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きょうのコラム「時鐘」 2011年12月1日
大関昇進が決まった稀勢(きせ)の里(さと)の口上(こうじょう)に、四字熟語はなかった。難しい漢語を使うのが最近の流行だけに、「大関の名を汚さぬよう」という平凡な言葉が逆に新鮮に映った
出島の口上は「力(ちから)の武士(もののふ)」だった。ひいきの力士だから覚えているが、「不撓不屈(ふとうふくつ)」や「一意専心(いちいせんしん)」が誰の口上だったか、もう記憶はあやふやである。力士に美辞麗句は似合わない。政治家にやらせておけばいい。弱い大関陣と評判の悪い今、「名を汚さぬ」という紋切(もんき)り型の口上の方が、よほどいい こんな笑い話を聞いた。「日本一うまい店」という看板を出すラーメン店の横に、新しい店ができた。看板の口上は「世界一うまい店」。軒を並べてもう一つ店ができ、小さな看板を掲げた。「入り口はこちら」。うたい文句よりも味で勝負。腕に自信がなければ、こうはいかない 看板の口上にも、いろいろある。衝突脱線事故が起きた加賀の踏切に、「監視カメラ作動中」の表示があった。実際はカメラはなく、看板に偽(いつわ)りあり。これは高等戦術の警告か、それとも、せちがらい世の産物なのか。深いため息を誘う看板である。 |