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「引きこもり」するオトナたち
【第88回】 2011年12月1日
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池上正樹 [ジャーナリスト]

引きこもるのは“家”だけではない
今も居場所を探し漂流するある若者の半生

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 ホームレス時代は、実家近くにあるスタジアムの傍らに段ボールを敷いて寝ていた。シーズン中は、入場待ちの客と間違えられて、「一番乗りですね」などと言われたこともある。

 フルシーズン、ホームレスをしていると、様々なことがある。いきなり、心ない人から写真を撮られたこともあった。

 夏は、寒くない分、気が楽だった。

 ただ、寝ているときにゴキブリが耳の辺りを駆けずり回ると、発狂したくなる。そんなゴキブリ体験も、だんだんと慣れてきた。

 「蚊が媒介して、他のホームレスの汚い人のヘンな病気が移っちゃったらイヤだな」

 そんなことが気になったものの、蚊に襲われることも、それほどなかったという。

国の制度で大型免許取得
ホームレス脱出に成功

 現在、後藤さんの過ごしたスタジアムは改装工事中で、たくさんいたホームレスの姿が、1人もいなくなっていた。

 「ホームレスは経験するものではない」と、後藤さんは笑う。

 ホームレスを辞めたきっかけは、直接仕事に入ってしまったことだ。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。新聞、月刊誌、週刊誌で、「心の問題」「住環境」などの社会問題をテーマに執筆。1997年から「ひきこもり」を巡る取材を始める。著書は、『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『「引きこもり」生還記』(小学館文庫)など。2011年6月には最新刊『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)を上梓。


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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