防衛省沖縄防衛局の田中聡前局長は、アメリカ軍普天間基地の移設計画に伴う環境影響評価書の提出を巡り不適切な発言をしたことを受け、29日夜、更迭されました。政府は、防衛省の中江事務次官を30日、沖縄に派遣し、県側に謝罪することにしていますが、沖縄県内の反発は強く名護市辺野古への移設は一層困難になったという見方が広がっています。
防衛省沖縄防衛局の田中前局長は、28日、那覇市で行った記者団との非公式の懇談会で、普天間基地の名護市への移設計画に伴う環境影響評価書の提出時期を、一川防衛大臣が年内に提出すると明言しないのはなぜかと記者団から質問されたのに対し、「犯す前にこれから犯すとは言わない」と発言しました。これを受けて、一川防衛大臣は、本人を沖縄から呼んで事情を聞いた結果、「弁明の余地はない」として、29日夜、田中前局長を更迭しました。一川防衛大臣は、記者会見で、「沖縄県民に心からおわび申し上げたい。これまで沖縄県と信頼関係を向上させるために努力してきたが、それが失われかねないと認識している」と陳謝したうえで、30日、防衛省の中江事務次官を沖縄に派遣し、仲井真知事に直接謝罪させることにしています。しかし、沖縄県側の反発は強く、仲井真知事は、29日夜、記者団に対し、「品性下劣な表現が国家公務員の口から出ること自体、何なんだという感じだ」と強い不快感を示しました。沖縄県側が普天間基地の県外移設を求める姿勢を崩さないなか、野田政権としては、先週、在日アメリカ軍の軍属が公務中に起こした事件や事故を日本で裁判ができるよう、日米地位協定の運用を見直したことが、信頼関係を醸成する一歩になったと受け止めていました。そうした矢先に信頼醸成の努力が水の泡になるような事態が起きたことで、政府内でも、名護市辺野古への移設は一層困難になったという見方が広がっています。