東北地方で高速道路の新たな無料化措置が12月1日から始まる。震災被災者の支援が主な目的だが、原発事故のあった福島県から他県へ母子のみで自主避難して二重生活を送る家族だと、無料通行が認められないケースがあり、改善を求める声が上がっている。【前田洋平】
新たな無料化措置は▽太平洋側の岩手、宮城、福島全域などで全車種が全日無料▽秋田、山形などの日本海側は自動料金収受システム(ETC)搭載の普通車以下に限り土日祝日が無料▽震災の避難者らは従来通り、被災地支援区域内を入り口または出口とする、対象外区域との間の走行が全日無料--などの内容となっている。
ただ、これまでの無料化制度で悪用が相次いだため、東日本高速道路(NEXCO東日本)は原発事故の避難指示区域外からの自主避難者に対し、身分証明書と被災証明書に加え「実際に避難先に住んでいることを証明する書類」(避難先の電気料金の利用明細など)の提示を求めることにした。
しかし、福島県から他県へ自主避難したのは母子のみのケースが少なくない。仕事で福島に残る父親は自分名義の利用明細などが取れず、日本海側に避難した家族に会いに行く場合、平日は有料となる。NEXCO東日本広報部の担当者は「福島にとどまって仕事をしているなら、今回の措置では避難者として認定できず、無料にできない」と話す。
山形、福島両県などによると、福島から山形へ避難している1万2734人(11月17日現在)のうち、約1万人が避難指示区域外からの自主避難者とみられる。福島県伊達市から山形市に自主避難した山田悦子さん(30)は「伊達に残った夫は少しでも長く家族と過ごすため、金曜の夜に山形に来て、月曜の朝に帰る。平日に行き来するため毎回料金がかかってしまう」と戸惑う。避難先の住宅の家賃は補助を受けているが、光熱費は自己負担。「二重生活で経済的に苦しいのに、さらに負担が増す」と嘆く。
「山形自主避難母の会」代表の中村美紀さん(35)は「国や県は自主避難の実態を理解していない。自治体が福島の夫にも家族の証明書を発行する必要などがあるのではないか」と指摘している。
毎日新聞 2011年12月1日 2時30分(最終更新 12月1日 4時22分)