴えた訴訟で、30日の岐阜地裁判決は「いじめの存在を積極的に推認できる事実はない」として請求を棄却した。判決は客観的な証拠能力を重視。証拠が集まりにくい精神的ないじめの立証の難しさが浮き彫りになった。【三上剛輝、梶原遊】
学校は自殺後に無記名アンケートを実施。具体的ないじめの情報が41件あったことから、学校と市教委はいじめを認めた。判決はアンケートについて「作成者が不明で形式的な証拠力に欠ける」と指摘。また、報道やアンケート実施に至る経緯から生徒がいじめがあったとの予断をもって回答した可能性も否定できないとも指摘した。原告の弁護士は「無記名方式だからこそ、いじめの実体が浮かび上がった。判決は実際の教育現場の意識とかけ離れている」と批判している。
アンケート結果を基にいじめ行為を認めた学校と市教委の判断について判決は「到底理解できない」と批判。市教委学校教育課は「生徒への聴き取り調査や作文、無記名アンケートを含めて総合的に判断した。いじめが存在したという見解は変わらない」としている。
文科省はいじめの判断について教育的見地から「表面的、形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うもの」と定義している。しかし、裁判は「女子生徒を厳しい声で注意し、行動を共にしないことがあった」とする被告生徒の行為について、「暴力などのいじめ行為と違い、客観的に明らかなものではなく、目撃者の主観に左右されやすい」と指摘。違法行為としてのいじめの存在の証明に足りるかどうかを厳格に評価し、いじめ行為は証明されていないと結論づけた。
また、女子生徒が「あいつら殺してやりたい」と話したという原告の証言には、「異常行動を見たというのであれば親として保護的な措置をとるのが自然であるのに、特段の対応をとったと認められない」として信用性は低いと指摘した。父親は「過保護に育てない教育方針が間違っていたとは思わない」と話している。
女子生徒の父親(49)は、岐阜市内で開かれた記者会見で「娘が信じていた正義が法廷で認められず、判決は不本意。いじめという暴力によって死に追いやられた事実は我々の中で変わらない」と話した。
裁判は同級生によるいじめの有無が争点だったが、「瑞浪市や当時の生徒たちから証言を得られず、苦戦した」と振り返った。女子生徒が信じた「正義」について質問が及ぶと、「14歳でことの善悪を理解し、嫌なことをされても決してやり返さない、徳の高い子だった」と涙を浮かべながら話した。
また、「DV(近親者による暴力)や児童虐待を裁く法律はあっても、教育現場でのいじめに関する法律がない。被害者と加害者が同じテーブルにつくための法整備が必要」と訴えた。
毎日新聞 2011年12月1日 地方版
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