被爆者運動に早くから身を投じ、国内外の人たちに被爆体験を語り続けた元原爆資料館長、高橋昭博さん(2日に80歳で死去)の葬儀が4日、南区の平安祭典広島東会館でしめやかに営まれた。平和運動や広島市の関係者らが約150人参列し、別れを惜しんだ。葬儀前には、広島平和文化センターから長年の活動に対して感謝状が贈られた。
祭壇には、原爆ドーム前で語る高橋さんの遺影が置かれ、千羽鶴も添えられた。
葬儀では、親交のあった俳優、米倉斉加年さんが「高橋さんは芸術を語る言葉の中で、原爆を語っておられた。真の平和とは、人間が人間らしく生きること。深い人間性に支えられ、ヒロシマを語っておられた」と振り返り、「新しい片仮名の町、フクシマが出現した今日、高橋さんの死は新しいヒロシマの出発です。あなたの心を現代の暗闇を照らすともしびとして、未来へ一歩踏み出しましょう」と語りかけた。秋葉忠利・前広島市長らも弔辞を述べた。
著書「空白の天気図」で高橋さんを紹介したノンフィクション作家の柳田邦男さんは「語り続けてこられた言葉は全ての人の心の中に刻まれ、消えることはありません。私は作家として、あなたから学んだことを忘れずに、核のない世界のために執筆活動を続けていきます」との弔電を寄せた。【加藤小夜】
毎日新聞 2011年11月5日 地方版