「くりでん」は今
一度行ってみたかった懐かしのあの場所を目指し、ウィークエンドパス」を使ってまた旅に出ました。
「やまびこ」に乗って一路くりこま高原へ。「土日きっぷ」時代はフリー乗降エリアの北限が古川まででしたが、「ウィークエンドパス」からは、くりこま高原まで広がっています。
くりこま高原からは、石越駅前行のバスに乗り、途中の若柳中町で降りました。向かった先は…
2007年3月末限りで廃止となった、くりはら田園鉄道の若柳駅です。駅舎はきれいに補修され、より昔風の懐かしい趣のまま保存されています。
ホームには現役時代に活躍した懐かしの車両が留め置かれていて、月に一度、構内の500メートルを運転する動態保存が行なわれています。今日は運転日ではないけれど、現役当時さながらの佇まいに、懐かしさで胸が熱くなります。あれからもう4年と8ヶ月も経ったのですね。
駅舎やホーム、構内の一部は、鉄道公園として整備され、在りし日の姿を今に伝えています。ただ、道路によって線路が完全に分断されてしまったは惜しい気がしてならず、できれば踏切として残しておいてほしかったですね。
道路を挟んだ反対側には車庫があり、廃車となった車両が静かに眠っています。構内へと行き来していたレールは分断されてしまったので、こちらはもう二度と出庫することはないでしょう。
腕木式信号機や転轍機など、懐かしのアイテムが随所に残されています。ただ、あちこちで分断された線路を目の当たりにすると、胸がチクンと痛みます。
かつての「くりでん」の跡を辿りたく、代替バスに乗って細倉マインパーク前を目指します。運賃は鉄道時代の半額以下の500円という激安ぶりにもかかわらず、乗客はほぼゼロに近い状態。バスもマイクロバス風の小型車で、中は18人分の座席と6つのつり革があるだけです。つまり普段はこれで十分足りるだけの需要しかないのでしょう。
風情のある駅舎があったかつての沢辺や栗駒、栗原田町などは、全て駅舎が撤去されていて、とても残念に思いましたが、終点の細倉マインパーク前だけは、そのままの姿で残っています。ここでしばらく待っていれば、そのうちに列車がやって来るような気がしてしまいます。
ホームに行く通路も閉鎖されていなかったので、ホームにも行ってみました。廃止間際のあの混雑がウソのように静まり返っています。でも、もともとここは静かな所だったので、元に戻っただけなのかもしれません。
すぐそばには、映画「東京タワー」の撮影で使われた、古い家屋や商店などが建ち並び、昭和レトロに満ち溢れています。ただ、2008年の岩手・宮城内陸地震の影響により、大部分が閉鎖されたままなので、今は訪れる人もなく、とてもひっそりとしています。「くりでん」の廃止間際には、ここも多くの人で賑わったものでした。
来た時と同じバス、同じ運転士に迎えられ、細倉マインパークを後にします。土日は一日に5本しかバスがないというのに、今度も乗客はほぼゼロの状態。鉄道時代から乗客は少なかったけれど、これほどではなかったような。これでは先行きが不安になります。終点の石越駅前まで乗っても運賃はたったの500円。何だか申し訳なく思ってしまいます。
風格のあったあの「くりでん」の石越駅舎も今はすっかり撤去され、跡形もなくなってしまいました。ここから鉄道が延びていたことも、次第に忘れられてしまうのでしょうか。
JRの石越駅舎もリニューアル。でも無人化を免れたことでやや昔風の駅舎が再建されたのは、まだ救いだったような気がします。
石越からは東北本線に乗って仙台方面へと向かいます。車両は701系の2両ロングでしたが、空いているので特に苦にはなりません。でも「18シーズン」だったらきっと…
小牛田、仙台と乗り換え、さらに槻木からは阿武隈急行に乗り換えます。阿武急に乗れるようになったのも、「土日きっぷ」時代にはなかった特典です。
槻木発車時はそこそこ乗っていたお客さんも、角田で8割が、そして丸森でほぼ全員が降りてしまい、県境を越えたのは2人だけ。右手には、阿武隈川の見事なまでの渓谷美が広がり、思いっきり贅沢な時間が過ぎ去ります。
福島からは、同じホームの反対側から発車する福島交通の電車に乗り換え。こちらも「ウィークエンドパス」ならフリーパス。
すっかり日は暮れてしまったけれど、終点の飯坂温泉までの走りを堪能。ここを訪れるのも、かれこれ10年振りです。
駅を一歩出ると、温泉街が広がっています。ということで、せっかくなので一風呂浴びに町中へ。
明日も旅は続きます。
☆☆☆--- お知らせ ---☆☆☆
先日収録を済ませた「マツコの知らない世界」 ですが、12月2日にオンエア予定です。さあ、うまく編集されているかどうか、ちょっと恐い。
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栗原市では、東日本大震災より2008年の岩手・宮城内陸地震における被害のほうが甚大だったとも云われています。
あの地震では、各地の鉄道保存活動で尽力されていた『とあるお方』も、当日の滞在先だった栗駒山麓「駒の湯温泉」で、地震に伴う土石流(山津波)により亡くなられました。
「くりでん」保存活動の打合せで現地入りしてのこと、文字通り「殉職」と認識しております。
今保存されている「くりでん」の各施設も、その『とあるお方』の尽力に由るところが大きいと聞いております。くりでんに限らず各地の保存活動に微力ながら協力していくことが、そのお方へのせめてもの供養になるのでは、と…栗駒山麓へ(登山で)行った際に感じた次第です。
当時、鉄道に関した執筆活動をされる何人もの方が訃報をブログで挙げる中、貴殿が何ら言及されなかったことの真意ははかりかねますが…