てんつくマン
地球温暖化はかなり進んでいるみたいですけど、 豪快な号外は地球温暖化をメインに伝えていこうと 思うのですが、温暖化はこれからどうなるんですかね?
田中優
最近、I PCC(気候変動に関する政府間パネル)が、 すごい未来を予想したんだよね。
http://www.jma.go.jp/jma/press/0704/10a/ipcc_ar4_wg2_fix.html
てんつくマン
それって、かなり不都合な真実ですか?
田中優
かなりどころじゃないね、きっとこの10年で、未来が決まるだろうね。
てんつくマン
なんですか、その10年って。ドキドキするじゃないですか!
田中優
じゃあ、ロスタイム10年ていう話をしようか。
てんつくマン
ちょっと待って下さい。ロスタイムって、これまたドキドキする言葉ですね。
田中優
IPCCが出したデータを使って、インディペンデントというイギリスの新聞が予測を出したんだけど、IPCCが予測するように「このままの社会のままなら、100年後には最大、地球の温度が6.4度上昇する」ことになる。インディペンデント紙はその時点を予測して「すべての生命は絶滅する可能性が高い」と発表したんだ。
てんつくマン
本当ですか?信じたくない情報ですね。
田中優
僕も信じたくないところなんだけど、残念ながら現実は、今まで、このIPCCの報告の予想通りに地球の状況が悪化しているんだよね。
てんつくマン
ということは、しっかりと受け止める必要があるということですね。
田中優
そうだね。この6,4度上昇という数字は「このままの社会のままなら」っていう数字でね、もしも、今、人々が気付き動き出した場合は、2,4上昇で抑えられるだろうと言っているしね。(IPCC第一作業部会「高度成長シナリオ」の化石エネルギー源重視シナリオの数値。予想の下限が6,4度。http://www.jma.go.jp/jma/press/0702/02b/ipcc/_wg1.pdf)
てんつくマン
2,4度上昇した場合、どんなことが起こるんですか?
田中優
IPCCは、少なく見積もっても数億人が水不足になると発表。インデペンデント紙は、珊瑚礁はほぼ絶滅、北米では南はテキサス州からモンタナ州まで5州にわたって砂丘が現れて農業と牧畜をかき消し、アンデスの氷河はなくなり、地球上の三分の一の生物種が絶滅すると発表したね。
てんつくマン
三分の一ですか?今も一日に100種類以上の動植物が絶滅しているのに、さらに進むってことですね。
田中優
そうだね。だからさ、実は僕はね、100年後にどうなるかは10年で決まると思っているんだ。
てんつくマン
ロスタイム10年ってどういうことか、教えてもらっていいですか?
田中優
この10年間で人が動くことをしなければ、フィードバック現象が始まると思うんだ。
てんつくマン
なんですか、それは!
田中優
それはね、雪だるま式の悪循環っていうことだね。坂の上から雪を転がすとどんどん大きくなるでしょう?それが始まると、もう今更何をしようが止められなくなる。その悪循環に入りそうだということだね。
てんつくマン
マジですか。フィードバック現象の具体的な例を心臓が止まらない程度に教えてもらっていいですか?
田中優
木はCO2(二酸化炭素)を吸って、酸素を僕らに供給してくれているよね。その木は、その土地が温帯だとか亜寒帯だとか、気温やいろんな条件のもとに、そこに生えているわけだ。ところが温帯が亜寒帯になったら、その木は適さなくなるんだ。
てんつくマン
そうなると、どうなるんですか?
田中優
木が枯れ始めるよね。インディペンデント紙は3,4度上昇で、アマゾンの熱帯雨林は砂漠になると言っているわけだけど、そうなったら、逆転現象が起こるんだ。
田中優
CO2を吸い取ってくれていた木がCO2を排出し始める。気候は毎年10キロ以上移り変わっていくことになるから、木を移動させても間に合わない。こうなるともう、人間の手ではどうしようも出来なくなるだろうね。
てんつくマン
アマゾンが砂漠って・・・優さん、事実を知れば知るほど、がくぜんとすることもあるし、絶望感を観じることもあるのに、優さんが希望を見続けることが出来るのは何でですか?
