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2・幼女は男の事を考えると病んじゃうくらいデレデレなのです
 とにかく零一は移動する事にした。ここは汚く、臭い。買物の近道に利用していただけなのだ。

 話を聞かずに逃げる、という手もあったが、後ろから火球で撃たれた果てに火事でも起こされたら困る。
 事実、昂谷ありすは、何をしでかすか分からない。
 平日の昼下がり、大通りを二人で並んで歩く。しばしの無言の時間。先に口を開いたのはありすだった。

「こうやって二人で並んで歩いていると、恋人同士のようだ」
 零一の返事は、無言。不機嫌なのではなく、無視でもなく、どうツッコんでいいのか分からないから。
「しかし、小学生とつきあうのはまずいだろう」
 天使のような声で危険な発言をするありす。
 その言葉を聞き、ようやく零一は口を開いた。
「その辺に気を使う常識は持ち合わせてるんだな」
 平日の昼間から小学生と歩いている男は間違いなく職質対象。おそらく、彼女なりに気を使っているのだろう。

「でもだいじょうぶだ」
 ご機嫌な笑顔を零一に向けありすは続ける。
「わたしはどう見ても小学生。だけど…」
「だけど?実は幼く見えるだけで十八禁バリバリOKの合法ロリだとでも?」
「実は九才の現役バリバリのロリっ娘なのだっ!」

 駄目だろそれ。

 深く、深く、嘆息する。続けて、思い切り息を吸い込み、怒鳴る。

「世間に媚びない姿勢は好感が持てるが、それじゃあ色んなモノに引っ掛かるだろうが!」
 根本的な解決になっていないではないか。零一が職質されるリスクは欠片も下がっていない。

「俺はロリコンじゃ無ぇ。好きだの何だの言われても困る。諦めろ」
「じ…じゃあ、頼みがあるんだ。手を…つないでほしい」
 すっ、と右手を差し出すありす。
「手ェくらいなら、構わないけどよ」

 差し出された手を握り返そうとしながら答える零一。その瞬間。

「スキあり!」
 白銀の閃きが零一に襲い掛かる。閃きの正体は包丁。ありすが包丁を零一の心臓目掛けて突き刺してきたのだ。
 最初からおかしな話だと思っていた。零一に小学生が告白してくる。常識的に考えてありえないではないか。
 真新しく、人を殺すのに十分な鋭さを持った包丁は零一のコートを突き破り、皮膚に達し―――なかった。
 手の長さが足りないのだ。零一が指をぽきぽきと鳴らし、詰め寄る。

「覚悟は出来てるんだろうなァ?」
「わたしのモノにならないなら、滅ぼすまでっ!」
 相変わらずの元気さで白状する。
「滅ぼすって何様だよ!本気でタチ悪いなお前」

 気付けば零一は、完全にありすのペースに巻き込まれていた。
ヤンデレ?


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