非アルコール性脂肪肝炎の話 [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日は最近日本でも増加している、
肝臓の病気の話です。
お酒を飲まないのに、
肝機能の数値が上昇している方が、
最近増えています。
GOT(AST)やGPT(ALT)という数値は、
正常値は異論もあるところですが、
概ね30代くらいまでとなっていますが、
その数値が80以上、時には100を超えるようになります。
太っている方が多いのですが、
必ずしも太っていなくても数値が上がっている場合があります。
ただ、概ね体重はそれほどでなくても、
お腹の周りは結構ぽっちゃりはしていることが殆どです。
超音波の検査をしてみると、
脂肪肝が見付かります。
脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓の中に、
過剰に存在している状態のことです。
これでB型やC型のウイルスの肝炎がなく、
膠原病による肝炎のような特殊な病気もなければ、
診断はほぼ「非アルコール性脂肪肝炎」です。
非アルコール性脂肪肝炎とは何でしょうか?
1980年にお酒を飲んでいない患者さんで、
アルコール性の肝障害に、
非常に良く似た肝臓の組織の所見が報告されました。
その後様々の原因で、
同様のアルコール性に似た、
アルコール以外の原因による肝臓の病気をまとめて、
「非アルコール性脂肪性肝疾患」という、
もう少し広い概念が整理されました。
つまり、非アルコール性脂肪肝炎は、
非アルコール性脂肪性肝疾患の一部です。
この病気の診断は、
厳密には「肝生検」という、
肝臓に針を刺して、その組織の一部を取る、
という検査をしなければ、確定はしません。
しかし、ただ単に肝機能の数値が少し上がっていて、
脂肪肝がある、という段階では、
このようなリスクもある検査は行なわれないのが通常です。
つまり、非アルコール性脂肪肝炎の診断は、
軽症例では疑いに留まることが多いのです。
非アルコール性脂肪肝炎は、
何故起こるのでしょうか?
その詳細は未だ不明ですが、
概ねまず脂肪やカロリーの過剰により、
肝臓に余分の脂肪が溜まり、
その脂肪から産生される遊離脂肪酸という脂の一種が、
過剰に酸化されることによって起こるのではないか、
と考えられています。
この時、TNF-α という炎症性の物質が産生されると、
それによりインスリンの効きが悪くなる、
インスリン抵抗性が生じます。
つまり、肝臓における酸化ストレスとインスリン抵抗性が、
非アルコール性脂肪肝炎の本態です。
酸化ストレスとインスリン抵抗性は、
共に全身の動脈硬化を進める要因になります。
従って、非アルコール性脂肪肝炎は、
肝臓の病気であるばかりでなく、
糖尿病や心臓病、脳梗塞とも互いに関連を持っているのです。
非アルコール性脂肪肝炎を、
治療しなければいけない理由は、
将来の肝硬変を予防することの他に、
動脈硬化性疾患を、予防する点にもある訳です。
よろしいでしょうか?
現状の問題点は、
たとえば健診で少しGOTやGPTの数値が上がっていて、
この病気が疑われる際に、
どのように対処するべきか、
という明瞭な基準がないことです。
従って、判断する医者によっても対応はまちまちで、
せっかく健診の項目に肝機能の数値が存在するのに、
それが必ずしも有効に活用されていない、
という現実があります。
診療所では管理栄養士による、
栄養指導と生活指導を行なっているので、
僕は診療所でご相談のあった方に関しては、
極力栄養指導への受診をお勧めしています。
実際にその方が何をどれくらい食べ、
どれくらいの運動をするのが望ましいのか、
という点については、
その方の生活習慣に合わせた、
よりフレキシブルで、より具体的な処方箋が必要です。
従って、1回や2回の指導でOK、ということは、
現実にはなく、
ある程度の期間継続した指導を行ない、
その結果をみてゆく必要があります。
一般に教科書的に書かれていることは、
標準体重当たり、25~35kcal 程度を基準として、
そのうち脂質は20%以下にしろ、というものですが、
標準体重の算定というのがまず曲者ですし、
その方の食習慣に見合った具体的なレシピが提供されなければ、
こんなものは絵に描いた餅になってしまいます。
現実には標準体重を超えていない方でも、
その方の全身の代謝のバランスから言って、
カロリーオーバーになっているケースは、
結構あるものです。
診療所の実際の事例では、
