世界各地で「フカヒレ禁止」の動き 都内名門ホテル、2012年からフカヒレ料理提供停止へ
中華料理の高級食材として知られるフカヒレの販売などを禁止する動きが、今、世界各地で広がっている。資源保護や食文化をめぐり、賛否両論が渦巻く中、東京都内の名門ホテルも、フカヒレ料理の年内限りの提供を宣言した。
ザ・ペニンシュラ東京では、フカヒレ料理が、2012年から食べられなくなるという。
ザ・ペニンシュラホテルグループは、2012年1月1日から、世界中でフカヒレ料理をメニューから外すことを決定した。
数あるメニューの中でも、絶大な人気を誇るというフカヒレ料理だが、ザ・ペニンシュラ東京の大場正久副総支配人は「世界中では、ある種のサメが乱獲によって数が非常に少なくなっている」と話した。
フカヒレ目当ての乱獲によるサメの減少を、重く見ての決断だという。
今、フカヒレに空前の逆風が吹いている。
アメリカ・カリフォルニア州では10月、フカヒレの販売や流通を禁止する法律が成立した。
在庫の販売は2013年7月まで認められるが、それ以降の取り扱いは、全面的に禁止されることになる。
カリフォルニア州のある店舗では、フカヒレを16種類置いている。
100ドル台から1,000ドルを超えるものまであるが、これらをすべて売り切ったあとは、もう入荷する予定はないという。
カリフォルニア州は、アメリカで最も中国系の住民が多い州だけに、意見が真っ向対立している。
住民からは、「ヒレを切られて、生きたまま海に放り込まれるなんて、見ていて不快だ」、「(フカヒレ禁止法の成立は)一方的な話だ。食物連鎖なんだよ。大きな魚は小さな魚を食べる。人間が大きな魚を食べたっていい」と話した。
こうした中、EU(ヨーロッパ連合)は11月、フカヒレ目当てのサメ漁を全面禁止する規制案をまとめた。
欧米では、サメの減少だけでなく、漁の方法に対する批判が高まっている。
それは、生きたサメからヒレだけを切り取り、海に捨てるというもの。
「残酷」、「食文化」と賛否渦巻くフカヒレ禁止法だが、東京・有楽町では、「なかなか口にする機会ないですけど、クジラ漁とか、いろいろ規制があるので、乱獲はよくないのかなと思います」、「僕、大好物なので困りますよね。フカヒレとれなくなっちゃったら」といった声が聞かれた。
こうした動きが、東日本大震災の被災地復興にも影を落とそうとしている。
世界的にも有数のフカヒレ産地、宮城・気仙沼市。
地元の人たちは、震災復興の頼みの綱として、名産・フカヒレ商品に大きな期待を寄せている。
街の人は「それ(フカヒレ)がなくなったら大変なんじゃない。ここは、成り立たないと思うね、気仙沼はね。フカヒレを作って全国に販売しなければ、活性化にならないんじゃないかなと思います」と話した。
気仙沼市では、フカヒレだけでなく、肉をすり身にするなどして、余すところなくサメを利用しているという。
阿部長商店の小野寺 ユミマネジャーは「(サメの)いろんな部分を有効活用しているのが、日本の気仙沼ですということをPRしていきたいと思います」と話した。
水産資源にくわしい、(独)水産総合研究センター・国際水産資源研究所の中野秀樹氏は、サメの漁獲について、「実際、どのサメが非常に乱獲状態にあるかというデータは、あまりないんです。環境保護団体は20種類も30種類も、(サメを)ワシントン条約に掲載したいという動きを強めてますので、今後、ますます厳しくなるだろうと思います」と話した。
(12/01 01:36)