中国で一番有名な日本人俳優・矢野浩二「中国人と付き合うコツは、遠慮せず自己主張すること」

　中国語もできないまま単身中国大陸に渡り、苦労の末に現地で大成功を収めた俳優・矢野浩二氏。現在、中国で最も有名な日本人俳優といわれている。９月に「ビデオリサーチ」が発表した中国での日本人タレントの人気調査でも、キムタク、嵐に次いで第３位。そんな中国での人気者が、中国人との付き合い方のコツを語ってくれた。

「そりゃ、僕も初めて中国に来たときはビックリしましたよ！　まだ中国語といえばニーハオくらいしかしゃべれませんでしたからね（笑）。そんな僕に向かって中国の人たちはドンドン踏み込んで話しかけてくる。こりゃ自己主張しないとダメな国なんだって、すぐにわかりました」

　最初は厚かましく感じていた中国人の話し方も、この国で暮らすのには必要なことだったのだ。

「とにかく１３億人以上の人間がいるわけですよね。『オレはこんなことがやりたい』『私はこんなことを思っている』と言えなければ、チャンスも思いも人混みの中に埋もれちゃうんですよ（笑）。だからみんな必死に自分の思いをぶつけ合う。そうやって互いの思いを知った上で尊重し合う。これが中国式コミュニケーションの基本ですね。中国では、日本で美徳とされる控えめやキレイごとの会話はご法度（はっと）！　逆に、ちゃんと自己主張できる人ほど敬意を持たれる。こちらが１歩踏み出すと、３歩寄ってきてくれる感じでしょうか」

　姿形が似ているため、ついつい日本人的な一歩引いた感覚が通用すると思いがちだが、同じアジア人でも人口１３億人と１億人では、子供１０人の大家族と、ひとりっ子の家庭ほど環境が違うのだ。

「受け入れられてしまえば、中国人は大阪のオバチャンみたいに気さくで温かい。実に楽しいんですよ。最初は中国での配役も、中国語のせりふの少ない日本兵役が多かったんですが、言葉の上達とともにバラエティ番組にも出るようになってきた。本音でしゃべる日本人というのがウケたんでしょうか。気がつくと街でも声をかけられるようになっていた（笑）」

　いったん気に入られると人気の爆発ぶりもケタ違い。

「頼るコネもなく、言葉もまったくしゃべれない僕がなんとか今日までやってこられたのは、中国の人々と付き合うコツを早くつかむことができたからでしょうね。同じアジア人ですから、コミュニケーションさえ取れれば通じ合うモノは多いです。そして中国のエネルギーはやっぱりスゴい。ぜひ皆さんにも自分の目でこの壮大なスケール感を味わってほしいですね。そして中国に来たら、勇気を出して『ニーハオ！』と声をかけてみてください。きっと最高の笑顔で迎えてくれると思いますよ」

●取材・撮影／ダカーポ（近兼拓史、ダイ・シーユウイ）

■矢野浩二（やの・こうじ）
１９７０年生まれ、東大阪市出身。森田健作氏に師事後、２０００年に中国へ渡る。地道な活動が実を結び、今や中国で最も有名な日本人俳優と呼ばれる。０７年、『ニューズウィーク日本版』で“世界が尊敬する日本人１００人”のひとりに選出。著書に『大陸俳優』（ワニブックス）がある。

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