体重は標準体重を下回るレベルでしたが、
脂肪肝と80程度のGOT、GPTの上昇が認められ、
食事内容を記載して頂くと、
脂質の配分が30%とやや多く、
具体的なレシピを提示することで、
その点の改善を図ると、
3ヶ月程度でGOT、GPTとも、
正常範囲に復した、というケースがありました。
その間体重は2kg程度低下しましたが、
ご本人は身体が軽くなった、
とお話されていて、
標準体重より低値にはなりましたが、
その方の全身のバランスから言って、
その体重こそ適正なものだったのだと、
納得させられました。
ただ、こうした栄養指導や生活指導は、
その方のパーソナリティを選ぶ、
という気がします。
「全て分かっているから聞く必要はない」
と言われる方もいますし、
一度だけ指導を受けると、
「もう理解したから自分なりにやってみる」
と言われて継続はされない方もいます。
そう言われた方がご自分で管理をされるかと言うと、
現実にはそうしたことは極めて稀で、
数値が改善することも殆どありません。
それでいて、怪しげなサプリメントや健康法の類には、
結構熱心になったりもします。
ただ、僕はそうした場合に強制するような言い方は、
原則としてはしません。
生活指導というのは、
他人の管理を受け入れる、
という行為ですから、
それを好まない方も当然いるのです。
そうした場合には、
薬物治療の選択肢も視野に入れます。
それでは非アルコール性脂肪肝炎に、
効く薬はあるのでしょうか?
少し長くなりましたので、
その点については明日に続けたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日は最近日本でも増加している、
肝臓の病気の話です。
お酒を飲まないのに、
肝機能の数値が上昇している方が、
最近増えています。
GOT(AST)やGPT(ALT)という数値は、
正常値は異論もあるところですが、
概ね30代くらいまでとなっていますが、
その数値が80以上、時には100を超えるようになります。
太っている方が多いのですが、
必ずしも太っていなくても数値が上がっている場合があります。
ただ、概ね体重はそれほどでなくても、
お腹の周りは結構ぽっちゃりはしていることが殆どです。
超音波の検査をしてみると、
脂肪肝が見付かります。
脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓の中に、
過剰に存在している状態のことです。
これでB型やC型のウイルスの肝炎がなく、
膠原病による肝炎のような特殊な病気もなければ、
診断はほぼ「非アルコール性脂肪肝炎」です。
非アルコール性脂肪肝炎とは何でしょうか?
1980年にお酒を飲んでいない患者さんで、
アルコール性の肝障害に、
非常に良く似た肝臓の組織の所見が報告されました。
その後様々の原因で、
同様のアルコール性に似た、
アルコール以外の原因による肝臓の病気をまとめて、
「非アルコール性脂肪性肝疾患」という、
もう少し広い概念が整理されました。
つまり、非アルコール性脂肪肝炎は、
非アルコール性脂肪性肝疾患の一部です。
この病気の診断は、
厳密には「肝生検」という、
肝臓に針を刺して、その組織の一部を取る、
という検査をしなければ、確定はしません。
しかし、ただ単に肝機能の数値が少し上がっていて、
脂肪肝がある、という段階では、
このようなリスクもある検査は行なわれないのが通常です。
つまり、非アルコール性脂肪肝炎の診断は、
軽症例では疑いに留まることが多いのです。
非アルコール性脂肪肝炎は、
何故起こるのでしょうか?
その詳細は未だ不明ですが、
概ねまず脂肪やカロリーの過剰により、
肝臓に余分の脂肪が溜まり、
その脂肪から産生される遊離脂肪酸という脂の一種が、
過剰に酸化されることによって起こるのではないか、
と考えられています。
この時、TNF-α という炎症性の物質が産生されると、
それによりインスリンの効きが悪くなる、
インスリン抵抗性が生じます。
つまり、肝臓における酸化ストレスとインスリン抵抗性が、
非アルコール性脂肪肝炎の本態です。
酸化ストレスとインスリン抵抗性は、
共に全身の動脈硬化を進める要因になります。
従って、非アルコール性脂肪肝炎は、
肝臓の病気であるばかりでなく、
糖尿病や心臓病、脳梗塞とも互いに関連を持っているのです。
非アルコール性脂肪肝炎を、
治療しなければいけない理由は、
将来の肝硬変を予防することの他に、
動脈硬化性疾患を、予防する点にもある訳です。
よろしいでしょうか?