田中優
それは、まだやれることがあるからだね。それにまだロスタイムがある。それが10年だと予想しているんだけどね。
てんつくマン
IPCCやインディペンデント紙の予測を見て、僕が思ったのは、受け止める必要はあるけどすべてを受け入れる必要はないってこと。だって、未来は決まっていない、未来は決められるから。僕らがチューニングするのは、絶望の6,4度上昇でも2,4度上昇でもない。今、やれることをやって、科学者たちが出した予想を上回る結果を出そうというところやと思うんです。
田中優
まさにそうだと思う。やれることはある。
てんつくマン
その、やれることに関してです。何をすればいいですかね?
田中優
いろいろあるけど、まずCO2を削減することだよね。日本が排出しているCO2は大きくわけて、「発電」「産業」「輸送」の3つなんだ。これで8割を出している。
てんつくマン
「発電」っていうところで言うと、日本政府はCO2削減には原子力発電だと言っていますが、あれはどうですか?
田中優
アル・ゴア(アメリカ元副大統領)も言っているけど、コスト的に無理だね。
てんつくマン
最近、中村隆市さんに原発のことや、青森六ケ所村の核燃料再処理工場のことを聞くたびにアメリカ先住民の言葉を思い出すんです。
「私たちはなにかをきめるとき、七代先のことを考えて決める」っていう言葉です。そこから考えても、原発は適していない。原発を動かすと、放射能がいっぱい出るんですよね。その放射能を処理する技術を人類はまだ持ってないのに作るっていうのは、疑問が残るんです。もっと原発のことや六ヶ所のことを知った上で決めた方がいいですよね。それに、原発は数十年で使えなくなるのに、労朽化した原発を壊す技術も人類は持っていないんでしょう?
田中優
原発は壊したり放射能を保存したりするときに、建てるときの数倍のお金がかかるだろうね。人間が壊そうとすると被爆するからロボットを使うんだけど、チェルノブイリではそのロボットが放射能を浴びて、壊れているほどだしね。そりゃ、放射能を持ってしまった建物を壊すのは大変な作業になるよ。それに六ヶ所村の再処理工場が11月に本格稼働すると言われているけれど、11月に本格的に稼働したら、許されている放出量で言えば、海からは47000人分の致死量、空からは57000人分の致死量、あわせて52700人分の致死量の放射能を捨てていいんだからね。これをたとえ10分の1に抑えても、5200人分の致死量だからね。(http://www.jca.apc.org/mlhama/reprocess/hibaku022msv.htm)
CO2削減には原発っていうのは、総合的に見るとベストとは言えないね。
てんつくマン
でも、よくこう言うでしょ、原発が無ければ生きていけないって。
田中優
そんなことないよ。ヨーロッパなどは、どんどん自然エネルギーに切り替えているけど、原始時代の生活をしているわけじゃないからね。
てんつくマン
これは、やっぱり政治家が決めることですよね。
田中優
そうだね、市民が「自然エネルギーに変えてほしい、マニフェストにそれを入れたら一票入れます」って言えば、当然政治家も選挙に当選するために、そういう政策を入れるだろうね。今までは環境のことを言っても票は入らなかったからね。だから、市民が「環境に力をいれる人に一票を入れる」と声をあげることだね。
てんつくマン
話は戻し、CO2を減らすのに、原発じゃなく、何がありますか?
