【コラム】あの夜のEマートを思い起こせ

 最近、韓国社会では「寝るな」という言葉と同音の「恐れるな」という言葉が流行している。韓米FTA(自由貿易協定)反対論者たちが大衆に向かって「法と公権力を恐れることなく政府に対抗しよう」という意味合いで使っている。しかし、この冗談めいた言葉が流行するのは、ある意味、心に余裕があるからだ。ところが13年前に米国のウォルマートが韓国に進出してきたときは、今とは大きく状況が異なっていた。経済危機に苦しむ韓国国民にとって、ウォルマートは恐竜のように本当に恐ろしい存在だった。まさに「恐れていた」のだ。

 あのころ、記者は流通業界を担当していたが、当時の記事を今一度読み返してみると顔が真っ赤になる。メディアの中には「独自の人工衛星を打ち上げ、“グローバルアウトソーシング”という革新的なシステムを立ち上げた世界最大の企業」「物流や仕入れの費用を40%削減し、24時間最低価格を実現」「恐竜の来襲」などと報じたところもあったが、最も注目を集めていたのは「ウォルマートは韓国で何を企んでいるのか」ということだった。マスコミ関係者はウォルマートの販売戦略を「クレージーなセール」と呼んだ。ウォルマートが1度セールをやれば、経済危機に苦しむ韓国の流通業界は一気に屈服するかのように考えられていたのだ。

 1998年8月11日、ついにウォルマートがセールを始めるとの情報を入手した。激しい取材競争の中、われわれはこの独自情報を加工して3回にわたりシリーズ記事を掲載することにした。見出しは「ウォルマートがやって来た」だった。この記事は結果的に流通業界に大転換をもたらすきっかけとなった。自分の書いた記事を自慢するわけではない。記事そのものに対しては、賞賛よりも非難の方が多かった。ある企業経営者からは「侵略者を宣伝するのか」などと厳しい批判も寄せられた。それでもこの記事が流通業界を変革するきっかけとなったのは、ウォルマートよりもむしろ、対決を宣言した韓国のライバル企業、Eマートを刺激したからだ。つまりこの記事が、両社の対決に拍車を掛けたというわけだ。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)産業部次長
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