現状の問題点は、
たとえば健診で少しGOTやGPTの数値が上がっていて、
この病気が疑われる際に、
どのように対処するべきか、
という明瞭な基準がないことです。
従って、判断する医者によっても対応はまちまちで、
せっかく健診の項目に肝機能の数値が存在するのに、
それが必ずしも有効に活用されていない、
という現実があります。
診療所では管理栄養士による、
栄養指導と生活指導を行なっているので、
僕は診療所でご相談のあった方に関しては、
極力栄養指導への受診をお勧めしています。
実際にその方が何をどれくらい食べ、
どれくらいの運動をするのが望ましいのか、
という点については、
その方の生活習慣に合わせた、
よりフレキシブルで、より具体的な処方箋が必要です。
従って、1回や2回の指導でOK、ということは、
現実にはなく、
ある程度の期間継続した指導を行ない、
その結果をみてゆく必要があります。
一般に教科書的に書かれていることは、
標準体重当たり、25~35kcal 程度を基準として、
そのうち脂質は20%以下にしろ、というものですが、
標準体重の算定というのがまず曲者ですし、
その方の食習慣に見合った具体的なレシピが提供されなければ、
こんなものは絵に描いた餅になってしまいます。
現実には標準体重を超えていない方でも、
その方の全身の代謝のバランスから言って、
カロリーオーバーになっているケースは、
結構あるものです。
診療所の実際の事例では、
体重は標準体重を下回るレベルでしたが、
脂肪肝と80程度のGOT、GPTの上昇が認められ、
食事内容を記載して頂くと、
脂質の配分が30%とやや多く、
具体的なレシピを提示することで、
その点の改善を図ると、
3ヶ月程度でGOT、GPTとも、
正常範囲に復した、というケースがありました。
その間体重は2kg程度低下しましたが、
ご本人は身体が軽くなった、
とお話されていて、
標準体重より低値にはなりましたが、
その方の全身のバランスから言って、
その体重こそ適正なものだったのだと、
納得させられました。
ただ、こうした栄養指導や生活指導は、
その方のパーソナリティを選ぶ、
という気がします。
「全て分かっているから聞く必要はない」
と言われる方もいますし、
一度だけ指導を受けると、
「もう理解したから自分なりにやってみる」
と言われて継続はされない方もいます。
そう言われた方がご自分で管理をされるかと言うと、
現実にはそうしたことは極めて稀で、
数値が改善することも殆どありません。
それでいて、怪しげなサプリメントや健康法の類には、
結構熱心になったりもします。
ただ、僕はそうした場合に強制するような言い方は、
原則としてはしません。
生活指導というのは、
他人の管理を受け入れる、
という行為ですから、
それを好まない方も当然いるのです。
そうした場合には、
薬物治療の選択肢も視野に入れます。
それでは非アルコール性脂肪肝炎に、
効く薬はあるのでしょうか?
少し長くなりましたので、
その点については明日に続けたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2010-05-17 08:19
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コメント(3)
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こんにちは~。
今の所、血液検査は、主人も私も正常ですが、栄養指導や生活指導・・・以後の文章は、全く私達の事を差しているのでは?と、感じる位、当てはまっているような気がします。
生活習慣等は、長年自信を持って???生きて来た分、変な過信が有るのかも知れませんね。
でも、もし、非アルコール性脂肪肝炎の疑いが有る様になったら、やはり、薬ばかりに頼るのは・・・。
次回記事を参考に、生活指導を受け入れられるような心の準備だけは、して置くようにしたいと思いました。
by みぃ (2010-05-17 15:12)
みぃさんへ
コメントありがとうございます。
この病気はかなり体質が左右するようです。
今の時点で問題がなければ、
おそらく心配ないと思います。
by fujiki (2010-05-17 16:00)
脂肪肝は禁酒と運動がいいみたいです。
by maty (2010-09-19 08:40)