田中優
省エネが意外と大きいんだよね。それも、我慢、忍耐じゃない、省エネね。
てんつくマン
これはゴアの本にも書いてありましたが、省エネ電球だけでもすごいですね。日本の4900万の世帯が、白熱電球から省エネ電球にたった一個だけ替えるだけで、日本から92万台の車が消えるぐらいCO2が減るんですってね。
田中優
六分の一の電気で同じ明るさになるから、全体ではそうなるかもしれない。財団法人省エネルギーセンター(http://www.eccj.or.jp/)が冊子のなかで、各メーカーの製品の消費電力量を一覧にして出したおかげで、日本電化製品はものすごく省エネが進んだんだ。それが合わさると、細々したことでも全体では大きな効果を生んだりする。実際に、東京電力の消費電力のピークは、2001年を最後にどんなに暑い日が来ても伸びなくなったからね。
てんつくマン
電力消費のピークが下がると何か変るんですか?
田中優
ピークが伸びなくなれば、新たな発電所を建てなくて済むからね。電気は貯められないからピークの消費量が重要なんだ。家庭の省エネはどんどん進んでいるから、買い換えるときに省エネ製品を選びさえすれば、半分まで電気を減らしても今までと同じ暮らし方ができるんだよね。しかし、まだ産業界は減らすことが出来ると思う。なんで減らさないかと言うと、家庭は電気を使えば使うほど電気代が高くなるのに、業務用の電気料金は使えば使うほど安くなるシステムになっているんだ。
てんつくマン
そうか。ガソリンもそうですよね。高くなったら、車じゃなく電車にしようとか、バスにしようと思いますもんね。
田中優
だから、電気代のシステムを変えて、使えば使うほど電気料金が高くなるような仕組みにすれば、一気にCO2の削減ができる。だから、仕組を変えることが重要なんだ。そのためにも物言う消費者になりたいね。
てんつくマン
やっぱりまずは自分からですね。あと、輸送の時にかなりCO2が出るそうですが、具体的には僕らは何をすればいいですか?
田中優
そうだね、海外産の食べ物を国産にすることでCO2はかなり減るね。これは一つの例だけど、CO2を削減するのに大きな効果があるのは、意外なことにブルーベリーを輸入品から国産品に変えることなんだ。アメリカからトラックや飛行機で輸送するのと比べると、国内産なら減るからね。だから、大きいのは地産地消だね。地元で採れたものを食べることが、CO2排出を減らすのにとてもいい。体にも環境にもいいね。(http:/www.food-mileage.com/)
てんつくマン
当然、農業をやる人が増えたら、結果、それはCO2の削減になりますよね。
田中優
農業のやり方にもよるけど、少なくとも自給率が上がるってことは、輸送する時のCO2の削減になるからね。ただ、どれだけみんなが省エネをしても、どれだけ企業が努力をしても、どれだけ地産地消に取り組んでも、戦争を止めないと温暖化は止まらないことを知っておいてほしい。戦争と軍事ほどCO2を出すものはないからね。
てんつくマン
それはむなしいですね、戦争を止める方法はあるんですか?
田中優
戦争はお金がなければできない。今、戦争にお金をだしているのは、日本人なんだよね。郵貯や銀行に貯金すると、それで短期国債が買われ、アメリカ国債が買われて戦争の費用になってるんだ。だから、戦争が嫌だと思う人は銀行からお金を下ろしてきて、ろうきんに移したり、持続可能な社会を築こうとしている会社の株を買って応援するっていうのも必要だと思うよ。
それとね、自分たちで非営利のバンクを作って、自分たちのお金の使い方を、自分たちで決めるのもいいよね。ぼくらは10年以上前から未来バンクっていうのを作って、環境や市民事業に融資してきているんだ。だってお金は使うもので、使われるものじゃないでしょ?
(http:/www.jca.apc.org/npols/mirai/)
てんつくマン
そうですか、やれることはいっぱいありますね。
こういう事実を一人でも多くの人が知って、知った人がそれを行動に移せるかによって、すべて変ってきますね。
田中優
こういうロスタイムの時代に生まれてきたことは、本当に大きな使命があるんだと思うよ。
てんつくマン
いやぁみんなでなんとかしましょうね。大事なのは、まず、省エネ、地産地消、企業の努力、そして環境意識の高い政治家に当選してもらって、法律を変えてもらうこと。
いろいろ教えていただきまして、ありがとうございました
|